パリより愛をこめて

 僕の永年の夢は“英国諜報部員”だ。正式には“英国情報局秘密情報部”か?最近では通称“SIS”と呼ばれているらしいが、僕は出来れば昔ながらに“MI6”と名乗りたい。実際にその人たちが日頃どういう仕事をしているのかは分からないけど、例えば飲み屋さんとかで隣に座った女性から「普段、何してる人?」と訊かれたとき「え?オレ?・・・・オレ、MI6」とか、さり気無く答えてみたいのだ。しかもそれが嘘なんかではなく。まぁ、“CIA”とか“FBI”とかでも良いのだけど、何となく“MI6”の方が謎めいていて良い。数年前、確か『007』のコラムを書くに当たってだったか?その時も僕は同様のことを書いているので、この思いが昨日今日の思い付きなんかではなく、且つ、昔からぶれることなく抱いているちゃんとしたものであることは証明出来るだろう(確か、その時は“CIA”が夢だ、と書いていたかもしれないが、今の方がもう少し先に行っていると解釈して頂きたい)。「そんなん無理だろ?バカじゃねぇの?こいつ」と思っている方にこそ言いたい、「そういうあんたこそ無理だ!」・・・・では、100歩譲って「ひょんなことから事件に巻き込まれ、今や“MI6”にとって居なくてはならない相棒となってしまった一般市民」でもいい。“MI6”が無理だとして、だ。誰かオレを壮大な国際的事件に巻き込んでくれないだろうか?身の安全は保障してくれるのが絶対条件で。
 実に久しぶりの本格的バディムービーだ。互いに全くかみ合わない2人がコンビを組む破目になり、常に対立し喧嘩をしながらも事件を解決させ、そして友情が芽生えていく・・・・という、ハリウッド映画ではド定番とも云えるこのジャンル。古くは・・・・何だろうか?ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの『明日に向かって撃て!』とか『スティング』か?あまりにも多過ぎてその往年の代表作を挙げることすら難しいが、僕の世代だとやっぱりエディ・マーフィーとニック・ノルティの『48時間』だったり、メル・ギブソンとダニー・グローバーの『リーサル・ウェポン』、それにロバート・デ・ニーロとチャールズ・グローディンの『ミッドナイト・ラン』といった映画を思い出す。で、最近だと何だろう?と考えると何故だか途端に出てこない。それっぽい映画は幾つか出てきても、「これがバディムービーです」という程の定番的映画は暫く無かったのではないだろうか?この『パリより愛をこめて』は、06年のコリン・ファレルとジェイミー・フォックスの『マイアミ・バイス』以来なのでは?と思う程のド定番ぶりである。ジョン・トラヴォルタとジョナサン・リース・マイヤーズ。まず、そのキャストからして“バディムービーの基本形”だろう。コレが何かのクイズだったら「大正解!」と言われるに違いない。物語は、麻薬捜査をしていた2人のCIAコンビが、徐々に政府絡みの暗殺計画を知ることになり、更には自分らしか知らないはずの情報がどこからか漏れていて・・・・一体、裏切り者は誰なのか?そして暗殺計画の本筋は何なのか?といった、また王道のスタイルである。監督は、本作が『アルティメット』(04年)、『96時間』(08年)に続き3作目の監督作となるピエール・モレル。前2作に巨匠リュック・ベッソンが脚本や制作を務めたこともあり、彼とのコンビのイメージが根付いていて、今回もやっぱり宣伝文句にリュック・ベッソンの名前がある(が、色々調べても、彼がどういう立場で参加しているのか分からなかった・・・・)。
 この映画の最大のポイント、それはスタッフの名前を挙げて分かる通り(って言うかタイトルがそのまんまだが)ハリウッド王道とも云える“バディムービー”のスタイルを踏襲したこの映画が、実は“フランス映画”だということ。決して偏見などではなく、何故だか“パリを舞台にしている”というだけで映画自体が知的でお洒落に見えるから不思議だ。で、もっと凄いのが、パリという背景を使っても尚、ジョン・トラヴォルタの佇まいはそれを一気にハリウッド的にしてしまう、ということ。小洒落て重厚感のある街並みも、トラヴォルタがデカい銃をぶっ放しながら歩くだけでそこがアメリカンな感じがしてくる不思議さは、前述のそれ以上である。良くも悪くも、いつの間にトラヴォルタはこんな俳優になったのだろうか?77年の『サタデー・ナイト・フィーバー』で一躍トップスターになった彼は、94年の『パルプ・フィクション』で大復活!と云われたが、その“大復活後”も正直言って僕にとっては“イマイチ”で特に好きでも嫌いでも無い俳優であった。が!前作『サブウェイ123』からのトラヴォルタのこの存在感は「一体、何が彼をそうさせたのか?」というくらいに圧巻である!今や僕はトラヴォルタの新作ならばどういった映画でも無条件で観に行きます、と断言出来る程の大ファンだ。それにしても、古き良きハリウッド黄金時代の作品を思い出させる爽快な1本。コレは必見だ。

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