RED レッド

 先日、仕事の飲み会の席で「結局、『人間力』ってのは何を指すのでしょう?」という話題となった。全員、世間的には“いい年”をした、しかしそれなりに責任ある立場の男達の会話である。結論として「それは、その人の『生き様』でしょう」ということで全員が納得し、勿論僕も全く異論は無く「なるほど、そういうものかもしれない」と頷いたのだった。「俺は昔は~」とか「最近の若いモンは~」とかいう武勇伝や説教染みた話ってのは心底見苦しいし不愉快なものだが、やはり、本当に実績を積んできた年配者の生き様ってのは素直にカッコよく尊敬に値するものである。無駄に年齢だけを重ねて威張った人が多いからこそ。40前後である僕らの世代は、きっと人生で1番中途半端な時期なのだと思う。「まだまだ若い!」と本気で思っているけど、実際に若い世代(20代とか)からは間違いなく“おっさん”だし、熟練の実力者からしてみればまだまだ“若造”なのだろうから。それらを全て納得済みで受け入れている僕らは、口にせずとも内心では、自分より若い世代に対しては「まだまだ青いな」と通ぶるし、目上の年配に対しては「俺には若さがあるぜ!」と虚勢を張っているのである。しかし、人間ってのは年下に対して“若さへの羨ましさ”のようなものはあるにしても“尊敬”や“憧れ”ってのは実は無いと思うのだ。そういうのは“年上”だけに対する感情ではないだろうか?“若さへの~”ってのは自分が経験済みである時間であり、結局自分自身が“失ってしまったもの”へ対する羨望でしか無いわけで。それに対し、魅力的な年上に対しては本来の意味である“尊敬”や“憧れ”が含まれると、それは男女関係無くそう思うのだが。
 引退した凄腕CIAエージェントのフランクがある日、謎のハイテク暗殺部隊に襲われる。一体何故、自分が狙われているのかも分からないまま彼はかつてのツテを頼って謎を解きながら暗殺組織に立ち向かっていく。という、まぁ言ってみればこれまで何度も観たような使い古されたシナリオではあるのだが、本作がそれらと一線を画しているのは、まず主人公が既に現役を退き田舎町で静かに余生を送っていたところから物語が始まる点だ。そして、彼が頼りにするかつての上司は老人介護施設で暮らす末期ガンの患者。それに、極度の被害妄想にとらわれ穴の中で武装して暮らしているかつての宿命のライバル。更には、かつて英国諜報部員に所属した狙撃の達人の女性スパイの3人。いずれもとっくに一線を退いている、いわゆる“ご老体”な方々だ。しかし、だからこそ、とも言うべきプロ中のプロでもあるわけなのである。
 現役時代、何十年にも渡って実戦経験と修行を積み重ねてきたスペシャリストの集団、それが『RED=Retired(引退した)、Extremely(超)、Dangerous(危険人物)』だ。そして、そのプロフェッショナルを演じる“ご老体”達がまた凄い!主人公のフランクに我らがモッチ、ブルース・ウィリス(実はドイツ人である56歳)!言わずと知れた、かつてのジョン・マクレーン刑事(『ダイ・ハード』88年)だ。そして、彼の現役時代の上司であるジョーに、かつて『セブン』(95年)でブラピの相棒であったモーガン・フリーマン(74歳)!それに、イカレたライバル・マーヴィンに、かつて『マルコヴィッチの穴』(99年)その人であったジョン・マルコヴィッチ(58歳)!更には、かつての凄腕MI6女スパイに『クィーン』(06年)でエリザベス女王を演じ、その年の世界中の「主演女優賞」を独占したヘレン・ミレン(66歳)!錚々たる先輩方である。あぁ、カッコいい~!去年の『エクスペンダブルズ』同様、その登場人物だけで無条件に降伏してしまうような“神様達”的なラインナップである。付け加えて、脇役ではあるが『ポセイドン・アドベンチャー』(72年)のアーネスト・ボーグナインに『未知との遭遇』(77年)のリチャード・ドレイファスという大御所である名優が観れるのも、失礼ながら“かつての~”という魂胆がありそうで思わずニヤリとさせられる。原作であるDCコミックは読んだことはないのだけど、オリジナルがコミックである為なのか、笑いも盛り沢山で最初から最後まで現実を忘れて楽しめる映画となっていて、それがまた80年代映画の大味な雰囲気があり、僕ら世代にはたまらない。
 監督は05年にジョディ・フォスター主演(にも関わらずあまりパッとしなかった)『フライトプラン』でハリウッドデビューを果たしたドイツ出身ロベルト・シュヴェンケ。第2作目である前作『きみが僕をみつけた日』(09年)は、本人の意思とは関係なく時空(年代や場所)を移動してしまう男の切ない愛を描いたSFラブ・ロマンスもので、アメリカで大ベストセラーとなった原作『THE TIME TRAVELLER'S WIFE』の映画化なのだそうだが、『トワイライト・シリーズ』ですら空前の大ベストセラーになっているくらいだから、アメリカでのベストセラー云々ってのは「だから何?」って感じであまり当てにならなく・・・・まぁ正直、同じくパッとしない映画ではあった。が、3作目である本作は遂に第68回ゴールデン・グローブ賞最優秀映画作品賞にもノミネートされたそうで、きっと彼はようやくの大ブレイクを果たすことになるのだろう。とにもかくにも、僕は予告編での「誰がジジイだ?若造は引っ込んでな!」という文句にシビれ、コレは絶対に観なきゃいけない、と思ったのだった。

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