ブラック・スワン

 GWも最終日であった昨日、家族で行った遠方にある実家の帰りに“ザクリッチ”というアイスを買って食べた。滅多にアイスなんて食べないのだけど、車に乗った途端に代わる代わる「おしっこ!」と言い出す2人の兄弟と「さっき兄ちゃんが行った時にお前もしとけ!」と怒鳴りながら入ったコンビニに、まぁなんというかトイレを借りたお礼のような感じで買い物をしたのだった。しかし“ザクリッチ”、コレは凄い!旨い!ソフトクリームのコーンの部分を食べる為に頑張って上のアイスを消化している僕のようなコーン好きにはたまらない。正に「最初からクライマックス!」と云える究極の一品!『レスラー』で知られるダーレン・アロノフスキー監督の最新作『ブラック・スワン』は、まさしくそんな映画である。フルーツやナッツ類がゴロゴロと入っているわけではない。メインのバニラにしてもそれだけでははっきり言って大した代物ではないだろう。地味って言えば地味なのだけど、でもそれが好きな人には“好きなモノだけが無駄なく詰まっている”究極の一品なのだ。
 予告編を観ただけでは「一体、どんな映画なんだ?」ってワケが解らないけど、実際は至ってシンプルな物語である。舞台はニューヨーク。伝統あるバレエ団で上演される「白鳥の湖」の主役候補・ニーナの苦悩を軸に描かれるサスペンスものだ。「白鳥の湖」の主役を演じるには、“ホワイト・スワン”と“ブラック・スワン”という相反する善悪のイメージを演じきらないといけない為、かなりのスキルが要求される。ニーナは“ホワイト”の純粋な清楚さは完璧に持ち合わせているが、“ブラック”の小悪魔的な魔性さが決定的に足りない。主役を獲得するため自分を追いつめるように練習を重ねる彼女は、次第に精神的に疲れきって幻覚をみるようになる。そして遂には友人であるリリーが主役の座を奪う為に自分を様々な罠に陥れていると思い込むようになり・・・・。そこにバレエ団の監督トマス(ヴァンサン・カッセル!)の怪しい存在や、自分が果たせなかった夢を娘に託し人生の全てをニーナに賭ける母親の物語も加わり濃厚なドラマが繰り広げられる。そう、監督の前作『レスラー』と同じである。
 主演のニーナを演じるのはナタリー・ポートマン。13歳で演じた『レオン』のマチルダ役で一気に大ブレイクを果たしたものの、その後ずっとパッとしなかった気がするのは僕だけだろうか?確かにその演技力はいちいち評価されていたけれど、出演作に恵まれなかったというか・・・・(だって『スター・ウォーズ』でのアミダラ姫役ですら、自身の替え玉役であったキーラ・ナイトレイに持っていかれた感があったし)。しかし、この映画が彼女の決定打になることはまず間違いないだろう。それにしても、彼女(ナタリー・ポートマン)の演技は凄い!実際に撮影の1年前から毎日5時間に及ぶ猛特訓を重ね、その演舞を全て自身で演じたというのだから、数々の映画賞を総なめにしても誰も文句は言えないだろう。先にも書いたように、かと言ってこの映画は決して“スポ根モノ”ではない(ココがポイントだと思っているので敢えて強調したいのだ!)。アロノフスキー監督の出世作である『π(パイ)』(97年)と同様の雰囲気に『レクイエム・フォロー・ドリーム』(00年)のような現実と幻覚との曖昧さ、そして『レスラー』で描かれた哀愁の漂う人間ドラマ。正に監督の集大成とも云える大傑作である。一言ではそのジャンルを言い表すことの出来ない“アロノフスキー映画”、この独特の鑑賞感と迫力は是非とも劇場で観ることを強くお勧めする。

一番上にもどる      ホームヘもどる