ツリー・オブ・ライフ

 さて今回は、地元のちょっとしたプール施設を一大リゾートホテル並みのウキウキプールに変えてしまう裏技を紹介したいと思う(コレは表向きにはあまり大きな声では言えない極秘裏技なので心して読んで頂きたい)。この時期、休みの日に家族サービスで子供たちをプールに連れていくお父さんも多い事だろうけど、せっかく行くのだからお父さん自身も思い切り楽しまなければ勿体ない。さぁ、出発だ!まず、そのプールは体育施設のような場所ではどうやったってワイキキのプールのようにはいかないので“それっぽい所”を選ぶってのは大前提として(地元鹿児島であれば七ツ島のサンライフプールとか指宿のいわさきホテルとか・・・・この程よい遠さもポイントだ)、そしてそこに向かう車内ではワム!家族に「うるさい」と言われるギリギリまでボリュームは上げて頂きたい(出来れば〈Club Tropicana〉や〈Wake Me Up Before You Go Go〉と云った初期の曲なんかが理想だけど、まぁこの際、ワム!であれば何でもいい)。ココまでの準備が整ったら後は心の問題だ。ハンドルに置いた手でリズムを刻みながら思いを馳せよう「オレは家族サービスをしているのではなく、オレのリゾート地に家族を付き合わせている」のだと。そして現場に着いたら最後の仕上げ。500mlの缶ビールを一気に飲もう!・・・・コレには個人差があるかもしれないが、因みに僕個人的には350mlでは物足りなく、500mlを2缶では酔ってしまう。なるだけ一気に飲んだ後、酔いがマワる前に家族と一緒に何気にプールで戯れるってのが最大のポイントだ。自分でも飲んでる自覚のないまま「なんだ?ココって・・・・めっちゃトロピカーナじゃん」を呼び込まなければいけないから。もっと言えば、家族にも協力を仰ぎ自分が知らないうちにアルコールを摂取するってのが理想。例えば、家族が何気に差し出したコーラが実はコークハイだった、とか。注意点として、草やケミカル系には決していかないこと。自分では自然と振る舞っているつもりでも周りは日中のウキウキ家族ばかりだ、浮いてしまうこと必至である。
 映画界の神様テレンス・マリックの最新作『ツリー・オブ・ライフ』は、まぁ、こんな感じの映画である。信仰にあつい厳格な父に反抗心を抱きながら大らかな母の愛情との葛藤の中で育ったジャックは、やがて大人になりそんな自分のルーツに思いを馳せながら生きていく・・・・という、50年代のテキサスを舞台にした、ある一家の40年にもわたる壮大な家族ドラマだ。大人になったジャックを演じるのがショーン・ペン!物語は彼の子供時代の父親との交流がフラッシュバックで描かれるのだが、その若き日の父親を演じるのがブラッド・ピットである。自分の性格や考え方が我が子の人生を左右するほど大きな影響を及ぼす、と日々考えながら生きている父親ってのはどれくらい居るのだろう?もしかしてそれが当り前?!少なくても僕自身はそこまで重たく子育てを考えた事はないので前述のエピソードが平気で書けるわけなのだが、そんな親子の関係ってのを深く考えさせられる1本である。松本ピストル作詞・竹原ピストル作曲の「巡り巡って、あなたが父の子に生まれた様に、巡り巡って父があなたの子に産まれるでしょう、ただ、それだけですが、それが全てです。父は死にましたが、もしかしたらこうして初めて親と子の絆は永遠となるのかもしれません」というあの歌の世界観で云えば『さや侍』以上にピッタリくる映画かもしれない。
 で、そんな映画が何故に先に書いた“地元プール・リゾート化計画”に直結するのか?なのだが・・・・とにかく観てみれば理解して貰えるはず。要は、全ては自分次第なのだな、ということ。98年の前々作『シン・レッド・ライン』の時にも全く同じ事を書いたような気がするけど、例えそれがどんな映画であれ、どんなジャンルであれ、もっと言えばどんな出来であれ、結論としてそれが“テレンス・マリックの映画”だということだけでもう絶対的に観る価値のある映画になるわけで・・・・。世間的には73年の『地獄の逃避行』と78年の『天国の日々』のたった2本でテレンス・マリックは伝説になった、と云われているかもしれないけど、実際には間違いなく『天国の日々』の1本で“神の領域”に行ったってのは誰の異論も無いはずだろう。ストーリーもさることながら、何と云ってもその徹底した映像美!・・・・その伝説の映画から約20年もの沈黙があったからこそ、ハリウッドのスター陣がこぞって「ノーギャラでもいいから出演したい!」と新作への参加を懇願し、更なる伝説となった監督3作目となる『シン・レッド・ライン』(98年)。思い出して欲しい、あの名作『シン・レッド~』はどんな映画だったか?ストーリー?そんなのは忘れたけど、とにかく「映像が美しすぎる!」それに尽きる映画だったワケだ。そして、旬の時期であったはずのコリン・ファレルですら力不足であった『ニュー・ワールド』(05年)を経て、キャリア40年の歴史の中で5作目となる最新作がこの『ツリー・オブ・ライフ』だ。当初、コリン・ファレルとメル・ギブソンで進められていた“約束された名作”はその後紆余曲折ありショーン・ペンとヒース・レジャーに変更、そしてヒースの死後、既に製作で関わっていたブラッド・ピットが主演で参加する、という経緯を辿りこの名作が生まれたワケである。くどいようだが、とにもかくにもその映像美だ。「物語が~」ってのは結局、文字文学の方が長けているのかもしれないけど、そこに対し映画というメディアが絶対に誇れるのは“映像”でしかないワケで・・・・。となると、そこで圧倒するのがテレンス・マリックってことになるのだろう。カンヌで最高賞のパルム・ドールを受賞した、とかそんなことはどうでもいい。テレンス・マリックの映像美を劇場の大画面で体験する!コレに尽きる名作なのである。

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