ピラニア 3D

 夏と海とビールが大好きで、暑い時期は子供たちを連れてよく海やプールに行くのだけど、どうにも僕にとって海という場所は常にある種の恐怖感が伴っている。例え人工波の出るプールですらその恐怖感を思い出す程に。それはサメとクラゲとピラニアだ。まず、クラゲってのは、もう10年くらい前になるだろうか?シュノーケリングにハマっていた頃のある夏の種子島で、ふと気が付くと四方八方を大小様々なクラゲの大群に囲まれていて軽いパニック状態になったのが未だトラウマになってしまっているのである。で、サメとピラニアは・・・・説明するまでもないだろう、子供の頃に観た映画の影響だ。

 初めてこの映画のチラシを劇場で見た時、なんていうか・・・・「マジ?」ってのと「スゲー!観たい!」ってのが混ざり合ったような微妙な感じであった。いやホント「まさか!?」の劇場公開だと思う。だって普通ならばこの映画は間違いなくレンタルビデオショップの“劇場未公開作品”コーナーに並ぶはずだろう。ましてや、最近の劇場公開作品の流れとか考えても、どうやったってあり得ないではないか?80年代じゃあるまいし。やっぱ、ポイントはこの“3D”なのだろうな。正に3Dブームに乗っかった映画の1つ、というか、便乗映画の代表作と言っても過言ではないだろう。本作は、狼男映画の金字塔『ハウリング』(81年)や、スピルバーグと組んだファンタジー・ホラーの大傑作『グレムリン』(84年)のジョー・ダンテ監督が78年にリリースした『ピラニア』の3Dリメイクだ。行方不明捜査にやってきた調査員が、とある施設でプールを見つけ、彼女は中を確認しようとプールの水を抜いてしまうのだが、実はそれは軍が兵器として極秘に品種改良をされた“殺人ピラニア”が飼育されていた水槽。そして殺人ピラニアの大群は川へと放出され下流のキャンプ場へと向かっていく・・・・。というこの映画は、75年に巨匠スピルバーグが大ヒットさせた『ジョーズ』の影響で生物パニック映画がブームとなり大量生産された時期に、唯一大成功した類似映画であった。で、この原稿を書くにあたってコレ以外のピラニア映画について思いを馳せてみたのだが、何1つ思い出せなく・・・・。思うにピラニア映画ってのはコレ1本しかヒット作は無いのではないだろうか?サメの映画は幾つもあるのに、だ。何故だろうか?・・・・思うに、全てのサメ映画ってのはその原点である『ジョーズ』がルーツになっているワケなので、基本“巨大サメ1匹VS人間”という構図で、更には映画の軸として必ず“人間ドラマ”が描かれているのが王道となっている(『オープン・ウォーター』(04年)のようなサメの集団の恐怖ってのもあったが、アレだって基本は“人間ドラマ”だった)それに対し、ピラニア映画ってのはそのルーツが先述したジョー・ダンテの『ピラニア』なんで“30センチくらいの殺人魚の大群に襲われるパニック映画”というジャンルでなければいけないワケで・・・・そうなるともうクオリティの限界は見えてるし、B級映画の枠を抜け出せないのは必然なのであろう。

 そんな中で、この『ピラニア3D』はピラニア映画で久々に大ヒットを記録(既にこの続編『ピラニア3DD』が今年の年末に公開予定なほど)!この偉業を成し遂げたのは、フランス産本格スプラッターとして大きな話題となった『ハイテンション』(03年)のアレクサンドル・アジャ。その後、ホラー界の巨匠ウェス・クレイヴンが77年に発表したカルト作『サランドラ』をリメイクした『ヒルズ・ハブ・アイズ』(06年)でハリウッド・デビューを果たし、08年には『24』で今をときめくキーファー・サザーランド主演『ミラーズ』で大ヒット!で、4本目の監督作として本作となる。で、何気に凄いのがこの俳優陣!普通、この手のB級パニック映画ってのは、もう“例外無く”と云っていい程、無名の役者がいかにもB級テイストな演技で繰り広げられるものなのだが(っていうか、むしろそれが妙に心地良く、観ているこっちも肩の力を抜いて何も考えずに楽しめる要素だったりもするのだけど)、まず主演にエリザベス・シュー!『ベスト・キッド』(84年)や『カクテル』(88年)に『バック・トゥ・ザ・フューチャー2&3』(89年〜90年)、それにニコラス・ケイジとの『リービング・ラスベガス』(95年)などのヒット作でヒロインを演じていたあのエリザベス・シュー本人である(本人なのは当り前か)!ポール・ヴァーホーヴェンの『インビジブル』(00年)でのケヴィン・ベーコンの相手役を最後にめっきり見なくなり一体どうしてしまったのだろう?と思っていたのだけど、まさかココで観れるとは!で、その『バック・トゥ・ザ〜』のクリストファー・ロイドもまんまドク役か?と思わせるキャラで登場!他にもタランティーノ関連映画の常連イーライ・ロスに『ミッション:インポッシブル』シリーズ(96年〜)や『パルプ・フィクション』(94年)『デス・レース2』(10年)などのアクショ大作に準主役級でちょいちょい登場するヴェイング・レイムス。更には、ジョージ・ルーカスの(ほぼ)デビュー作『アメリカン・グラフィティ』(73年)や『ジョーズ』(75年)『未知との遭遇』(77年)などで主演をやってたあの大御所リチャード・ドレイファスも!他にも、スティーブ・マックイーンの孫であるスティーブン・R・マックイーンなど、B級映画の常連陣も多数登場していて“B級映画好き”にもしっかり応えているところがニクい。

 先日公開されていた『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』に、ジェイムズ・キャメロンが「コレは絶対に観るべき3D映画だ!」と言っていたのに対し、この『ピラニア3D』のチラシには「こういう作品が映画をダメにする!」的なコメントが載っていてウケたのだけど、配給会社のこういうユーモアセンス溢れる宣伝もきっと映画のヒットに多大に貢献しているのだろう。それにしても、ジェイムズ・キャメロンが本当にそれを言ったにしろ、言ってないにしろ「彼の言葉がそんなに影響力があるのか?」って思わないでもないが、まぁ彼は97年の『タイタニック』で映画史上歴代1位という興行成績を築いてきて、それを超えたのもやはり自身の『アバター』(09年)だったわけで・・・・。しかも、その『アバター』はそれまでの3D映画の概念を覆すような恐ろしい程の技術を誇り、新たな「3D映画」の境地を切り開いた歴史に残る作品だったのだから、彼の発言には誰も文句は言えないし反論も出来ないのだろうな。確かに、3Dブームを生んだこの『アバター』以降はそれに便乗するかのように多くの3D映画が劇場公開されたけど、実はその殆どが2D映画を3Dに変換したいわゆる“3Dコンバージョン映画”というもの。始めから3Dとして撮影された『アバター』なんかとは質も出来もワケが違うのである。そのおかげでせっかく火の付いた3D映画は「な〜んだ、この程度か、それにしては追加料金高いな・・・・」という世間の批評を浴び、遂には大金をかけて制作された正真正銘の3D映画『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』(11年)ですら、その不信感からかヒットに恵まれなかったのだから、牽引者であるキャメロンとしては文句の1つも言いたくなるだろうし、『パイレーツ〜』同様、本物の3D映画である『トランス〜』を応援したくなるのも無理はないだろう。が、僕個人としてはむしろこの『ピラニア3D』は映画界の救世主だと思うのだ。思いっきり開き直ったようなこんな映画こそ、娯楽としての映画ブームを、もっと言えばこれからの3D映画ブームをもう1度復活させてくれるのではないだろうか?「映画料金って結構高いし・・・・」とかセコいこと考えながら観る映画を吟味して選び抜いた挙げ句、劇場に足を運ぶのではなく「映画でも観に行こうぜ、なんか面白いのやってるかな?」ってな感じでビールとポップコーンを片手に何気に観る!これが本来の映画館での楽しみ方ではないのか?!おい!どうした?10〜20代!オレはもうすぐ40になるけど、子供たちを引き連れてやっぱりビールとポップコーン片手に盛り上がってるぞ!・・・・とウザがられ覚悟で言いたい。で、付け加えるならば『ピラニア』の続編である『殺人魚フライングキラー』(81年)はジェームズ・キャメロン監督、あなたの作品だったじゃないですか!とも言いたい。

 どんなにデカいテレビが・・・・例え3Dテレビが自宅にあったとしても、映画館での楽しみ方ってのはまた全然別なのだってことを改めて思い出させてくれる『ピラニア3D』。家に帰り着く頃には映画の内容なんてもう全く覚えていないかもしれない。でも、いつかの真夏の海水浴場でふと思い出すだろう、この映画のワンシーンを。その時にふと笑えばいいし一緒に来た仲間にそのシーンを話せばいい。その時はきっと「観てみてん!絶対面白いよ!」と言っているに違いない。


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