スリーデイズ

 幼い子供と3人で平穏に幸せな家庭を築いていたジョンの家に、ある朝突然、警察隊が押し入ってきて妻が逮捕されてしまう。しかも罪状は“殺人”。それから3年、彼は妻の無実を証明しようと必死になって独自の捜査を続け家財を全てなげうって尽くすのだが、調べれば調べる程「彼女が犯人だ」という状況証拠ばかりが出てきてしまう。そして刑は覆ることなく確定してしまい、彼女は刑務所内で自殺を図り・・・・それを機にジョンは妻の脱獄を計画する。という粗筋だけでも実にハリウッド的で面白そうな感じなのだけど、ここまでの流れが映画が始まってまだ10分程度の話なのだ。

 原作である08年の『ラスト3デイズ ~すべて彼女のために~』は、このスピーディーなアプローチが冒頭から一気に引き込まれたポイントであった。しかも、先に「粗筋は実にハリウッド的で~」と書いたが、それがヴァンサン・ランドンとダイアン・クルーガーが主演のフランス映画だったということも特筆すべきだろう。僕にとってのフランス映画の楽しみ方と言えば、まずは何といってもその“映像”。画面の全てにピントが合っているような見慣れたハリウッド映画の画面に比べ、「ココを見なさい」というポイントのみにピントが合ってそれ以外の箇所はボヤけている画。そして必要最低限に排除された音楽。更には、飲みながら観るには何とも心地良いフランス語の響きなどが“何となく憂鬱な”雰囲気を醸し出す・・・・。『ラスト3デイズ』はその全ての要素を網羅した、僕の思うところの「これぞフランス映画!」的な1本であった。しかしながら僕はこの映画を「登場人物みんな顔色悪かったよなぁ・・・・」くらいにしか記憶していなかったのもまた本音である。先に書いた、それだけでも1本の映画になりそうな物語をプロローグに集約させ「本当に彼女は無実なのか?やっぱ犯人なんじゃないの?」という最大の面白味になりえる心理戦は全く無視。とにかく盲目的な夫婦愛を持って彼女を疑う事無く突っ走り、それでも守りきれないとなれば「それじゃあ・・・・」ってんで脱獄を計画してしまう。ある意味メチャクチャだし一筋縄ではいかないプロットなのだ。が、物語は何のヒネリも無くむしろ意外なくらいにあっさりと終わってしまうってのがまたフランス映画らしかったワケで・・・・。

 映画史的に、もう何をやっても出尽くした感でありきたりになってしまい、あとは名作のリメイクか3D化しか無いんじゃないか?というのが最近の流行ともいえるハリウッド映画。しかしこの『スリーデイズ』もそのうちの1本では、断じてない。なんせ監督がポール・ハギスなのだから!クリント・イーストウッドの復活作である04年の『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本で脚光を浴び、初監督作『クラッシュ』でその存在を確立。そしてイーストウッドの『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』(06年)の二部作の脚本を手掛けつつ『カジノ・ロワイヤル』(06年)と『慰めの報酬』(08年)の『新007』シリーズの脚本も担当。合間にトミー・リー・ジョーンズとシャーリーズ・セロンの重厚な戦争ドラマ『告発のとき』(07年)を経て3本目の監督作となる本作は、遅咲きながらハズレ無しのポール・ハギスの最新作である。仮にポール・ハギスに全く興味が無かったとしても、ラッセル・クロウとリーアム・ニーソンの共演が観れるってだけでももう充分に価値のある映画じゃないだろうか。リメイク作とは言え、そのオリジナルの魅力を微塵も損なう事無く、それどころか数倍に面白い映画にしてしまうってところがポール・ハギスの実力を、そしてハリウッドの底力を感じさせる1本である。

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