ヘルプ ~心がつなぐストーリー~

 R.E.M.が解散してしまったそうだ。この手のモンスターバンドの解散時によくある“ファイナル世界ツアー(最後の一稼ぎ)”などもせず、突然の発表と共に新曲3曲を含む2枚組のオールタイムベスト版がリリースされただけだった。こうなってくると数年前に(時間的にも経済的にも)無理して行った武道館での来日に「やっぱ、行ってて良かった」と、あの日の価値観を改めて実感するものだ。

 新曲を含んだベストアルバムってのは、どうにも“売ったろ感”があって苦手だ。ファンだからこそ、アルバムは全部持っているので敢えてベストを買うまでもないのに、それに1曲でも“新曲”が収録されていれば買うしかないじゃないか。ましてや、過去に発売されたベスト版を既に持っていれば尚更。何枚買わすんだ?と憤りすら感じる。で、今回も同様のケースに凄く戸惑ったのだけど、やはり“最後の3曲”は聴かないワケにはいかなかった。今やネットでその曲だけをピンポイントで買える時代なのだということくらい充分承知だが「アーティストがリリースするアルバムってのはそのジャケットや何から全て一式なのだ」という時代に育ってきた僕は単曲買いは邪道だと思っているので・・・・。ベスト版とはいえ、1枚の壮大なアルバムとしてデビュー曲からリリース順に収録され、最後に収録されている新曲で「何故、解散するか?」をマイケル・スタイプに歌われた時、どうにも涙が止まらなかった。突然解散して、どうして最後にツアーもしてくれないんだ?!と憤ったファンも多いだろう。しかし、こうやって最後に届けられたアルバムを聴けば、その理由が、その思いがよく分かる。実にR.E.M.らしいじゃないか。彼らのファンで良かった。

 改めて気付いたのだけど、僕は彼らのアルバムを、カセットテープ、レコード、CD、と時代ごとに持っている。そしてデジタル配信になった今、彼らはそれに違和感を感じ潔く身を引いたのだろう。シングルとしてではなくアルバムとして作品を作り続けた“昔気質”とも云える音楽職人らにとっては当然の判断のように思う。

 そのR.E.M.の曲の中で1番好きで、同時に大嫌いな曲が『SHINY HAPPY PEOPLE』だ。中学生レベルの英語力があれば何となくでも理解出来るであろう単純な歌詞「幸せに輝く人々が手を繋ぎ笑っている」「周りにいるみんなを愛せ!その愛をまき散らせ!泣いている時間はない、元気を出すんだ」といった歌が当時の僕にはカッコ悪くてしょうがなかったのだ。なにせ僕は、ニルヴァーナを筆頭としたグランジブームにハマり、憂鬱で反社会的な音楽をカッコ良い!と思い疑わなかった同時期だったのだから。

 なんと温かく素敵な歌だろう。今こそ、R.E.M.なんじゃないだろうか?この『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』は正にそんな映画なのだと思う。ほんのちょっと前であれば、あまりにもストレート過ぎて観ててちょっと恥ずかしい、みたいな。舞台は60年代のミシシッピ州。公民権運動を背景に、人種差別が横行していた田舎町で“ヘルプ”として働く黒人メイドと白人女性の友情を描いた物語だ。実話を基にした原作ベースとはいえ、やはり「前にもそんな映画あったよね?」的なありふれた物語かもしれない。この映画にしても最近の『ドラゴン・タトゥー~』にしても「今時?!」ってなくらい“人種差別・女性差別”的な物語が世界中で共感され、いやホントに「何故今、そのネタ?」って思うのだけど、きっと人類の歴史的に“最後の追い込み”なのではないだろうか?いい加減、こんなのバカバカしいだろ?ってな感じの。だから、物語自体は既に見飽きたような凄く王道的な感じがして新鮮さはないのだけど。

 なのだけど、この映画の最大の魅力は登場人物の“衣装”にある!と、思うのだ。それまで分業されていた効率の悪い“服作り”をデザインから完成迄一貫させたオートクチュールが誕生して(1860年)からちょうど100年。そのパターンも多様化しだし“大量生産”だけどもしっかりとオートクチュールの匂いも残した“高級既製服(?)”的なプレタポルテという仕組みが登場した1960年代が、この映画の舞台である。60年代のファッションが大好きな人にとってはこの映画はその“画”を見ているだけでもう充分に幸せになれるような珠玉の1本だと断言できる。60年代のファッションって、なんて素敵で夢があるのだろうか。僕は(自分では決してそんな格好をしようとは思わないけれど)映画・・・・というか映像でそれを見るのが大好きで、一時期“60年代を舞台にした映画”を観漁ったほど。でも意外とそのファッションには力が入ってなかったりして数知れず残念な思いをしたのだけど。そんな中でも大好きなのが『アクロス・ザ・ユニバース』に『アメリカン・グラフィティ』、それに当時のイギリスのモッズとライダースのファッションを描いたものでは断トツの『さらば青春の光』、やり過ぎで面白い『オースティン・パワーズ』。で、その最高峰であるロバート・F・ケネディ暗殺の16時間前を描いた『ボビー』(コレはホントに最高!)といった名作たちである。

 それらの名作に退けを取らない、どころかトップレベルになるのではないか?!と思う程の60’ファッションぶり。しかも、今年の春夏の流行である“シャーベットカラー”いわゆる“パステルカラー”にアップデイトされた今風ぶりがまた、たまらないのである。それだけでも夢見心地で最高の映像に、この物語。こんなに幸せな気持ちになれる映画は実に久しぶりであった。

一番上にもどる      ホームヘもどる