崖っぷちの男

 いやぁ〜、面白かった!難しい理由や理屈は抜きにして“ただ面白かった”コレで良いんじゃないだろうか。ま、ココでホントにただ「面白かったよ!」じゃ流石に井上社長に怒られそうなんで、なんか無理にでも書くとして・・・・そう、この手の映画に関しては「無理して何か書く」って感じになっちゃうのだよなぁ〜・・・・。テレビの洋画劇場とかでやってるのを何気に観てて「おっ?!コレ何?めっちゃ面白いじゃん!」っていうジャンル。怒られるかもしれないけど“ザ・テレビ向き”映画だ。が!このジャンルを敢えて劇場の大画面で観る贅沢さ!映画通にこそコレは是非とも劇場で観て欲しい1本。

 ホテルの窓から身を乗り出し、高層ビルのわずか数十センチの壁に立つ男。誰が見ても飛び降り自殺をしようとしている男に気付きビルの下にはあっという間に野次馬の人だかりが・・・・冒頭わずか5分足らずでこの展開である。ビルの壁にしがみ付く彼は1ヶ月前に刑務所から脱獄した元刑事キャシディ。そこに、同じく1ヶ月前に飛び降り自殺を止められなく未だにそれを引きずる女性警官リディアがキャシディの指名で登場し彼の説得に当たることに。2度と同じ悲劇を繰り返すまいと必死に説得を試みるリディア。と同時に、キャシディの仲間と思われる者たちが彼と無線で何やらやり取りしながら隣のビルに侵入していく・・・・。映画が始まって15分後にはもう一体誰が仲間で誰が敵なのかも分からなくなり、目の前で繰り広げられているシーンも一体何がしたいのか?疑問符だらけ。「こういうことか?」と予想する間にもどんどん物語が転回しながら進んでいくので観客には“推理する”時間すら与えられないのである。とは言っても、決して難解なストーリーではなく、むしろ単純で爽快。どう?面白そうでしょ?!

 主人公キャシディは、フラッシュバックで過去の映像が盛り込まれるものの、本編の約9割はビルの外側に立っているのみ。そう、この映画はいわゆる“B級映画”の代名詞とも言える“シチュエーション・ムービー”ってやつだ。何が凄いって、普通ならば「劇場未公開!」とかで話題になるであろうレンタルショップの花形である“シチュエーション・ムービー”が、第一線で全国公開された、ということ。コレは久しぶりの快挙なのではないか。

 “シチュエーション・ムービー”で最も肝心なのは“主人公”。もう分かり易く“主人公の演技力・魅力”である(その“設定”や“場所”そのものが主役である『CUBE』(97年)とか『SAW』(04年)なんかは別として)。だって“シチュエーション=状況”が固定されているのだから、そこに観客を長時間引きつけておくってのは、もうそこにいる役者の演技と魅力しかないじゃないか。“シチュエーション・ムービー”の代表作と言えば・・・・ベルが鳴っていた街角の公衆電話を何気に取ってしまったら「電話を切ったら殺す」と言われて切るに切れなくなった『フォーンブース』(02年)とかだろうか。そう考えるとこの映画もやはり物語もさることながら、始終、電話ボックスで受話器を持ったままのコリン・ファレルの演技は本当に凄かった!あと、自宅軟禁中に暇で隣人を覗き見してたら偶然にも殺人現場を目撃してしまった!という学生を演じた『ディスタービア』(07年)のシャイア・ラブーフ!この後『トランス・フォーマー』(07年〜)や『インディ・ジョーンズ』(08年)で巨匠スピルバーグやマイケル・ベイに射止められたのも頷ける。そして今回、この大役を演じ物語を引っ張るのはサム・ワーシントン!『ターミネーター4』(09年)で頭角を現し、同年の『アバター』で大ブレイク!そして『タイタンの戦い』(10年)『タイタンの逆襲』(12年)での大活躍も記憶に新しい、リーアム・ニーソン、クリスチャン・ベイルに続く、近年稀にみる超硬派な俳優だ。

 全くの余談、っていうか個人的なエピソードかもしれないけど、“観客を魅了する俳優”と言えば、僕に取ってはやっぱりマシュー・ブロデリックなのだなぁ・・・・知らない?失礼ながらも『フェリスはある朝突然に』(86年)を観ろっ!と、どやしたい。いやホント、これだけ観客を魅了する俳優ってのは未だなかなか居ないと思うのだけど。だって、『ウォー・ゲーム』(83年)『レディホーク』(85年)そして『フェリス〜』の、83年から86年迄のたった3年間で未だにこうやって僕の中で唯一の存在で居続ける俳優って凄いだろう?因みに、自分がパーキンソン病であることを公表し財団を設立しているのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマイケル・J・フォックスの方。え?それくらい知ってる?2人が混同するのはオレだけか?

 「えぇ?!そこはどうでもいいし!」と突っ込みを入れつつも、爽快感に包まれるラストを含め80年代テイスト満載の超娯楽作。先にも書いたが“映画通”にこそ観て貰いたい映画ファン必見の1本だ。それにしても邦題の『崖っぷちの男』!もっと他に気の利いたタイトルはなかったのだろうか?

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