リンカーン弁護士

 前回書いた『崖っぷちの男』同様「他にもっと良い邦題なかったのか?」な映画だ。2作とも確かに原題に忠実といえばそうなんだけど、こんなに面白い映画なのにこの“邦題”のお陰で8割くらいの予定客を逃していないだろうか?・・・・。まさか、少子高齢化に伴い1番映画好きでそこそこ金も持ってるであろう“団塊ジュニア世代”のおっさんたちを劇場に呼び込む為には、このくらいベタで分かり易い方がいいんじゃないの?と、配給会社の若い邦題決め担当が思って付けているのであれば腹が立つ・・・・自分で勝手に想像して書いておきながらマジでメッチャ腹立ってきたんですけど。

 ロサンゼルスの大都会で数々の事件を弁護し勝ってきた敏腕弁護士ミック。しかし、こういう大都会ではいつだって“正義が勝つ”ワケではない。時には罠を仕掛けてみたりサクラを仕込んでみたり、金にモノを言わせたかと思えば必要に応じてその“軍資金”をしっかりぼったくる。街の悪党たちからの依頼も絶えないミックは、友人の紹介でとある依頼を引き受けることに。依頼人は大金持ち資産家のバカ息子(と、その金持ち両親)。何故にこんな小さな傷害事件をオレに、しかもこんな大金で?と若干胡散臭く思うも「コレは金になるぜ!」と踏んだミックはそれを引き受けることに。すぐに終わるであろう何でもない小さな訴訟(事件)のはずだったのだけど、その昔、彼が刑務所に送った解決済みの殺人事件と今回のこの小さな事件とが何気に結び付き・・・・うわっ!おもしろっ!で、そのタイトルは『リンカーン弁護士』!勿体ねぇ〜!

 主人公ミックが(ワケ有り)運転手付きで乗ってるのがリンカーン。あまりの忙しさに車内を事務所代わりにし、ハーレーの集団から“リンカーンでの移動中に”次の仕事の依頼を受ける・・・・確かに乗ってるのは“リンカーン”なんだけど、そう頻繁に登場するでもなく物語の核を担っているワケでもなく、更には「敏腕弁護士として金持ちの象徴」的に描かれてるワケでもないのだ(型も古いし結構ボロボロだし)。もしかして“リンカーン”に別の裏意味がある?とにかく僕にはこのタイトルの意味が分からなかった。やけに引っ張るけど、僕はそれだけ本気で残念なのです。もっとマシな邦題付けたらきっと、もっと沢山の人にこの映画の面白さを伝えられたなずなのに・・・・。

 いかにもハリウッド映画的なキャラにも関わらず、この弁護士に実在のモデルが居たというのだから驚きだ。手持ちカメラを駆使して敢えてブレた映像でドキュメンタリー風に描きつつも、法廷のシーンや「ココぞ!」という場面ではバッチリ固定したハリウッド的映像。この何気無くも計算された振れ幅が凄い。監督はブラッド・ファーマン!・・・・って誰それ?監督はともかく、キャストが凄い!主演のミックにマシュー・マコノヒー!・・・・他に何に出てた?確かにすぐには思い付かないけれど、これまで色んな秀作で見てきたのは間違いない。どんどんやつれて痩せてくる後半になればなるほどクリスチャン・ベイルに見えてくるから不思議だ。で、何より凄いのが依頼人テッドを演じるライアン・フィリップ。未だ99年の『クルーエル・インテンションズ』と全く変わらず“青臭い”雰囲気の彼の演技(存在感)がとにかく凄い!他にも「代表作は何?」と訊かれても全く出てこない・・・・けれど絶対みんな“見たことある”ジョン・レグイザモやマイケル・ペーニャも何気に出演しているほか、あのウィリアム・H・メイシーもイメチェンして登場!更には!『ストリート・オブ・ファイヤー』や『フィラデルフィア・エクスペリメント』等の80年代の大スター、マイケル・パレも!なんなんだ、このB級豪華キャストは?!そしてやっぱり「コレを実現させたブラッド・ファーマンという監督は一体誰なのだ?」と言いたい。是非ともこの同メンツでシリーズ化して貰いたいものだ。

 B級テイスト満載のタイトルと出演者陣とは裏腹に、その中身は超1級の“サスペンス・法廷・娯楽”エンターテインメント作。しかしやっぱりこの邦題のせいで全国ロードショーは無し、つまりココ鹿児島では劇場公開は無しか・・・・と半ば諦めていたのだけど、まさか?!の天パラ公開!『私が、生きる肌』に続き、凄いぜ“天パラ”!せっかくこんな映画館ができたのだから鹿児島の映画好き人口が急増してくれれば、この街はもっともっと楽しくなるんじゃないだろうか。そう、心から思う。

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