プロメテウス

 新作映画を月2本紹介する “Go to Theaters” での、この回がCROWDで更新されるのは9月10日予定。タイミング的にはどう考えたって7日公開の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』だろう。そんなことは分かっているので今月25日更新の映画コーナー“Short cut”では勿論『踊る~』をテーマに語る予定だし、先日TVで放送された劇場版の前日譚である『THE LAST TV』だって録画してまでちゃんとチェックしたのだ。その方が読者的にも劇場的にも、なんか分からないけど“映画関係者”的にも無難だし納得して貰えるはずだから。が、敢えて『プロメテウス』。何と言ってもCROWD社長の井上氏が「あ、そこ外して行く?」と笑って許してくれそうな気がするから、きっとOKだろう。

 しかもこの『プロメテウス』は公開されてから結構時間が経っているんで、もういつ劇場公開が終わってもおかしくない微妙なタイミング・・・・だからこそ書きたいのだな。だって、コレだけの話題作なのに、意外と観ていない人多くない?僕の身近なとこでも「いや~、まだ観てないんだよね、観たいんだけどなかなか忙しくて・・・・」ってな声が多いのだけど、その度に僕は「だよね~、忙しいよねぇ~」と答えつつ、内心では「時間作って早よ観ろやぁ~!モタモタしてたら終わるで~!」と、何故かニセ関西弁で叫んでいたりする。もっと言えば「もしかしてDVD出てから観ようと思ってる?・・・・出た!それ止めない?映画はやっぱ劇場の大画面&大音響で観てなんぼだよ!」と。確かに最近はDVDになってレンタルが始まるのが早いけど、やっぱり劇場で観るそれとは違うと思うのだ。もう“全く”と言っていいほど。

 この『プロメテウス』は間違いなく“劇場用”の映画だ。「劇場で観ることをお勧めする」ってなことを僕はよくココで書くけれど、決してそれは僕の定番的な決めゼリフではなく本心でそう思う映画だけをココで取り上げているつもりなんで是非ともご理解頂きたい。僕だって「コレはTVでいいな」という映画はDVDまで待ってもいいのだけど、では、どれがその映画なのか?ってのが“観ないと分からない”ってジレンマがあるから。だから少しでもそういう人のお役に立てれば、と選出しているつもりである。ただ僕は決して“劇場用映画”が「上」で“TV向け”が「下」という基準であるワケではない。中には「コレってこうだよね?」とか「あぁ!こいつアレだったじゃん!」とか、ワイワイ話しながら観る方が面白いだろう映画もあるし、逆に完全に隔離された“孤立空間”でその世界観に浸った方が絶対に良い映画もあるワケで・・・・話は変わって、今回は『踊る~』ではなく『プロメテウス』を書きたいと思う。

 いつくらいだったろう?SF映画の金字塔『ブレードランナー』(82年)のリドリー・スコットが、同映画を自身でリメイクすると発表したのは。これまで散々リメイクの噂があったにも関わらずあまりにも傑作過ぎて実現に至らなかった映画だっただけに、オリジナルの監督が「リメイクする」と公言した日にはもう世界中の誰もが「どうぞ、どうぞ」って感じで「今度こそホントに観れるのだな」と映画ファンは胸を撫で下ろしたことだろう。と、同時に!それまでジェイムズ・キャメロンが進めてきた『エイリアン5』の企画をオリジナルのリドリーが引き継ぐことになり、しかもそれが『エイリアン』の“その前の話し”いわゆる「ビギンズ」映画として製作されると発表!しかし、クリストファー・ノーランの『バットマン ビギンズ』(05年)以降、流行ともなった話だったんで殆どの映画ファンが「最もあり得ない“ビギンズ映画”」だと期待すらしていなかった映画だったのだけど・・・・まさか『ブレード~』より先に実現するとは。

 リドリー・スコットが79年に世に送り出したSFホラーの大傑作『エイリアン』は、その名を知らない人はいないってくらい世界中にインパクトを与え、86年には巨匠ジェイムズ・キャメロンがSFアクション映画に昇華させシリーズ最高の興行収入を記録する続編を製作。その後、92年のデヴィッド・フィンチャー版『3』、97年ジャン=ピエール・ジュネの『4』と、実力のあるインディー監督がハリウッドに進出する架け橋的映画として名を馳せ、いよいよアーティスティックなタイトルとして映画史に残るのか・・・・と思った矢先、04年に公開された(しょーもない)『エイリアンVSプレデター』でその歴史に終止符を打ってしまうのだが・・・・。そして先にも書いたようにオリジナルのリドリー・スコット自身が『エイリアン』を製作する!と発表したかと思いきや、いよいよ撮影まで始まったら今度は「やっぱり『エイリアン』とは別物だ」と言い出して・・・・でもその内容・キャラはやっぱり『エイリアン』じゃん!という実に中途半端な位置になったのも否めないのだが。

 舞台は2089年。考古学者のエリザベスとチャーリーは年代も異なる複数の古代遺跡から共通する星図を発見する。その星図が示す星に“人類の起源”の謎の答えが見つかるのではないか?ということで宇宙船「プロメテウス」に乗り込み未知の星へと調査へ。そこで見つけた“見た目は人間と全く変わらない巨人”の死体を調べると、なんとそれは人間のDNAと一致!この“エンジニア”と名付けられた巨人が自分らに似せて人間を創ったのか?まるで人間が自分らの姿に似せて“人型アンドロイド”を創ったように・・・・。しかし何故にこの星は今や“死の惑星”と化しているのか?何故に巨人たちは独り残らず死体となっているのか?・・・・はい、その通り!“エイリアン”登場!

 物語は、その“エイリアン”がエンジニアの創った「生物兵器」であることが判明。更にはそれの“卵”を大量に積んだ宇宙船が地球に向けて出発する直前に彼らが絶滅し、出発が失敗に終わったことまで分かるのだが・・・・では何故に、エンジニアは“人間”を創造し、そしてそれを絶滅させようとしたのか?その理由・謎を明かすための伏線で終わってしまうんで「あぁ~、もう!」っていう中途半端感もあるし、細かいことを言えば物語や設定とかにも“突っ込みどころ”は山ほどあるのだけど・・・・それに応えるべくしてか?早速、続編の製作も発表されたんで謎の答えはそっちに期待したい。

 主演は、デヴィッド・フィンチャーの“リメイク版”『ドラゴン・タトゥーの女』(11年)の方ではなく、スティーグ・ラーソン原作の本国スウェーデンで作られた、いわゆる“オリジナル版”である『ミレニアム』(09年)でヒロイン“ドラゴン・タトゥーの女・リスベット”を演じたノオミ・ラパス!英語圏外の俳優が、しかもこれだけ話題性のあるハリウッド映画に主演するってのは物凄い快挙である。更にはこのノオミ・ラパス、ろくに英語も喋れないというのだから驚きだ。もうこのキャスティングだけで映画が“普通じゃない”ことをアピールしている気すらする。ハリウッド大御所のシャーリーズ・セロンとガイ・ピアースも出演しているが「何処に出てたっけ?」(それは言い過ぎか?w)というくらい“ハリウッド・スター感”を抑えているのは、間違いなく計算済みの演出なのだろう。

 本編は観ていなくても、きっとこの映画の「予告編」を観たことのある人は結構多いのではないだろうか?壮大で美しくも幻想的でミステリアスな世界観。ここ数年の「予告編」の中でもずば抜けてよく出来た映像だったと思うのだが、本編のそれは、なんていうか・・・あの「予告編」は“さわり”ですら無いってくらい「怖さ」「映像美」「面白さ」に於いて超越している。正に79年の『エイリアン』でしか味わえなかった世界観!恐怖感!「宇宙船内」もしくは「酸素の無い惑星」での息苦しさを感じる限られた空間内だけでの展開。これも“劇場用”であることの大きな要素の1つだ。最近の「怖い映画」と言えば“目を背けたくなるような映像”だったり“デカイ音でビビらす!”ばかりだが、この手の“腹の底から怖い!”っていう心理的恐怖を味わえる映画ってのはなかなか無いのだよなぁ・・・・。併せて、映画全体を統一する究極ともいえる映像美。忘れてはいけないのがオリジナルの『エイリアン』こそが、当時はその映像美が大いに話題になり第52回アカデミー賞の「美術部門」でノミネートされたほど評価され、そしてそれは続編にしっかりと引き継がれているシリーズの伝統とも云える部分だったりするということ(特にジャン=ピエール・ジュネの『4』!)。他にも、初代『エイリアン』でイアン・ホルムが演じたアッシュに酷似した設定のアンドロイドが物語の肝となっていたり、シガニー・ウィーバーことリプリーと重なるヒロインが登場したりと、何かと『エイリアン』と被る箇所が多いのだが、まぁ、何と言っても1番はあの誰もが知っている“エイリアン”のデザインを担当した(エイリアンの生みの親とも云える)H・R・ギーガーがこの『プロメテウス』でもキャラのデザインをやっていること!相変わらず斬新でキモくて全く勝てる気がせず一目で絶望感を味わうような・・・・それでいて何でか「ちょっとカッコ良い気もしない?」的な絶妙さ!(まんま“エイリアン”や“チェストバスター”も出てくるし)恐るべし72歳!っていうか、監督のリドリー・スコットは75歳だし!まぁ言えば、こんな最先端を行く凄い映画を創ったのって“爺さんたち”なんだな・・・・(笑)カッコ良い~!

 自分の過去の傑作を自ら再着手した『プロメテウス』然り、名作『ブレードランナー』のリメイクも控えている兄リドリーに触発されてか?実弟トニーも自身の最大のヒット作である『トップガン』を、なんと同じトム・クルーズ主演で遂に始動した『トップガン2』!・・・・が、その矢先のつい先日8月19日、トニー・スコットは68歳で遺書を遺し橋から飛び降り自殺。最近だって『サブウェイ123』(09年)や『アンストッパブル』(10年)といった傑作を監督し、今年に入ってからも兄リドリーと共同で『THE GREY』というリーアム・ニーソンの主演作を製作していたのに、一体何故?と驚くばかりだ。その『トップガン2』は案の定、製作は中断したようで残念なような、ちょっとホッとしたようなだが・・・・。

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