アウトレイジ ビヨンド

 僕は「ペペロンチーノ」が大好きで外で食べる時は勿論、家でも“パスタ”といえば「ペペロンチーノ」だ。我が家では子供たちの好みに合わせて大体「トマト」「ミート」「たらこ」のどれかなのだけど、やっぱり僕の分だけはいつだって「ペペロンチーノ」。庭で穫れた自家製・唐辛子の輪切りと、同じく(形の悪い)自家製にんにくのみじん切りをたっぷりの美味いオリーブオイルで炒め、そこにしっかり塩を効かせて湯がいた固めのパスタを湯切りをせずに投入し、あとは絡めるだけ・・・・ま、本当の作り方は知らないけど、うちではコレ。この、ごくシンプルな美味さがたまらないのだ。・・・・とは言っても僕が「ペペロンチーノ」の美味さに出会ったのは実は結構最近のことだったりする。恥ずかしい話マジで30代に入ってから、まだ10年も経たないくらい。いや、その前にも食べたことはあっても正直「絶対何か入れ忘れてるよね?っていうか“ペロペロなに?”」という感じで決して「美味い」とは思ったことはなかったのだけど、何故だろう?何がきっかけでこんなに好きになったのか自分自身分からない。ま、アレだろう、大人になって“ゴーヤ”とか“秋刀魚のはらわた”とかが突然好きになるあの感覚と近いのかな?

 「ヤクザ映画」ってのは僕にとって正に映画化界の「ペペロンチーノ」だ。シンプルでストレート、それでいて唯一無比の味わいが何とも言えぬ魅力。ある程度歳いってから好きになってきたという点でも重なったりして。生前の親父が大の「ヤクザ映画」好きでしょっちゅうレンタルビデオで借りてきては観ていたのを思い出す(それも、僕が中学生・高校くらいまでか?何故だかそれ以降は洋画にハマっていたようだが・・・・)。今のような大型店ではなく何処の地域にも1店はあったような近所の小さなビデオショップで、文字通り“毎晩の様に”ヤクザ映画を手当り次第に借りていた親父は、そこに何のルールや方向性も無いものだから一体どれが観たやつでどれがまだ未観なのか?もさっぱり分からなくて、しょっちゅう「コレ観てた」と言っては再度ビデオショップに行き交換して貰っていた。実に迷惑な客であっただろう。時には1時間以上も経って映画がクライマックスに差し掛かっている最中に「あれ~・・・?コレ観たんじゃないけぇ~・・・・?」と独りごちてるもんだから年頃の僕は思わず「もっと早よ気付けやぁ~!!!」とヤクザ風に怒鳴ってしまい、同じく“ヤクザモード”の親父と怒鳴り合いの喧嘩になったものである。

 北野武が監督作として2000年の『BROTHER』以来、実に10年ぶりであったヤクザ・バイオレンス映画『アウトレイジ』からたった2年、しかも前作で北野演じた組長・大友はラストで死んだはずなのでその続編ってのはきっと誰もが“あり得ない”と思っていたのではないだろうか。前作『アウトレイジ』は、小日向文世が演じる刑事も含めて「全員悪党」という、ある意味身もフタもない究極ともいえる極道設定の上に、椎名桔平や加瀬亮、それに三浦友和に國村準といった錚々たる豪華メンバーがそれを演じるってのが実に爽快で魅力的な映画であった(ただ“大ボス”山王会本家会長を演じる北村総一朗がどうにも『踊る~』の警察署長にしか見えなくてその立場なりの貫禄を感じず・・・・ま、それはそれで面白かったのだけど)。本作も西田敏行、桐谷健太、中尾彬、高橋克典といった豪華キャストが前作の“生き残り”キャスト陣に加えて続々登場し、それがまた前作にも増してどいつもこいつも極悪!中でも1番“極悪”なのがいつもヘラヘラ笑いながら飄々と極道どもの間を渡り歩き自分の都合の良いように仕立てていく「小日向文世=片岡刑事」だったりするものだから何ともタチが悪いというか・・・・。そう言えば随分と昔、CROWDが雑誌時代の映画コーナー「Short cut」が縁で出会った“映画オタク”たちと飲みの席、『ゴッドファーザー』シリーズで誰が1番悪党か?というテーマで延々と語ったことがあったが、この『アウトレイジ』も同テーマで語り明かせるかもしれない。こういったテーマは“悪”の角度が人それぞれだから面白いのだな。小学生の子供を持つ親としては「ま~、言葉使いが悪い!」と思いつつも「バカやろ!」「このやろ!」と連発されるセリフが実に小気味良く爽快に聞こえるほどとにかく楽しめる映画。往年の「フィルム・ノワール」的なラストといい・・・・いや、本当に面白かった。

 物語は前作『アウトレイジ』と直結しているのは当然として、登場人物の人間関係や立場、そしてその関係や裏切り等々が要となっているので、ココで粗筋的なことを書くのは敢えて止めておこう。前作を既に観ている方も出来ればもう1度見直した上、なるだけ“前情報無し”で観た方が断然楽しめると思うから。では、国内のみならず世界中で認められている“北野武映画”並びに監督自身について書くとすれば・・・・それこそ枚挙に暇がなく巧くまとめられる自信もないのでやっぱり止めとくが(笑)、「北野武映画」と言えばすぐに「ヤクザ映画」を連想してしまうのは僕だけではないだろう。流石にキアヌ・リーヴスと共演した95年の『JM』を真っ先に思い浮かべる人はいないにしても、他ジャンルでも数々の名作があるのに、まぁ不思議と言えば不思議だ。だから、というワケではないけど僕はどうにもテレビに出てくる北野武が苦手だ。っていうか、一言で言えば「怖い」というか・・・・。公の場で、何にも全く面白くないネタを堂々と言ってるのに、視聴者が「・・・・え?」と思う隙すら与えず周り(共演者)が大笑いをしているのを見ると何だか物凄い「圧力」を感じて空恐ろしい気分になってしまうのだが、僕だけか?ヤクザとの繋がりで引退した芸人や、業界での“大物”として周りから恐れられている芸能人なんかより遥かに“本物の怖さ”を感じてしまう。そう言った意味でもどんどん箔を付けてきている“今の”北野武だからこそ、この『アウトレイジ ビヨンド』は桁外れた映画になっているのだろう。

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