007 スカイフォール

 最近だと『ボーン・レガシー』や『外事警察』の回でも書いた通り、僕の夢が“MI6”(もしくは“CIA”でも可)だということは随分と昔から言い続けているので今や周知の事実だと思う。っていうか、これだけ思い続けているとなんだかもうそろそろ叶いそうな気すらしてくるので不思議だ。その原点となっているのは“スパイ”の代名詞とも言える「007=ジェイムズ・ボンド」であることは言う迄もないだろう。子供の頃からずっと“スパイ”としての彼に憧れ、また大人になってからも「カッコ良くスーツを着こなす」ファッションのお手本として未だ僕を魅了して止まない。しかし、たとえ僕がトム・フォードのスーツに身を包み、オメガのシーマスタープロフェッショナルを手首に付けていたとしても誰も「ジェイムズ・ボンドみたいだね」とは言ってくれないだろうけど。

 62年の第一作目『ドクター・ノオ』から実に50年。生誕50周年を記念して作られた本作『スカイフォール』はなんと、批評・興行成績共にぶっちぎりで圧倒的なシリーズ1位を記録更新中だというのだから凄い!コレは間違いなく6代目ボンドである“ダニエル・クレイグ”の功績だろう。だって純粋にカッコ良いもん(スティーグ・ラーソンの世界的ベストセラー『ドラゴン・タトゥーの女』でのミカエルですらジェイムズ・ボンドに見えてしまうほど)。いかにも英国紳士的な佇まいにゴージャス感・セクシーさ、加えて突出したワイルドさまでをも全て併せ持つ彼は正に正真正銘の“ジェイムズ・ボンド”!歴代ボンドの中でも断トツではないだろうか。思えば(007シリーズに限ってココ数年の「ビギンズ映画」ブームに便乗して、というワケではないだろうけど)ダニエル・クレイグの新生ボンド初作はイアン・フレミングの原作「007」第一作目の初映画化『カジノ・ロワイヤル』(06年)。007が未だ007ではなかった頃の話でいわゆる「007誕生秘話」だったのである。それと『カジノ~』の続編『慰めの報酬』(08年)のたった2本で「007」はただの“娯楽作”からちょっとシリアスな人間ドラマ的アクション映画へと昇華を果たす。が、そんな「現代版007」にアップデートされた新シリーズは往年の007ファンには正直「若干の不満感」も残ったはずだ。あのバカバカしいまでの“娯楽性”は何処にいった?わざとらしくセクシーなボンド・ガールは?ド派手なボンド・カーは?やり過ぎなほどマンガチックな敵キャラは?「ジェイムズ・ボンド」という超高級ブランドを完璧に着こなし、自分流にアレンジまでしてしまったシリアスで超カッコ良い「ダニエル・ボンド」がそれと引き換えに“色男っぷり”と“ユーモア”並びに“バカバカしさ”を無くしてしまった感はどうにも否めなかった。

 そしてダニエル・クレイグ3作目(シリーズ通算24作目)となる『スカイフォール』。コレはどうだ!オープニングのワンシーン(&たったの一音)だけで、もうコッテコテの007節全快!それがこれまで幾度となく見てきた“007のパロディ”ではなく正しく“本物”だということを実感した途端、全身鳥肌モノである。そこから怒濤のアクション・シーン!「まだ続く?!」ってくらい冒頭からクライマックス的な長時間に渡るアクション・シーンが一息つく頃、ずっと肩に力が入っていたことに気付く。が、ホッとする間もなく今度は(マニアの間では最高傑作とされる)『ロシアより愛をこめて』(63年)を思わせる列車上でのアクション!やり過ぎ~!バカバカしぃ~!!!(笑)007初期の悪役をイメージさせるマンガチックな敵キャラも登場するし(しかも、大好きなコーエン兄弟の傑作『ノーカントリー』(07年)で悪役シガーを演じたハビエル・バルデム!)02年の『ダイ・アナザー・デイ』以来久しぶりに“武器調達係”「Q」も登場!それに『ゴールドフィンガー』(64年)に登場したアストンマーチンDB5も!更には音楽はベッタベタな「ジェイムズ・ボンドのテーマ」!!!(誰もが知っているテーマソングだけど、意外とここ最近は劇中でそれが流れることはなかったのに)そして何より、ボンドが色男!(笑)カッコ付けずに本能に従って行動するし、かつてのユーモアもしっかり取り戻している!ラストの「50th Anniversary」ってロゴも何だか「コレからまた始まるぜ!」ってな頼もしさを感じる程すっかり息を吹き返した感のある「007」シリーズ。至福の2時間強、僕はずっと涙目で笑いながら観ていたと思う。

 物語は、MI6がサイバー攻撃を受け、バキューン!となってドカーン!!となるのだが、犯人がかつての諜報部員で、そのターゲットがボスである“M”だということが大きなポイントだ。マザー(M)に捨てられた息子(諜報部員)に対し「彼1人で6人の部下を救えたのよ・・・・」とある意味仕事に徹する“内心”に熱くなる。同じような境遇に遇うボンドが悩むのは“自身の仕事とは?”心底、仕事だと割り切れるか?「仕事の為には死んでもいい」と腹を括れるか?職場のせいに、業界のせいに、世の中のせいにしつつ職業をコロコロ代える今の若者にはもう無いだろう、きっとギリギリ僕ら世代にはまだ残っていた「仕事愛」ってのが究極に描かれているのがまた“最新”なのだ。コレはボスである“M”とその部下の物語。マジ?!その角度で007をやる?!ってなくらい凄い!流石、サム・メンデス!そうそう、監督はなんとサム・メンデス。意外だよなぁ~・・・・72回アカデミー作品賞を受賞した『アメリカン・ビューティー』(99年)でのイメージが強い割には個人的にこの映画は全然好きではなく、続く大ヒット作『ロード・トゥ・パーディション』(02年)はまだ良かったけど、トム・ハンクスにポール・ニューマン、ジュード・ロウという豪華俳優が共演した「人間ドラマ」というイメージがより強くなり(そういえば、この映画にはダニエル・クレイグも出ていたのだった!)アクション映画とは無縁の感じがあったのだけど、こうやって観終わった後は、サム・メンデス大正解!やっぱサム・メンデスでしょ!だ。

 「50周年記念作」として、バーナード・リー、ロバート・ブラウンに続き95年の『ゴールデンアイ』から3代目“M”として永年活躍していた ジュディ・デンチに1つの節目を与えたことが「サム・メンデスすげー・・・・」な感じだ。そこの責任取る?みたいな(笑)。また1作目から全作観直してみようかなぁ・・・・言っても23作なので例えば人気アメドラを1から追いつこうとするよりは全然楽なはず。そう言えば僕は、結婚する際に相手が「007を観た事がない」という事だけがどうにも引っ掛かり、1作目から順を追って全作観せたのだった。007を観た事もない女性とこれから先ずっと一緒に暮らしていける自信がなかったから。それを機に彼女が僕とずっと一緒に暮らしていける自信を無くしたのは言うまでもない。それにしても、いつから007を「ダブルオーセブン」と言うようになったのだろう?僕は未だに「ゼロゼロセブン」なのだけど。

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