クロユリ団地

 地元の中で永年このコーナーをやらせて貰っているので、原稿を書いている「坂元豪」が誰であるか?を知っている人も多いだろうからあまり公に細かくは書けないのだけど、最近、僕の家の近所で「失踪事件」ってのが起こったらしい。携帯も財布も車も全部残したまま本人だけが居なくなるというアレである。“失踪”と言えばまず松本清張の『ゼロの焦点』を思い出すくらいに実に現実離れした摩訶不思議な出来事であるのだけど、そう言えば僕の周りではコレが3回目なのだな。最初は僕が18~9くらいの時だったか?毎晩バンド演奏をしてお給料を貰っていた時期、それまで遅刻もせず真面目に働いていたそこのスタッフさんが突如無断欠勤を続け、心配になった上司が自宅に訪問しても留守。部屋の鍵が開いていた上、財布や免許証等も全て部屋に置いてあったので不思議だなぁ、と彼の実家に連絡を取ってみたところ両親すらも「(息子と)連絡が取れなくなった」とあり一時ちょっとしたパニックになったのを覚えている。その後は分からないけれど、僕がそこで働いていた約3年あまり彼は消息を絶っていたままだった。そしてその5~6年後だっただろうか?既に今の美容業界の仕事に就いていた時期のとある美容コンテストの当日。そのコンテストはヘア・メイクのペア2人組で出場するってのがルールだ。そのコンテストにエントリーしていたメイク担当の女性が「相方(ヘア担当)と連絡が取れない。夕べも遅くまで一緒にレッスンをしていたのに・・・・」と出場をキャンセル。勤めていたサロンも彼の親御さんも一時大騒動になったけれど、結局僕はそのヘア担当の彼ともう二度と会っていない。そして今回が3回目。これだけ周りに心配をかける不可解な出来事なのに何故だか新聞等公に出ないのが不思議だ。事件なのか?事故なのか?それとも本人の意志なのか?(だとすれば物凄く迷惑な話なのだが)すら何も分からないからなのだろう・・・・。で、気になって気になってネットで1~2時間ほど熱心に調べてみたら、僕は物凄い“事実”を知ってしまった。本音を言うと「あぁ、もう知りたくなかった」「知らなければ良かった」と思うほど・・・・。この手の話って世間では本当に山ほどあるのだな。しかも“大人の失踪”ならばまだ色々と事情を詮索できるのだけど、まだ年端もいかない子供の失踪事件ってのが凄く多いってのに驚いた。物凄くショックだ。

 例えば、下の子を先に玄関に入れ、次に・・・・と、わずか40秒足らずの間に居なくなった子供やら、2階に親戚の子供らと3人で、そのちょうど真ん中に寝ていた女の子だけ居なくなった怪事件(1階で寝ていた親は、その夜に玄関を開け閉めする音や直後に車のエンジン音を聞いている)、更には飲みかけのココアを残したまま消息を絶った8歳の女の子の自宅に3年後に届いた怪文書(この怪文書怖すぎ!不愉快すぎ!)・・・・などなど、実際に公表された「情報を求む」というようなサイトを見て「こんなに子供絡みの失踪事件・未解決事件・怪事件って多いのか?!」と、もう本当に背筋が凍るほど怖くて悲しくて、相当にヘコんでしまった・・・・。昔から人が突然居なくなる「神かくし」という言葉があるけれど、僕は個人的にこういう「神」とか「心霊」とかいったきちんと説明できない(と同時にある意味逆にそれで全部片付けられてしまうような)ことを全く信用できない性格なので「霊とかじゃなくて生きている誰かが何かをしたのだろう」と・・・・そうなれば「じゃ誰が何を目的に何をしたのだ!?」となって、もう怖くて怖くてしょうがなくなってしまった。ちょっと前まで自宅の周りは空き地だらけだったので、最近越してきてくれたお隣さんを改めて有難く思ったりしていたそんな時、長男が「とうと(お父さん)、『クロユリ団地』観に行きたい!」と言うので思わず「黒豚ランチ?」と聞き返したのだけど、それはどうやら超怖そうなジャパニーズ・ホラーなのだそう・・・・「お父さんは今、怖いのはダメなのだ」と答えたところで息子が納得するワケがなく結局観に行くハメになった。

 近隣の住人から「出る」と噂されるクロユリ団地に引っ越してきた家族。毎晩聞こえる不快なノイズや“引っ掻くような音”、更には家族の不可解な行動に長女の明日香は徐々に心身共に不安定になってくる中、隣の部屋で孤独死している老人を発見し・・・・。この予告編がとにかく怖い!「誰か僕と遊んで」「隣の部屋、何かいる・・・・」「あなた、部屋に入れたのね?」「開かないゴミ箱」「事故死した親子」「誰から死ぬ?」などなど・・・・不快なキーワードのオンパレード!よく出来ているなぁ、という感じである。監督は『リング』(98年)で有名な中田秀夫だが、彼の作品で言えば『仄暗い水の底から』(02年)に近いかもしれない。怖い!というよりも“切なく悲しい”っていう。因みにこの映画は、日活創立100周年記念作品なのだそうだ。テレビでも全6話のスピンオフが放送されているようで、その1~2話は映画と同じ中田秀夫監督、そして3話~6話は、数々のオドロオドロしいB級(勿論イイ意味で!)怪奇テレビドラマ・映画を作っている豊島圭介!この手のホラーものとしては近年稀にみる気合の入りようじゃないだろうか?・・・・っていう、この情報を初めて知った今、既に放送は終了しているみたいなので僕は1度も観たことはないのだけど。一緒に観に行った小4の長男(因みに小1の次男はネットで観せた「予告編」で辞退)に、「この人はキンタロー。か?」と訊いたら「違うし!大島優子だし!」と言っていたけれど、主演は前田敦子。実を言うと僕は、勿論「前田敦子」の顔は知っていても、それまで実際に“動く前田敦子”を見たことがなかったので、とにかく「キンタロー。にそっくりじゃん」としか思えなく・・・・お陰で“恐怖”と“笑い”が同時に襲ってくるものだから最恐だった。正に「恐怖と笑いは紙一重」を追求した『死霊のはらわたⅡ』(87年)に勝るとも劣らない究極のホラー・コメディ!・・・・って、すみません(本編にコメディの要素は全くありません)。

 そしてこの映画の最大の“売り”は(先述したように)何と言っても中田秀夫監督の最新作!ということに尽きるかもしれない。彼の代表作である『リング』(98年)は02年に『ザ・リング』としてハリウッドでもリメイクされ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(03年~)シリーズのゴア・ヴァービンスキーが監督!続くハリウッド版『ザ・リング2』(05年)では遂に監督としてハリウッドデビューも果たし、同じく自身作の海外リメイク『THE JUON』(04年)でハリウッド監督デビューを果たした清水崇と共に「ジャパニーズ・ホラー」の怖さを世界中に知らしめた先駆者である。いや、確かに『呪怨』(99年~)と“貞子”の怖さの振切り度ってのはハンパじゃなかった!海外のホラー映画ってのは大体がデカい音でビビらす!とか、痛そうで直視できない!とかそんなんが多いし、出てくる殺人鬼にしたっていかにも作り物って感じであまり感情移入し辛く“怖さの質”がまたちょっと違うような気がしているのだけど、しかし、サム・ライミの『死霊のはらわた』(81年)と(ハリウッド・リメイクの方ではなくオリジナルである)07年のスペイン映画『REC』だけはそんな中でも「コレは怖い!」と思っていた。が!それらと比べても『リング』と『呪怨』の怖さは圧倒的だろう。内面からくる真の恐怖。40歳になる大の大人(おっさん)からしても日本産ホラーは本当に怖い!と思う。

 初めて『リング』を借りてきた時、ひとり暮らしの部屋で何気に再生した僕はそのあまりの怖さに全然観れなかったのを覚えている。開始10~15分程度でビデオを止めたまま「やばい・・・・全然ダメだ・・・・どうやったら観れる?」と一人で試行錯誤し、右のメイン・ビデオデッキに『リング』を、そして左のダビング用のビデオデッキに『ミスター・ビーン』をセット。それを同時に“再生”するとテレビ画面に映るのはメインデッキの『リング』なのだけど「あ、やば・・・・限界です」となればリモコンの“停止ボタン”を押しさえすればすぐにサブデッキの『ミスター・ビーン』が画面に映るのでもう安心だ!という完璧な作戦のはずだった。終盤のテレビの砂嵐画面から貞子が出てくるクライマックス!「よっしゃあ!ダメだぁ!!!」と停止ボタンを勢いよく押したら、サブデッキの『ミスター・ビーン』が既に終わっていたようでテレビ画面は砂嵐!!!・・・・僕の人生の中でダントツ1位の恐怖体験だった。きっとその時の僕は『リング』での真田広之と同じ“目”をしていたと思う。

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