サイド・エフェクト

 Guns N' Roses の「Appetite For Destruction」は大好きなアルバムの1枚で今でもたまに車内で聴いているのだけど、コレがもう25~6年も前ってのに驚きだ。自分でCD買ったのに・・・・オレ今幾つだ?と。それに収録されている「Think About You」は唯一好きではなく、僕にとっては次の「Sweet Child~」の前座みたいなもんだと我慢しながら聴くか、もしくはスキップで飛ばしていたような曲だった。(随分前だけど)Gunsの来日に行った時のこと。この「Think~」が始まった瞬間、やはりいつも通りガッカリして「早く終われ」と心の中で思っていたのだけど、曲がサビに入った時の衝撃は今でも忘れられない。あの、ギターのキラキラしたリフが大音響で会場を支配する感覚に一気に全身鳥肌立ち何故だか涙が出てしまったほど。勿論、大音響に加え照明の演出もギターのキラキラ感を助長していたのは言うまでもないけれど、間違いなく、その瞬間・その空間でしか味わえないものが確実にあったのだ。確かにCDにもこのギターは入っているのだけどCDなんかじゃ全然伝わらない。「なるほど、この曲はこういうことなのか」とその本質に触れた気がした瞬間だった。映画にも同様のことがあって、それがまた“映画全体”を通してというよりも何かのワンシーンとか何かの瞬間に起こるから面白い。全く音楽と一緒じゃないか。そして、それは心の奥底からいつだってそっと取り出すことが出来るし、時には自身の意識とは関係無しに何気にふと思い出したりして「コレは何かのご褒美なのか?」というくらい自分だけの幸福感に満たされたりもする。これこそ、決して金では買うことができない宝物だ。

 スティーヴン・ソダーバーグの最新作であり「最後の作品」ということで何かと大きな話題を呼んでいた本作。なんでも彼はこれから画家に転身するのだそうだけど「画家になる」と言ってなれるから凄い(っていうか、なれるのか?)。そんな理由で全国ロードショーとなったのは明確で、普通ならばきっと劇場公開すらスルーされDVDでしか観れなかった1本ではないだろうか?だからこそ、こんな映画を劇場で観れる贅沢感ってのはハンパない!この手の映画には劇場でしか味わえない“感覚”というか“空気感”というか・・・・冒頭に書いた“あの感覚”が存在するから。コレは外界と完全に遮断された暗い空間の大画面&大音響で観なければその本質を理解し難いものがあるのだな。例えば、音楽ならばCDとLive、映画ならばDVDと劇場、の違いくらいじゃないか?と思っているのだけど。映画好きの方ならご存知だと思うけど「ドグマ95」の正にアレ。自宅のDVDで観てしまうと「ふ~ん・・・・」で終わってしまうから何とも勿体無い。ハリウッドの商業的な映画作りに反論し、ラース・フォン・トリアーらがデンマークで始めた映画運動「ドグマ95」は、“撮影は全てロケじゃないといけない”とか“カメラは手持ちじゃないといけない“とか“音響効果や音楽を被せてはいけない”とかいった全部で10箇条の「純潔の誓い」を基本に作られるのだけど、ハリウッド映画を見飽きるほど見まくり、それが「映画の全て」だと疑わなかった当時の僕にはそれはそれは斬新で衝撃的で、すっかりハマってしまったものだ。とにかく「ドグマ作品」を色々調べて、国内でリリースされているのものは見漁った時期があったのだけど今も続いているのだろうか?久しぶりに気になって調べてみたら公式サイトすら存在しなかったのでもしかすると残念ながらもう無いのかもしれない。しかし、この『サイド・エフェクト』は正にそんな映画で、オープニングのワンシーンの質感から「おぉ!ドグマ!」と懐かしくもあり一気に映画に引き込まれてしまったのだ。

 『サイド・エフェクト』、そのまま「副作用」がテーマなのだけど、物語は「鬱病」の主人公を軸にその深層心理が描かれていて実に奥深い。鬱病で自殺未遂をしたエミリーの主治医となった精神科医バンクス。この2人が主要キャスト(・・・・ていうかほぼこの2人で物語は構成されるのだけど)で、主治医バンクスにジュード・ロウ。相変わらず禿げ上がった額は全く前進も後退もすることもなくその面積をキープ!凄い。で、エミリーはどっかで見たよなぁ・・・・と思っていたらデヴィッド・フィンチャーの『ドラゴン・タトゥーの女』(11年)で主人公リスベット・サランデルを演じていたルーニー・マーラか。ホント魅力的な人だ。で、話は戻って物語。療養中のある日、鬱病であるエミリーが旦那を殺してしまい、それが主治医バンクスが処方した新薬が原因なのか?が焦点になる。殺人を犯した原因は薬の副作用なのか?という。果たしてエミリーは殺人者なのか?それとも薬の被害者なのか?もしも薬による副作用が原因なのであればそれを処方したバンクスが罪を問われることになり・・・・どう?メッチャ面白そうでしょ?でも、これはまだ物語のほんの“掴み”の部分で、こっからが凄いのだなぁ~・・・・あぁ、書きたい!(笑)でもコレは絶対にサプライズを期待して観た方が良いと思うし、ネタバレはまずいタイプの映画だということくらいは分かっているので触れないけど・・・・あぁ、でもそこに触れなければ言いたいことは何一つ書けないじゃないか!(笑)とにかく本作は、ある意味タブー視されているような微妙な視点からも一歩も逃げず、正面からガツン!と描かれているのが最大のポイントだと思う。

 暴力描写もエロシーンも全然「TVドラマ」レベル以下であるにも関わらず15R指定になっている本作。でも、その理由が“観れば納得”の重さ!深さ!なのだけど、それにも関わらず、あくまでエンターテインメントに徹しているところが流石ソダーバーグだ。『オーシャンズ』シリーズ(01年~07年)で有名なソダーバーグだけど、映画ファンにとっては『セックスと嘘とビデオテープ』(89年)とか『イギリスから来た男』(99年)の~、なはず。00年の『エリン・ブロコビッチ』からは「面白すぎ!」と、むしろ不信感すら抱いていたであろう往年のファンにとっても「最後の1本」というだけあって、彼の全てが詰まった「総集編」というべき大傑作だと納得するはず。あと「鬱病」だとカミングアウトして休養していたキャサリン・ゼタ=ジョーンズが“精神科医”役として復帰しているのも興味深い。

 散々「ソダーバーグ最後の1本・・・・」と書いたけど、実はもう1本あるのだな(笑)。本業はピアニストでありながら優れたエンターテイナーでもあった“リベラーチェ”の半生を描いた伝記映画『恋するリベラーチェ』。実は個人的にはこっちの方が断然楽しみにしていたので待ち遠しくて仕方ない。何しろ、リベラーチェ役にマイケル・ダグラス!で、その相方(恋人)であるスコットをマット・デイモンが演じるというのだから!しかも、ダン・エイクロイドにロブ・ロウも!(本物の、あのロブ・ロウだよ?!)コレはもう映画ファンにとっては絶対に見逃してはいけない1本だろう。例えば、ココ鹿児島で公開がないのであれば東京のミニシアターにまで観に行かなければいけない、という、その価値のある1本。実際には『サイド~』の前の作品らしいのだけど日本公開が前後して今秋に公開予定とのこと。日本のソダーバーグ・ファンにはもう1本“おまけ”がある感じか?こちらも必見。






※ 一部不適切な記述があり、修正しました。(2013/10/4)

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