ダイアナ

 もう20年くらい前になるか?「ケントス」というオールディーズ専門のLiveハウスで毎晩演奏をして、それを生業としていた時期があった。当時、生意気にも「音楽で生きていく!」と志した時期でココ鹿児島でその修業を兼ねて音楽でお給料を貰えるような場所は「ケントス」くらいしかなかったのだ。20歳くらいの一番中途半端な“若造”が昼夜逆転した生活をし、しかも毎晩満員御礼(当時はケントス・ブーム真っ盛りだったので)のステージでリーゼントをして粋がって演奏をしている僕は・・・・まぁ、皆さんが想像する“バカな若造”のイメージを裏切らない、そのままロクでもない男だったと思う。僕の人生の中で“ダークサイド”と呼ぶ数年間だ。勿論それは僕自身の個人的問題で、その時期に出会ったり関わってくれた人は素晴らしく貴重な人たちだと言うことは敢えて補足するまでもないが。・・・・で、何の話だ?・・・・そうそう、「ダイアナ」だ。そんな理由で、僕は「ダイアナ」と聞けばポール・アンカが弟のベビーシッターへの片思いを歌った57年の「ダイアナ」を真っ先に思い出し、しかも暫くその曲が頭が離れなくなってしまう。コレがどうにもイヤなのだ。なんでオレ何気に「ダイアナ」口ずさんでんだ?・・・・ダサいじゃないか。

 本作『ダイアナ』は、勿論ポール・アンカの~ではなく、1997年8月に36歳という若さにして惜しくも交通事故で亡くなってしまった“ウェールズ公妃ダイアナ”の物語で、伝記映画としてもその“金字塔”とも云えるくらい大傑作な1本だ。心臓外科医であるハスナット・カーンとの恋愛が軸に描かれていて、「やっと会える、本当のあなたに」というキャッチの通り、一般的には意外と知られていない・・・・というか、僕らが知らされている史実とは違った側面から描かれているのが興味深い。20歳でチャーチル皇太子と結婚するも夫の不倫や王室との確執から離婚を決意。別居して3年後~というところから物語が始まるって時点でもうこの映画が普通に“ウェールズ公妃”としてのダイアナを描こうとしているのではないということが分かる。この映画で描かれているのは、王室を離れ“ダイアナ”として単独で行動する「世界で一番有名な女性」の、最後の1~2年間くらいだ(多分)。王室とは関係なくあくまで一個人として“世界平和”を掲げ世界中を飛び回る彼女のバイタリティは本当に凄い。とりわけ「対人地雷撲滅運動」や「エイズ啓発活動」は有名だろうけど、それら大きな行動はむしろ物語の“背景”としてサラッと扱われ、彼女の実に些細な“気持ち”や“思い”にフォーカスを絞った点が本作の特徴だろう。専用飛行機から手を振って颯爽と下りてくるダイアナではなく「50億の人たちが私のことを愛していると言うけれど、誰も側には居てくれない!」と泣きわめくダイアナが主人公という。しかもその映画のラストは誰もが知ってるワケで・・・・。最高に切なく哀しい、悲劇版『ローマの休日』といったところか。

 「パパラッチ」という言葉を僕が知ったのは・・・・っていうか、その言葉が一般化したのはこの事故が原因だったように思う。今までダイアナは常識を逸したパパラッチの被害者だと思っていたけれど、元カレを振り向かせたかったのか?ヤキモチを妬かせたかったのか?僕には理解し難いが、そんなごくプライベートで個人的な感情にさえパパラッチを巧く利用していたということに驚いた。改めて、本当にROCKな女性だ。“イギリスの王妃”という立場であるにも関わらず、まるで「セレブの代表」というような派手な交流関係や、周りの意見を聞かない自由奔放な生き方そのものから次第に王室との確執を生み、挙句、公になった夫チャーチル皇太子とカミラとの不倫問題をきっかけにまるで開き直ったかのように派手な男関係を繰り広げる(中には王室職員まで!)様や、「私はプリンセスだからワガママなの」と平然と言い放つ彼女は正にROCKそのものじゃないか。「今夜オレはロックスターだ!」と大声で歌うリアム・ギャラガーと何が違うのだ?事故の直後、仕事でパリに行った時にわざわざタクシーで事故のトンネルを2往復してもらい、そのちょうど上にある献花台のようになった場所で記念撮影をしたほど、僕にとってダイアナはカート・コバーンと並ぶ(亡くなってしまった)ROCKスターだと思っているのだけど、きっと世間一般でもそれに近い存在なのではないだろうか?そう言えば当時は事故現場のちょうど真上にある「The Flame of Liberty」というオブジェはまるで観光スポットのように沢山の人だかりができていて、山のようなお花や贈り物の前でみんな僕と同様に記念写真を撮っていたし。

 で、そのダイアナを演じるナオミ・ワッツがまた凄い!本作のポスターを見て思わず「そうそう、ダイアナってこんな人だったよなぁ、ポール・アンカのこの曲じゃなくて・・・・」と呟いたほど、ビックリするくらいにそっくり!上目遣いに喋る仕草なんか、憑り移っているんじゃないかとゾッとするほどだ。それにしてもナオミ・ワッツって本当に綺麗な人だよなぁ~・・・・前にも何かの映画コラムで書いたけど「女優で誰が好き?」と訊かれれば、ナオミ・ワッツと答えているくらい僕は昔からこの人の大ファンなのだけど、やっぱ本作でも最高に綺麗だ。68年生まれだから今44歳か?前々から「世界一綺麗な首筋の女性」だと思っていたけど、最近の彼女はまたどんどん綺麗さが増してくるから凄い。ピチピチさが失くなってくる分、それに反比例して内面の綺麗さが増してくる感じはホントに凄いと思う。やっぱ、男女共に見せかけの「美」やチャラさ、青臭さが抜けてきて初めてその内面の「美」が見えるのかもしれない。そこで勝負できるなんて凄いよなぁ・・・・間違いなく「世界一綺麗なお姉さん」だろう。

 事故の時、一緒に車に乗っていてやはり死亡してしまったダイアナの恋人(の1人)ドディ・アルファイドがハロッズやリッツ・ホテルのオーナーであるモハメド・アルファイドの息子であったことから本当はMI6に暗殺されたのではないか?(モハメドが世界的な武器商人でもあったので)という、未だ語り継がれる陰謀説。更には、以前にダイアナと交際していた王室職員は実は暗殺されたのだ!という彼女自身の告白テープやら、事故直後のニュースでは「足に傷を負ったが命に別状は無い」と報道されていたり、実際にそこに居合わせたパパラッチは彼女を救助せずに写真を撮り続けたことで世界中から非難されたけど、その時に「Leave me alone!」とか「oh my god!」を連発していたから大丈夫だと思った・・・・と告白していて、更にそれを9人もの人が証言しているほどで。本作でもドディやその取巻きの連中がやたらと“胡散臭く”描かれているところやら、肝心の“事故”をスルーしているところ、更にはそのシーンでのラジオ放送で「生死は確認されていませんが、ダイアナが事故にあい・・・・死亡が確認されたとのこと」といった曖昧で意味不明な表現をしているなど“死因については疑問が残りますが~”的な描き方がまた奥深い。出来ればこの辺を追求した映画化を観てみたい気がするが、やっぱりそれは未だタブーなのだろうか?「善悪を超えたところに庭園がある。今度はそこで会いましょう」という、ダイアナから元カレに残したメッセージが心に残る。

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