キャリー

 「モダンホラーの帝王スティーブン・キング原作の映画化は、その殆どが“駄作”である」っていうのは、もはや「それくらい常識でしょ?」な感じだけど、スタンリー・キューブリックの『シャイニング』(80年)とロブ・ライナーの『スタンド・バイ・ミー』(86年)、そしてブライアン・デ・パルマの『キャリー』(76年)に関しては映画史にその名を刻む、くらいの大傑作だと思う。まぁ、この3本に共通して「映像作家としての監督の力量」のお陰だということは疑いようの無い勝因だとして・・・・中でも『キャリー』は、とにかく自身の映画化作にケチを付けるスティーブン・キングが唯一大絶賛したということもあり圧倒的な傑作だろう。

 その『キャリー』のリメイク。本当に「まさか?!」のリメイクだ。だってあの映画は、強烈に“信仰心”や“宗教”、それに“神”や“悪魔”っていうのをテーマにしつつ、そこに“母娘”の屈折した関係・・・・っていうか、イカれた母親と超能力の使える娘が描かれ・・・・で、巧いことそっちに目線を外らさせといて、実は“イジメられっ子”が“イジメっ子”に復讐をする!という実に危さ満載の物語なのだから。ラスト、溜めに溜めた主人公キャリーがブチ切れて“イジメっ子”らを皆殺しにするシーンには思わず「よっしゃ!やれ、やれ~!!!」と、メッチャ爽快感を感じてしまう始末で・・・・『ネバー・エンディング・ストーリー』のラストと同様、「それはダメでしょ?」っていう結構メチャクチャな映画なのだな(笑)。ま、だからこそ、信仰心の違うココ日本とかでもあれだけ大ヒットしたのだろうけど。加えて、この“酷い”話を当時の「時代性」を反映したメルヘンチックな演出&映像で全体のトーンをまろやかに仕上げたブライアン・デ・パルマの才能があってこその“傑作”だったはず。後の映画に脈々と続く「長回し」や「スプリット・スクリーン(分割映像)」などが駆使され、彼の作家性が遺憾なく発揮された、正に「デ・パルマ映画の最高峰」!・・・・なので、そもそもコレはリメイクなんかするもんじゃないと思うのだが。

 だがしかし、本作はオリジナルの魅力を損なうこと無く、見事なまでに現代版へのアップデートに成功しているのだなぁ。特にこの年代の“傑作”を現代で再び“傑作”として蘇らせるという、ここまでの成功例ってのはホントに稀じゃないだろうか。いや、凄い。まずは何と言ってもキャリー役のクロエ・グレース・モレッツが・・・・の前に!母親を演じるジュリアン・ムーア!彼女が凄い!!!そうそう、タイトルからしてどうしても“キャリー”ばかりに注目されがちだけど、この映画は“母親”が最大の要なのだ(76年のオリジナルでも母親を演じたパイパー・ローリーはアカデミー助演女優賞にノミネートされたし)。ハリウッドのトップ女優らしい“優雅”や“綺麗”なんてものを完全に封印し、イカれた母親を演じきる、この存在感!しかも、ただイカれてるんじゃなくてその底辺に“悲哀”までもしっかり感じさせるなんて・・・・やっぱ、ジュリアン・ムーアすげぇな、って感じだ。そして勿論、キャリー役のクロエ・グレース・モレッツも同様。オリジナルのシシー・スペイセクのイメージがあまりにも強いが故にどうしても彼女と比べられて不利だろうな・・・・なんていうこちらの勝手な不安感がバカらしくなるくらい、シシーを軽く超越する“キャリー”度!こんな事を書くとまたクレームがきそうだけど、「イジメられる方にも否がある」的な、なんて言うか、いかにもイジメたくなるような態度や行動・・・・ウジウジしやがって!ってのがホント巧い!なるほど、だからこそ例のプロムシーンが一段と引き立つという仕掛けか。キレた時の爆発力がまた凄い!背筋がゾクゾクするほどの爽快感と恐怖感・・・・いつでも『XーMEN』の仲間入りできそうな(笑)。

 頭から真っ赤に染まった“血まみれキャリー”の画がインパクトあり過ぎで「ホラー映画」にジャンル分けされがちだけど、ホラーの要素と言えばラストの母娘のあのシーンくらいで、実は全然ホラーではなかったオリジナルに対し(じゃ、なんだ?学園サスペンス?家族ミステリー?)、リメイク版の本作は完全に「ホラー映画」として作られている点が決定的に違うところだろう。あと、キャリーが躊躇せずに超能力を発揮するところ(笑)。オリジナルよりしっくりくるラストと同様、迷いの無くなったキャリーのお陰で映画自体はより解り易くなった分、物語の「深さ」みたいなものは無くなってしまった気がするが・・・・ま、とにかく“面白さ”も増しているので全然OKでしょ。それ以外は大体オリジナルと同じなのだけど、イジメ方というか、“イジメの質”みたいなのが現代風にアレンジされてたり(ネットでの公開映像とか)、先生が注意するも、それは体罰か?虐待か?の問題にすり替わってきたり、終いには注意されたイジメっ子の親が学校に文句を言いに来る、いわゆるモンスターペアレンツというか、バカ親というか・・・・が出てきたり。そういう現代的な学校問題ってのも真正面から取り上げているところが何とも『キャリー』らしい。こんなんまともに向き合ってたら色んな角度から賛否両論が巻き起こりそうな問題作。その点でも大成功だと思う。調子に乗って99年の『キャリー2』までリメイクしてしまわないか心配なくらい・・・・。

 それにしても何故にこう、クロエ・グレース・モレッツって女性としての魅力を感じないのだろう?全く魅力を感じない。可愛いかどうか?と言えば、そりゃあ勿論トビっきり可愛いのだけど・・・・。『キック・アス』の“ヒットガール”のイメージがトラウマになってて“子供”としてしか見れないのかなぁ、なんて自己分析しつつも、って言うかそもそも登場人物全員、誰にも魅力を感じないし・・・・で、唯一グッときたのが“先生”ってところでふと気が付いた。舞台が高校だから誰にも魅力を感じないのだな・・・・な~んだ、オレの歳の問題か。自分の娘でもおかしくない年齢の女性より、そりゃあ、先生の方に行くわな・・・・。

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