悪の法則

 いやぁ~、不愉快極まりない・・・・なんとも胸クソ悪くなる映画だった。勿論、この場合“良い意味で”である事は言うまでもないけれど。なにしろ、原作が07年のアカデミー賞で主要部門を総なめにしたコーエン兄弟の傑作『ノーカントリー』のコーマック・マッカーシーなのだから。「不愉快だ」とか「胸クソ悪い」なんてのは正に彼の意図したところで褒め言葉でしかないだろう。

 テーマはずばり「欲」と「死」。通称“カウンセラー”と呼ばれる敏腕弁護士が、悪の実業家“ライナー”と手を組み、裏社会のブローカー“ウェストリー”に相談しながら新ビジネスを企てる、っていう、ザッと言えばそんな物語。どこにでもあるようなありふれた話なのだけど、本作はとにかく暗くて救いがない。金には全然困っていない富裕層の弁護士が、更なる欲に目が眩んで・・・・っていうか、“何気に”悪に染まっていく過程が客観的には面白いのだけど、観ているうちに段々“客観的”ではなくなってきて物凄く暗~い気持ちになってしまう。気が付けばもう後に退けなくなっているっていう、誰にでも起こりうるかもしれない悲劇。周りは優秀な同業者(弁護士)や金持ちばかりなのでいざとなれば誰かが助けてくれるだろう、と思いつつも本当に“いざ”となった時に誰も助けてくれないリアル感・・・・こっちはマジで生死を賭けたピンチなのに、散々偉そうな説教ごとだけ言われて「じゃ、そろそろ昼寝する」とセレブ的に終わられる電話とか、「その道を選んだんだろ?分岐点はずっと前にあったはずだ。もう修正はできない」と、とにかくもう後戻りは出来ないのだという事をジワジワと実感する絶望感はハンパない。そう言えば“ウェズリー”に「止めとけ、コレは警告だ」と一度だけ止められたのだな、あれが唯一のチャンスだったのだと手遅れになった後から気付く。そう、本当に大事なことはいつだって後から気が付くものなのだ。

 で、何なのだろう?この超豪華なキャスト陣は!ドツボにはまっていく主役“カウンセラー”に、本作の監督リドリー・スコットの前作『プロメテウス』(12年)で物語の要となるアンドロイドを演じたマイケル・ファスベンダー。で、彼の相棒役“ウェストリー”にブラッド・ピット!更には、彼を悪の道に誘う(っていうか、実際には誰も“カウンセラー”をワナにハメているワケではなく、彼自身が“何気”に悪の道に入っていくのだけど・・・・ってところがこの物語のキモ)実業家“ライナー”に、先述したコーマック・マッカーシー原作の『ノーカントリー』で、極悪非道の殺し屋を演じたハビエル・バルデム!で、彼の実嫁であるペネロペ・クルスが“カウンセラー”の彼女“ローラ”を。更には、正に“極悪”といえるマルキナ役に(当初予定されていたアンジェリーナ・ジョリーに代わり)キャメロン・ディアス!彼女の極悪女ぶりが凄い!劇中に「彼女は何を考えているか分からない」「心の読めないヤツには気をつけろ」とある通り、本当に何考えてるか全く分からない演技力!永年ハリウッドのトップ女優に君臨するだけあって流石だ。他にも、ヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩』(87年)の天使役で一躍有名になった(あと、04年の『ヒトラー ~最期の12日間〜』でのヒトラー役の)ブルーノ・ガンツや12年の『ゼロ・ダーク・サーティ』や『タイタンの逆襲』のエドガー・ラミレスも!極めつけに、超チョイ役でジョン・レグイザモやゴラン・ヴィシュニック(『ER 救急救命室』のルカ!)らも出ていたり・・・・。あと、ジョルジオ・アルマーニが“セレブの衣装”を担当したってところも興味を持って観たのだけど、“ライナー”役のハビエル・バルデムだけがどう見ても“金持ちのゲイ”にしか見えなく、何故だろうなぁ・・・・と思って調べたら、彼だけが“ヴェルサーチ”だったというのが妙に納得・・・・(笑)。

 例えば、58年に発刊された松本清張の『点と線』や59年の『ゼロの焦点』なんかでは40代の刑事が「老刑事」と書かれていたり、同じく40代の女性は「老女」とされていたりして読んでいて物凄く違和感を感じたのだけど、やっぱそれは“時代”なのだろうなぁ・・・・。スタローンやブルース・ウィリスを例に挙げるまでもなく、今や時代は正に「おっさんパワー!」の現代。こんなにダークでスタイリッシュな映画を作っているのが原作コーマック・マッカーシー80歳!&監督は『エイリアン』(79年)『ブレードランナー』(82年)それに『グラディエーター』(00年)等など・・・・代表作的傑作を挙げたらキリがないリドリー・スコット76歳!・・・・だってことが何よりも凄い。先日観たポール・マッカートニー、「71歳なのに凄ぇ!!!」って思ったけれど、彼らに比べればまだ若造じゃないか・・・・。年齢で「◯◯歳なのに~」って思うのは何だか失礼な気すらしてきた。オレがどんだけダメなんだ、とちょっとヘコんでみたり・・・・。

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