ゼロ・グラビティ

 宇宙空間を舞台に、事故により宇宙に取り残された絶体絶命の人間を描く。しかも登場人物は2人だけ。っていう“あり得ない”企画をユニバーサルが試行錯誤しながら永年温めてきたにも関わらず「やっぱ、コレ無理っしょ?」と売りに出し、それをワーナーが買い取り、アンジェリーナ・ジョリー主演にロバート・ダウニー・Jrが共演ってことで進められていた『ゼロ・グラビティ』。その後キャストは二転三転し、結局サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーに落ち着くわけだが今となってはこの2人こそ本作に相応しい最高のキャスティングだったのだと、誰もが思っているはずだろう。

 登場人物たった2人・・・・と書いたけれど、実際にはその8割はサンドラ・ブロック1人!という構成。ま、いわば“一人芝居”ってなワケで、更にはそれが宇宙空間のみ!観る前に想像していた「地球上での回想シーン」すら一切なく、ただひたすらに宇宙空間での出来事のみが描かれる映画なんて・・・・。「いや、やっぱコレ無理だって!」という、企画に消極的なスタジオ側に反し、膨大に膨れ上がる制作費。製作が難航し公開予定が1年も遅れるという異例の発表がされた上、本作の企画の一番の“売り”であった「究極の3D映像」(なにせ宇宙が舞台なのだから)が「デジタル撮影の3D変換」という、ありきたりで且つ残念な方向転換に移った時、きっと誰もが「こりゃ、ボツだな」と思ったはずだろう。まさかこうやって無事(本当)に公開されるとは・・・・もっと言えば、例え公開されたとしても、もう映画ファンの心はすっかり離れて行ってたはず・・・・だと思っていたのだけど。公開第一週目の興行成績として“フォール・シーズン”(ハリウッドでは1年を4半期に分けて秋の公開時期をこう呼ぶのだけど、何故に“オータム・シーズン”ではないのだろう?)でまさか?!の映画史上1位!加えて、サンドラ・ブロック並びにジョージ・クルーニーの出演作としても歴代1位!という成績となったのだから凄い!デジタル撮影で制作費を抑えた分、興業収益の利幅は上がっただろうけど、もしも予定通りコレが“3D撮影”で作られた映画なのであれば、それは間違いなく“映画史”に残る1本になったであろうから“映画ファン”としては残念な気がしてならない。来年のアカデミー賞、百歩譲って「作品賞」は逃したにしても、「撮影賞」は確実として、サンドラ・ブロックの「主演女優賞」とアルフォンソ・キュアロンの「監督賞」もかたいのではないか?と思うのだけど。

 とにかく、この“映像”が凄い!僕みたいな凡人には「多分、こうやって・・・・」みたいな想像すら出来ない「一体どうやって撮影しているのだろう?」感。まずコレが本作の一番の“売り”だ。「ホントに宇宙で撮影しているのかな?」ってなぐらい、間違いなく世界中の誰もが“初めて観る”映像。上映時間はわずか90分と最近の映画では凄く短編なのだけど、例えば巨大遊園地のアトラクションで体験するような映像が90分も続くと思えば? 正にそんな1本だ。一緒に観に行った小学生の子供らは映画が終わってからも暫く「まだ宇宙にいるみたいにフラフラしてる・・・・」と言っていたほど(笑)。ロシアが自国のスパイ衛星を破壊した残骸が他の衛星にぶつかって連鎖的に破壊をおこし、それによって起こる事故、いわゆる宇宙空間なのに人的事故という“原因”も感慨深い。

 宇宙空間にたった独り取り残された“地球上にいる頃から既に生きる望みを無くしていた女性”。一度は絶望を実感し諦めるも「やるだけやってみよう」と再起する人間の底力が物凄く感動的だ。全ての可能性に挑んだ後「こっからはどうなろうと誰のせいでもない」という彼女の独り言に一気に涙する。なんだろう?「もう彼女が助かろうが死のうが僕も異論はありません、もしもの時は一緒に心中します」的な覚悟。サンドラ・ブロックの魅力を改めて思い知らされる1本でもあった。あと、ジョージ・クルーニーも良かった!宇宙服姿がまた最高に似合うんだなぁ~・・・・もしも『トイ・ストーリー』が実写化されたら“バズ・ライトイヤー”は間違いなく彼だろう。

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