六月燈の三姉妹

 夏の風物詩とも云える夏祭り「六月灯」。芸術的な日本画から子供たちの書いた人気アニメのキャラクターの絵、それに地元商店の店名等など・・・・色とりどり沢山の灯籠や提灯が下がる幻想的な雰囲気はもうそれだけで心がウキウキと、そして不思議と切なくも、なる。照国神社のような大きな神社から近所の小さな神社まで、県内各地様々な神社で行われている「六月灯」。僕は正直この「六月灯」が鹿児島だけのお祭りだということを、本作『六月燈の三姉妹』の企画&父親役の西田聖志郎さんから聞いて初めて知った。・・・・いや、そうだったのか、お恥ずかしい・・・・。

 物語。鹿児島の昔ながらの商店街「真砂商店街」にある和菓子屋「とら屋」では、地元の夏祭り「六月灯」で新作和菓子を出品する為、その準備に忙しい。そこに、東京に嫁いだも離婚調停中の次女“奈美江”が帰ってきて両親プラス三姉妹が一つ屋根の下・・・・華やかで賑やかな“実家”だけど、実は一緒に住んでる両親は離婚中で、長女もバツイチで出戻り中。そして、その2人と血の繋がらない三女は妻子ある男と不倫中・・・・それに加え、東京から“奈美江”の旦那が「絶対に別れたくない!」と押し掛けてきてハチャメチャな日々に!更にその裏では“奈美江”に惚れる男も東京から鹿児島に・・・・と、一見ややこしそうだけど不思議なくらいにスカッと解りやすい展開が、まずこの映画の魅力だと思う。元々は舞台で上演されていた作品の映画化というだけあって、実は複雑な物語がこれだけ無駄なく簡潔に且つ解りやすく描かれてるってのが流石だ。しかも、“離婚”や“不倫”に加え“衰退するシャッター商店街”など、冷静な目で見ると暗いテーマばかりなのに、決して暗くなることはなく全てを“笑顔”で見せるところがまた凄いのだなぁ・・・・流石は“笑い”をテーマに掲げる「パディハウス」の西田聖志郎氏の企画!リズミカルでテンポのいい“笑い”と“ユーモア”が秀逸。

 監督は『半落ち』(04年)や『ツレがうつになりまして』(11年)などの(更には『東京難民』の公開も控える)佐々部清。全編を通してこんなにも笑いばかりなのに、何故だか切なくて哀しくて・・・・始終涙目の泣き笑いで見せるのは佐々部監督の仕業だろう。そして、キャスト。とにかく“三姉妹”が美人すぎ!(笑)主人公の“奈美江”扮する“吹石一恵”もさる事ながら、個人的には長女“静江”役の“吉田羊”がタイプなのだけど、末っ子の“栄”役である“徳永えり”!06年の『フラガール』の時もメチャクチャ魅力的な人だなぁ~と思ったけど本作の彼女がまた最高なのだ。彼女の「内面の表現力」は本当に凄い!そして鹿児島弁が上手い!怒った時の「なに~!」の一言はとても大阪出身とは思えないほど(笑)他の出演作も色々と観てみたいなぁ、と思わせる女優さんだ。あと、奈美江の旦那“平川さん”の“津田寛治”も凄い良い味出してるし、商店街の会長を演じる“井上順”の存在感もやっぱり凄い!そして何と言っても本作での泣きのポイントを担う、先述した西田聖志郎氏の“とうちゃん”がまたいいんだなぁ~・・・・。

 古くは『男はつらいよ』シリーズとか、『釣りバカ日誌9』(97年)、それに『ホタル』(01年)や『北辰斜めにさすところ』(07年)『海の金魚』(10年)等など、鹿児島を舞台にした映画は沢山あるけれど、中でも『チェスト!』(08年)と『奇跡』(11年)が僕的には最高傑作だと思っていて・・・・それに加え本作『六月燈の三姉妹』!この三本は「鹿児島傑作三部作」と名付けたい(笑)その理由の1つとして“鹿児島弁”。テレビや映画で観る“鹿児島弁”っていっつもなんか違和感があって「それはちょっと違うだろ?」と思ってしまわないだろうか?例えば、ハリウッド映画で日本人が着物にちょんまげで出てきたり、鹿児島の人が「おいどんは~◯◯でごわす!」と言うみたいに。でも、本作ではその違和感がないのがまた凄い。途中「そんなイントネイションじゃないだろ~?」と思う場面もあったが、実際に声に出して言ってみると「あ、言ってるな」と思うくらいの本格的な“かごっま弁”(笑)なるほど、NHK大河ドラマ『篤姫』や『翔ぶが如く』などの「かっごま弁方言指導者」である西田聖志郎氏の作品だからか・・・・。

 見慣れた町並みが舞台でこんなに素敵な物語が展開されるってのは、もう鹿児島県民の宝物だと思う。加えて、知ってる人がたくさん出てくるのもその面白さが倍増するし(個人的にはいつもツナギを着た電気屋さん扮するCM王“佐々木貞幸”がツボだった!)5月からはいよいよ全国公開が決まったそうだ。全国に先駆けて地元・鹿児島では天文館の「テンパラ」で2月いっぱいまで上映中なので、絶対に観ておくべき。

一番上にもどる      ホームヘもどる