リディック:ギャラクシー・バトル

 00年の『ピッチブラック』という映画を覚えている(知っている)だろうか?数多の惑星から指名手配を受けている銀河系最凶の極悪知能犯“リディック”を護送中の宇宙船が不慮の事故により未知の惑星に不時着。彼を護送中だった賞金稼ぎの“ジョンズ”とその他乗組員たちは、事故に紛れ脱走した“リディック”を恐れながらも、生き延びるための水や食料、そして惑星からの脱出方法を探しているうち人の気配が全くない人口基地を発見する。宇宙船も残したまま人々はどこに消えたのか?・・・・と、そこへ姿を隠していた“リディック”が現れ「お前たちが本当に恐れるのはオレじゃない」と警告する。その惑星には未知なる肉食エイリアンが存在していたのだ。しかしそのエイリアンは暗闇でしか生息できないことが判明。じゃ、常に明るい場所に居れば安全じゃん!しかもこの惑星には太陽が3つもあるから夜にならないし、ってことでひとまず安心・・・・したのも束の間!その夜、まさかの22年ぶりの皆既日食が!(笑)どんだけタイミングが悪いのだ。辺りが全て暗闇に包まれた時、地下に潜んでいたエイリアンたちが一斉に地上へと繰り出してきて・・・・という、もうコレだけで「うわぁ~!おもしろそ!」という物語に加え、ポイントは何と言っても主人公の“リディック”!凶暴な知能犯なのだけど、弱い者にはめっぽう優しいダーク・ヒーローという、シリーズ化決定的な強烈キャラなのだ。更には、投獄中に闇医者から両目を暗視用に手術してもらい真っ暗闇でも見えるという能力を持つ(と同時に逆に明るいところでは常にゴーグルを着けていないと見えない)っていう設定も面白い。79年の『エイリアン』と並ぶ・・・・とまでは言い過ぎだとしても大傑作『トレマーズ』(89年)には匹敵するB級SFホラーの金字塔だと思う。

 もう14年も前になる『ピッチブラック』で主演の“リディック”を演じたのは今をときめくヴィン・ディーゼル。巨匠スピルバーグに見出され『プライベート・ライアン』(98年)で既にハリウッドデビューは果たしていたとはいえ、その頃はまだほぼ無名だった彼の初主演作だ。その後『ワイルド・スピード』(01年)『トリプルX』(02年)『ブルドッグ』(03年)と大ヒット作を連発し、一躍ハリウッドのトップアクションスターへと上り詰める流れで、先述したように正に「シリーズ化決定!」な強烈キャラ“リディック”の続編が製作されるのは必然的とも言え、これにかけられる期待は相当なものだったのだろう。あの『スター・ウォーズ』シリーズや『ロード・オブ・リング』シリーズさえも凌ぐ170億!という巨額の製作費を投じて作られた続編『リディック』(04年)・・・・きっと、史上最高の大赤字を出した歴史に残る大失敗続編なんじゃないだろうか。オープニングから「コレってホントにあの『ピッチブラック』の続編だっけ?」と思わせる、まるで『スター・ウォーズ』か『スター・トレック』のようなシーンに、どんだけ出てくんだ?ってくらいの登場人物の多さ!そして、そのスケールのデカさ!終いには、タンディ・ニュートンや大御所ジュディ・デンチまで出てくるし!・・・・限られた空間を舞台に未知のエイリアンとの死闘が10人にも満たない少人数で繰り広げられるってのがオリジナルの魅力だったのに、どんだけ物語を複雑にするのだ?・・・・リディックの“暗闇でも見れる目”は本作では何の役にも立ってないし、っていうか、そもそもエイリアンすら出てこない・・・・。いや、映画自体は凄く面白いと思うのだ。宇宙版『マッドマックス』ってな感じで。ただ、みんなはあの『ピッチブラック』の続編だと思って観るワケで、それが凄い足枷になったのだと思う。むしろアレの続編だと謳わなければ先入観無しに観れてもっと純粋に楽しめたと思うのだけど・・・・。

 そして、その更に続編となるのが本作『リディック:ギャラクシー・バトル』だ。前作から実に10年ぶりの続編。前作で「殺した者がその後を継ぐ」ってことで王に君臨したリディックが、反乱のワナにハマり凶暴な肉食エイリアンの存在する未知の惑星に置き去りにされてしまう。寝ることすらままならない死の惑星に二組の“賞金稼ぎ”が彼を追って到着。リディックと二組の賞金稼ぎと肉食エイリアンとが四つ巴の攻防戦に・・・・というシリーズの原点回帰的な内容で、登場人物はみんなリディックを恐れているけど、それよりも怖い敵(エイリアン)が出てきて「毒には毒をもって制す」ということで“リディック”に助けを求めることに・・・・っていうプロットや、限られた空間内で描かれる設定に加え、登場人物も総勢10人程度ってのも1作目の世界観そのものだ。2作目の『リディック』は無かったことにして・・・・という感も否めないが、1作目から直結してる物語がまた面白い。もしも、前2作を観ていない方は出来れば1作目だけでもチェックしてから観ると全然面白さが倍増すると思う。1作目では「迫る闇」、そして2作目では「700度の灼熱の日の出」からどう逃げるか?!だったのに対し、3作目となる本作では「雨」。とにかくメチャクチャ面白い超娯楽大作だった!(なのだけど15歳以下は観れないというR15指定!子供と一緒に行きたかったのだけど・・・・何故?)

 大スター、ヴィン・ディーゼルの映画にしては明らかに製作費が掛かっていないであろうB級映画だが、その興行成績は2位に倍以上の差をつけて圧倒的なのだそう。っていうか、そもそも『リディック』の大失敗からちょうど10年後に「まさか!?」のその続編が製作されるなんて・・・。自身の初主演作でもある『ピッチブラック』の“リディック”というキャラに惹かれ、続編を誰よりも望み、自らプロデューサーまで務めて実現させた「会心の一撃」があれだけコケてしまったヴィン・ディーゼル。彼はその後『ワイルド・スピード』シリーズで更に箔と権力をつけ、準備万端でその尻拭いに挑んだのではないだろうか?今やかなりの予算を使えるであろう地位と名誉を確立したにも関わらず、敢えて製作費も宣伝費も極力抑えてその利幅を考慮した1本に思えて仕方がない。監督が「1」「2」と同様デヴィッド・トゥーヒーだということも、その確信に値すると思うのだが。「あの時の責任を果たす」という男たちの裏ドラマを(勝手に)感じ、物凄く感動してしまう。ヴィン・ディーゼル、カッコよすぎだろ?

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