思い出のマーニー

 うちの長男は幼稚園くらいまで「アミナミナーとノムノムノー」という架空の物語を毎日聞かせてくれた。寝室のクローゼットが夜中になると森の中に繋がっていて、そこから大冒険が始まるという・・・・アンパンマンに出てくるような不思議なキャラクターが次々と登場し「よく思いつくなぁ・・・・」と言うか「子どもの発想って凄いなぁ」と感心して聞いていたものだ。毎朝、幼稚園に着くまでの30分程度の車内では「夕べも冒険に行ったの?」という僕の質問から始まる長男の話を聞くのが僕自身の楽しみでもあった。不思議なのが、長男が小学校に上がってからその話をパタッとしなくなり、小5の今ではそんな話をしたことすら覚えていないという・・・・。で、今年4歳になる娘が1年ほど前からまた“架空の物語”を話すようになった(次男はそんなことはなかったのだけど)。タイトルが「マーニーとムーニー」・・・・なんなのだ?なんか居るのか、うち?(笑)スタジオジブリ最新作のタイトルが『思い出のマーニー』だと知った時、思わず娘に「何か知ってるか?」と訊いてみた。知っているワケがない。

 “自分は人と違う”と周りに対して心を閉ざし孤立してしまう少女アンナ。彼女は喘息の療養のため空気の綺麗な海辺の田舎町で暫く暮らすことになるのだけど、そこでもやっぱり(意図せず)トラブルを起こしてしまう。そんなある日、引潮の時にしか行くことの出来ない不思議な洋館を見つけ行ってみると・・・・明らかに永年誰も住んでいないような空屋敷なのに、その二階の角部屋に電気が付いているのを見つけるのだ!不可解になって通っているうちに、そこに住んでいるという少女マーニーと出会い、不思議に思いながらも交流を深めていく。彼女の不思議な魅力に次第に心を開くアンナ・・・・が!っていうか、そもそもマーニーは一体何者なのか?更には、やがてその屋敷に新しく引っ越してきたサヤカから「あなた、マーニーね?」と声をかけられ・・・・。アンナの過去が次第に明らかになっていくのと平行して謎が謎を呼ぶミステリアスな物語が凄い!

 オリジナルストーリーではなく原作(イギリス人作家ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学書「When Marnie Was There」)があるので、既に物語を知っている人もいるだろうし、その気になればネット上でいくらでも調べられるのだろうけど、出来れば何も情報なしで観た方が絶対に楽しめると思う(間違ってもwikipediaなどで“あらすじ”を先に読んではいけない!)。「多分こういうことか?」とか「あぁ、この人がきっとそうなのだろう」といったこちら側の予測をことごとく裏切る展開に、ラストの大どんでん返し!いやホント、このラストはかなり衝撃的だった。全てを知った上で改めて考えると、この物語の奥深さと言ったら・・・・本作の核心を語ろうとすればどうしてもネタばらしに繋がってしまうので結局何一つ書けなくなってしまうのだけど、きっと2度3度と観なおす度に新たな発見と感動が見つかるのだと思う。

 スタジオジブリ最新作となる本作は、うちの子が「ジブリ映画で一番面白かった」という(僕は観たことないのだけど)『借りぐらしのアリエッティ』(10年)の米林宏昌、2作目の監督作。僕は特に“ジブリ・ファン”ではないのだけど「やっぱジブリは凄い!」と実感した一本であった。冒頭から惹き込まれる、と言うか不思議なくらいに安心できる“画”はジブリならではだろう。で、子供の描き方がまたずば抜けて凄いのだなぁ・・・・。血は繋がっていなくとも限りない愛情を持って育ててくれる養親にすら壁を作ってしまうほど“自分の殻”に閉じこもっている主人公なのだけど、そんな彼女に対しても不思議なくらいに共感させられるってのは正に監督の成せる技だろう。大人は良かれと思って同年代の友達を紹介してくるのだけど、彼女はそれがイヤなのだ。友達も仲間に入れようと何かしら理由を付けて絡んでくるのだけど、彼女はそれがイヤなのだ。例えケンカをしても相手が一歩下がってくれるのだけど、彼女はそれがイヤなのだ。その気持ち、分かるなぁ〜・・・・(笑)。あと、プリシラ・アーンのエンディング曲「Fine On The Outside」も良かった!毎年夏場にヘビロテする(「夏の昼間に飲むビールに最適な音楽」と言えば、やっぱ何と言ってもジャック・ジョンソンかプリシラ・アーンだろう)個人的にも大好きな彼女の楽曲が本作にバッチリ合っていた。この夏リリースされるベストアルバムも楽しみだ。ディズニーの凄さを改めて世間に知らしめたのが『アナ雪』だとすれば、ジブリのそれが、本作だろう。

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