イントゥ・ザ・ストーム

 僕は台風の日が大好きだった。親が離婚した直後だったから多分小学2〜3年生の頃だったと思う。台風で休校になり独りで家に居ると、同じく台風の影響で仕事が早上がりになった親父が「退屈だろう」と木で作る恐竜の模型を買ってきて二人で作ったのだった。更にその夜は停電になり、ろうそくの火を灯して親父と二人でわざと怖い話をして過ごしたのを覚えている。怖くて楽しい夜だった。10年前に死んだ親父との、一番古い思い出だ。それが理由なのか?先述したように、僕は台風の日が大好きになった。外が暴風雨で騒がしいほど、気持ちよくぐっすり眠れたりして・・・・安心できる家の中の、温かい布団の中で聞く“外の不安な音”は何故だかとても落ち着いたのだ。今では台風や豪雨の時、家や家族を守るのは自分の役目なのだから安心できるワケがないし、それ以前に、20年前の86水害を経験したのを境に「家の中でも安心できない」という決定的な違いを植え付けられたように思う。



 超大型竜巻の怖さを最新の映像技術で描いた本作『イン・トゥ・ザ・ストーム』は、竜巻にギリギリまで近づいて(どころか、本作では竜巻の中に入ってしまう!)撮影&研究する“ストーム・チェイサー”の物語だ。・・・・厳密に言えば“ストーム・チェイサー”に同行することになる“親子の物語”なのだけど、そこはこの際どうでもいい。最初の約20分くらいは無駄な物語が多すぎて「うわぁ〜、久しぶりにこんなつまらない映画を劇場で観てしまった・・・・」と後悔したほどなのだけど(まるで『13金』シリーズでジェイソンが出てくるまでの時間つぶしのような!笑)が!竜巻がきてからは始終ポカンとするしかない圧倒的映像の連続!・・・・でもコレって前にもあったよね?と考えたら、そうだ、ヤン・デ・ポン監督の『ツイスター』(96年)。ま、全く同じではあるのだけど、あれから20年後の最新技術で描いた映像は圧巻だ。特に、対竜巻用に作られた、まるで戦車のような超重量装甲車「タイタス」が凄い!もうコレを見るためだけでもお金を払う価値があるくらい(笑)。「コレさえあればゾンビの世界でも全然怖くないだろうなぁ・・・・」と思いながら観ていると、それすら玩具にしてしまう“超大型竜巻”!このスケールのバカでかさが本作の最大の見所だ。「人類史上最大の竜巻」の映像がとにかく凄い。まずは「予告編」をYouTubeなんかで見て欲しい。正に“百聞は一見にしかず”!で、「おぉ!すげえ!」と思ったら迷わず劇場で体感するように!この手の映画は自宅のDVDでは全く別モノになってしまうのだから。

 全編を通して登場人物のハンディカメラで撮られている“ドキュメンタリー・タッチ”の作りになっているのも本作のポイントだ。この手のパニック映画では『REC』(07年)や『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』(08年)それに『クローバー・フィールド』(08年)辺りがその金字塔なのだろうけど、間違いなくその中に入る1本!リアリティを出すため勿論キャストは無名の俳優ばかり!(ココにブラピが出てくれば途端に13年の『ワールド・ウォーZ』みたいなヒーロー映画になってしまうし)スターのいない映画をここまで成功させるには“監督”の力量でしかないだろうと調べてみると、なんとスティーヴン・クエイル!・・・・って誰だ?と、更に調べてみると『ファイナル・デスティネーション』シリーズ(00年〜)の第5弾『ファイナル・デッドブリッジ』(11年)の監督であった!・・・・う〜ん、やっぱり微妙(笑)。

 東北や広島の災害をココで書いてしまうのは相当に野暮だろうと思ったので敢えて触れなかったけれど、それにしてもどうしたってあの“本物の映像”を思い出してしまい、今の僕らはもう無条件に“パニック映画を楽しむ”ということが難しくなってしまったのは否めない。劇中でも、実際に起こった数々の大災害を例に挙げ「今は世界規模で異常気象が頻繁に起こっている」と言っていたが、実際にココ最近、日本のみならず世界中で自然大災害が多発していて“100年に1度”クラスが10年に一度くらいのペースで起こっているのだという。数々のニュースでそれを分かっているのに、やっぱり僕は自分の地域のハザードマップすら見たことないし・・・・自分の家族を守るということをもっとしっかり考えなければ、と思った。人は自然の前ではあまりにも無力だということを思い知らされる1本。怖い。

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