ジュピター

 「兄さん、母の形見に“地球”を僕に下さいよ」・・・・なんてバカげたセリフなのだろう。なのだけど、こんなにバカバカしいセリフをごく普通に大真面目な顔で会話しているので、思わず「コレはとんでもなくバカでかいスケールの映画だ!」と感心すらしてしまうから凄い・・・・っていうか怖い。で、どんどんハマっていく自分自身(42歳)に「待て待て、もうちょっと斜に構えて観ようよ、落ち着けオレ!」とテンションをセーブするのに必死だった。いやぁ〜、面白かった〜・・・・。予告編だけ観ると何故だか「物凄いコケるんだろうなぁ」と思わせてしまうところもまた本作の凄さだと思う(笑)。『スター・ウォーズ』とか『スター・トレック』シリーズみたいな「スペースオペラ」的な雰囲気&とんでもなく金が掛かってそうな映像!という、あの予告編はどうしても04年の『リディック』を思い出してしまうから・・・・加えて、『リディック』が超名作『ピッチブラック』(00年)の続編だったことと、本作『ジュピター』が同じく超名作『マトリックス』の監督が撮った新作だってこともその要因かもしれない・・・・ま、コレはあくまで僕個人的な感想なのだけど。

 シカゴでトイレ掃除をして働き、人生に夢も希望も持てず毎日つまらない日々を送っていた“ジュピター”。ある日彼女は突然“宇宙人”に襲われ、そこに狼と人間の配合種であるケイン(やっぱり宇宙人)が助けにくる!「何故こんな何処にでも居るような平凡な私が巻き込まれる?!」いや実は彼女こそ“地球の所有者”だったのだ!・・・・という、バカバカしいまでに超壮大な物語。宇宙を支配する一族がいて、母親を亡くした今、その長男が“地球”を相続するはずだったのだけど、そこに死んだ母親と一番近いDNAを持つ“ジュピター”の存在が発覚。もしも彼女が女王の座に即位するれば“ジュピター”が地球の所有者となるので地球を渡したくない長男は彼女の暗殺を計画。一方、“ジュピター”を女王に即位させて仲間に取り込みたい長女と、彼女と結婚して自分が地球を所有したい次男・・・・この3兄(姉)弟が“ジュピター”の争奪戦を繰り広げるのだけど、そもそも何故にみんなそんなに地球を欲しがるか?と言うと、そもそも地球ってのは彼ら一族が商売のために“人間”を繁殖させる目的で作った惑星なのだそうで、人間ってのは彼らにとって“家畜”に過ぎずそろそろ収穫時期だとのこと。MAXなまでに増えすぎた人類がいる地球は莫大な利益を生む正に“金の星”なのだ。「人類は自分たちが地球に送り込んだ」という設定が「何故に人間と狼の配合種が宇宙人なのだ?」とか、「っていうか、何故にみんな人間と同じ見た目なのだ?」という疑問まで払拭してしまうから巧い。

 監督は、95年にスタローン主演の『暗殺者』で脚本家としてハリウッドデビューし、96年の『バウンド』(コレは必見!)で監督デビュー、そして99年〜03年の『マトリックス』『リローデッド』『レボリューションズ』の三部作で大ブレイクしたウォシャウスキー姉弟。今からもう16年も前になるのか・・・・「観たことない」って人は居ないんじゃないか?というくらいに超有名な映画『マトリックス』。「こんな強い敵、勝てるワケないよ!」ってな感じだったのが、終盤「・・・・アレ?オレこんなに強かったっけ?」という、正に「鉄砲の弾よけられる〜!」なケタ違いなカタルシスの凄さに加え、何と言っても“バレットタイム”と呼ばれる特撮技術!まるで時間が止まって見える「誰もが初めて見る」驚愕の映像は、今では「マトリックス以前」「それ以降」と会話されるくらいに革新的であったはずだ。走ってきたキャラがジャンプ!と思ったら、空中でピタリと止まったままグルリとアングルが変わり別角度から再スタート!という、かなり最先端な映像が実は「シーンの周りを沢山のカメラでグルリと囲み同時に撮影。それを後から編集する」という、素人でも理解できる単純な撮影方法だったってのがこの凄さだと思うのだ。元々は結構古くからある技術なのだそうだけど、コレを最先端映像としてアップデートした『マトリックス』という映画はやっぱ相当に革新的だったのだろう。その後B級、どころかZ級くらいの映画にも同様の技術が上手に使われているのを見ると、本作は間違いなく映画史に残る“映像革命”なのだと思う。そして今それを超える新たな“映像革命”である『ジュピター』。宇宙空間での映像は勿論だけど、むしろ前半の地球上での映像の方が物凄い(“バレットタイム”も健在だけど、そこはあまり進化していないってのも興味深いし 笑)。

 ていうか、いつから彼らは“姉弟”になったのだ?!08年の前々作『スピード・レーサー』までは“アンディ&ラリー・ウォシャウスキー兄弟”だったのに、いつの間に?!全然知らなかったので調べてみると、12年の前作『クラウド アトラス』では既に“ラナ&アンディ・ウォシャウスキー姉弟”になっているのだな。『マトリックス』シリーズ以来の前々作『スピードレーサー』はウォシャウスキー兄弟(姉弟?面倒くさい)の『マトリックス・レボリューションズ』以来の監督作ということに加え、製作が『マトリックス』シリーズはじめ、『リーサル・ウェポン』シリーズや『ダイ・ハード』、『プレデター』シリーズなどを手掛ける超大御所ジョエル・シルバー!ってこともあり関心も高かったけど、『クラウド〜』はドイツ映画の大傑作『ラン・ローラ・ラン』(98年)のトム・ティクヴァ監督の最新作というイメージの方が強かったし、そもそもあの映画はやたらと長い上に全然面白くなくて、僕的に実に久しぶりに劇場で寝てしまったというアレだったんで、まぁ、単に覚えていなかったんだろうな・・・・。画像を見ると、昔は“メガネオタク”ってあだ名が付きそうなパッとしない風貌だった兄ラリーが結構可愛くなっているからたちが悪い。前々作『スピード・レーサー』は日本のアニメ「マッハ GoGoGo」が元ネタだったし、前作『クラウド アトラス』も原作があったので、オリジナルものとしては『マトリックス』以来、実に12年ぶりとなるのか?「コレどっかで観たよな?」っていうシーン・設定が満載の『ジュピター』。もしかしたらこの姉弟はタランティーノを超える世界一の“映画オタク”なのかもしれない。敢えて言うまでもないけれど、コレは絶対に劇場の大画面で観る映画なのでお見逃しなく。

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