龍三と七人の子分たち

 「じじいが〜」「じじいに?」「じじいと〜」「じじい!」と、もはや気持ちがいいくらいに「じじい」を連発する予告編。「このやろう!」「くそやろう!」「ばかやろう!」などの悪態用語満載の『アウトレイジ』予告編もかなりのもんだったけど、今回もまた“北野武節”が炸裂した強烈な二分間であった。『アウトレイジ』の予告編をそのままパロディ化したようなこのトレーラーを観ただけで「今回もかなりの傑作なのだろう」と否応なしに期待値は上がる。日本映画史上、近年稀に見る大傑作であった『アウトレイジ』(10年)『〜ビヨンド』(12年)に続く、17作目となる北野武監督最新作が本作『龍三と七人の子分たち』だ。

 ヤクザ映画の金字塔『仁義なき戦い』シリーズ(73年〜76年)をはじめ、近年では『バトル・ロワイヤル』シリーズ(00年〜03年)等で有名な巨匠(故)深作欣二監督。その深作監督&ビートたけし主演で進められていた『その男、凶暴につき』(89年)が、深作監督の降板により「まさか?!」の監督デビュー作となり、それがまた大傑作となったもんだから映画界に於いても一躍有名になった北野武。その後の作品がカンヌやヴェネチアの世界的映画祭で大絶賛され“世界のキタノ”と云われるまでになったのは、僕がココで敢えて書くまでもなく周知のことだろう。北野映画については正直僕はその全作を観てもないし、それこそwikipediaなんかで調べれば幾らでも詳しい情報は出てくると思うのでココでは割愛するとして、『その男、凶暴につき』(89年)は勿論『HANA-BI』(98年)とか『BROTHER』(01年)なんかは個人的にも大好きな映画だ。特に好きなのは、まるで“フィルム・ノワール”をレオス・カラックスが撮ったような大傑作 『ソナチネ』(93年)。だけど(前にもココで書いたことがあるのだけど)僕はテレビで観る“北野武”は大嫌いだ。全っ然面白くないのに周りの人が爆笑している場面を観て、まるで“北野武を笑わないといけない”ような空気を感じてゾッとしてしまうのは僕だけだろうか?思えばコレは「漫才師ビートたけしが初めて(唯一)お笑い映画を撮った」と云われている『みんな〜やってるか!』(95年)の時から始まったような気がする。僕はあの映画が全然理解できず、観終わった後も独り“取り残された感”を味わったのだけど、やっぱり世間では大絶賛されていて・・・・。ダウンタウン・松本人志の『しんぼる』(09年)でも同様の気持ちになったのだけど、テレビで観る“まっちゃん”は相変わらずボケてキレてて僕を心底笑わせてくれるで、逆にその『しんぼる』すら好きになれたのだけど・・・・。

 大好きなダウンタウンの『絶対に笑ってはいけない〜』というシリーズがある。「笑ってはいけない」というルールで仕掛け人がメインキャラを笑わせようとし、笑ってしまったら罰を受けるという・・・・。この「笑ってはいけない」というシチュエーションってのが、最も笑ってしまう場面だと思うのだ。その最たる例が「お葬式」。僕が子供の頃はよくドリフでやっていたけど、今では不謹慎の極みだろう(だから“志村けん”は凄いのだと思う)。で、次に笑ってはいけないのが「障害者」で次が「お年寄り」、そして「ヤクザ」と続くのは間違いなく。本作『龍三と〜』は、その「お年寄り&ヤクザ」をテーマにした映画なのだから笑えないワケがない(しかも「お葬式」もしっかり入ってるし)。北野武の次作が「障害者」をテーマにしているという点でもコレはもう間違いなく確信犯だと思う。けど、コレらを“分かってて”敢えてテーマにしないダウンタウンがやっぱり大好きだなのだけど。

 かつての大御所ヤクザが「オレオレ詐欺」に引っ掛かりそうになったことから昔の仲間と再結成。詐欺等をやりながら表向きは会社組織になっている現代風「ヤクザ」(?)との闘争を描いた本作。出演は、藤竜也に近藤正臣、中尾彬、品川徹、小野寺昭、樋浦勉などなど・・・・物凄い“悪党面”勢揃いだ。北野武監督が「誰かの遺作にならないよう、公開までみんな元気でいてほしい」と言っていたのが微妙に笑えないほどに、登場人物の平均年齢はなんと72歳・・・・っていうか、その北野武も68歳なのだな。(先述した『みんな〜やってるか!』は、まぁ置いといて)本作は北野武が初めて本気で真正面から“お笑い”に取組んだエンターテイメント映画なのだと思う。しかも得意の“ヤクザ”もので。くだらない北野武がとことんくだらないお笑い映画を撮ってみました的な一本。最高に面白い!

 オーストラリア映画『マッドマックス』(79年)『マッドマックス2』(81年)『マッドマックス/サンダードム』(85年)の三部作に続き、まさか?!の30年ぶりの最新作である『マッドマックス 怒りのデスロード』が公開される今年。当初はメル・ギブソン(59歳)主演!ってことで往年のファンは大いに盛り上がったのだけど、度重なる撮影延期につきとうとう「メルギブは主演としては歳を取り過ぎた・・・・」ってことで流石に降板になったのだけど(代役として『ダークナイト ライジング』でバットマンを追い詰める最強の悪役“ベイン”を演じたトム・ハーディ)監督はジョージ・ミラー70歳!他にも、オリジナルから約30年ぶりの最新作となる『ターミネーター・ジェネシス』では67歳のアーノルド・シュワルツェネッガーが主演復帰だったり、『ランボー5 LAST BLOOD』や『ロッキー』の最新作で“アポロ”の孫を主役にした『Creed(原題)』の公開を控えるシルベスター・スタローンは68歳だ。そのスタローンが企画した『エクスペンダブルズ』(10年〜)なんて、ジェイソン・ステイサム47歳、ジェット・リー51歳、ドルフ・ラングレン57歳、ミッキー・ローク62歳、エリック・ロバーツ59歳、ブルース・ウィリス60 歳という・・・・何という高齢映画だろうか?時代は「オヤジ映画」なのだ。そこを狙って大ヒットした『RED』(10年〜)もブルース・ウィリスに加え、モーガン・フリーマン77歳、ジョン・マルコビッチ61歳、ヘレン・ミレン69歳といったなかなかの高齢だし、最新作が公開間近で今年の特大ヒット間違いなしの超一級アクション映画『ミッション:インポッシブル』ですら、そもそもコレに主演するハリウッドスター“トム・クルーズ”がもう52歳なワケで・・・・そう考えると『ミッション〜』も充分に「オヤジ映画」だと云えるのかもしれない。『ワイルド・スピード』(01年〜)だって、ヴィン・ディーゼル47 歳、ポール・ウォーカー満40歳没、ドウェイン・ジョンソン42歳で、もっと言えば『アイアンマン』(08年〜)も、今の僕と同じ42歳で主演を演じたロバート・ダウニー・Jrはもう50歳で『アベンジャーズ』の最新作『エイジ・オブ・ウルトロン』の公開を控えているのだ。

 ってなワケで「じじい映画」が旬の映画界。日本映画としては本作『龍三と七人の子分たち』が最高峰だろう。

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