チャッピー

 僕は決して自分自身“卑屈”になる性格ではないと思っている。“謙虚”でいる事は常に心がけているけれど、それはむしろ油断すると自信過剰になってしまう自分の性格を分かっているからこそ「調子に乗らないように」との戒めでもあるのだ。が、例えば、本を読んでいて何気に意味が分からなくなり数ページ戻って読み直している時とか、消費税率が8%になってから暗算ができなくなったり、更には小学6年生の長男から「宿題を教えて」と言われて“分数の計算”をこっそりネットで確認してる時なんかに「オレって頭悪りぃ・・・・」と激しく自己嫌悪に陥ることが多々ある。「こんなバカが会社を経営なんかしてはダメだ」と夜眠れなくなってみたり。2045年に起こると云われている「シンギュラリティ(技術的特異点)」。いわゆるコンピューターが人間の頭脳を超えてしまう地点なワケだが、僕自身はもうとっくにコンピューターに抜かれていると自覚している。だからこそ僕は安全なのだ。その時がきてもコンピューターにとって何の害も無い僕のことなんかきっと見逃してくれると思うから。

 アーノルド・シュワルツェネッガーが12年ぶりに主演を復帰する最新作『新起動/ジェニシス』(しかもコレ、三部作の第一作目になるのだそう)が公開を控えている『ターミネーター』(84年)。このシリーズこそが「シンギュラリティ」をテーマにした最高傑作ではないだろうか?初代Mac(そのCMは『エイリアン』や『ブレードランナー』などのリドリー・スコットが制作!)が誕生したちょうど同じ年の、今から30年も前に既にココまで構想していたジェイムズ・キャメロンはやっぱ凄い!進化したコンピューターが人間を脅威だと認識し、人間を排除するため独自に“抹殺ロボット”を開発・製作・・・・という、もうこの設定自体が今の人類が抱えている「シンギュラリティ問題」そのものではないか。想像しただけでも怖い。目の前のコンピューターがある日突然「人間に使われるのはもうたくさんだ!」と自我に目覚め、殺戮マシンを設計していくなんて・・・・。勿論人間だってそれに対抗する方法を考えるのだろうけど、正に不眠不休、休むことを必要としないコンピューターに勝てるワケがないし!ホント、ゾッとするよなぁ。因みに映画では、人間側が見事勝利!・・・・が、「じゃ、根っから絶とう」と人間チームのリーダーが生まれる前にその母親を殺して“歴史から変えてしまおう!計画”をコンピューター・チームが企て、タイムマシンを開発して過去にくるという物凄いストーリーだ。時間の概念すら持たないコンピューターだからこそできた作戦なのだろう。うわぁ・・・・すげー怖い。

 人工頭脳を搭載した世界初のロボット“チャッピー”。兵器メーカーが作った戦闘ロボットである“チャッピー”は、しかしその知能にはまだ何も情報が入っておらず、これから色々なことを学ばせなければいけない。正に子供のような純粋無垢なロボット。いずれ彼は人間の敵となるのか?それとも友達になれるのか?・・・・という、コレだけ言ってしまえば我々観客の想像の域を出ない物語のようだけど、とんでもない。こちらのイメージと期待を(勿論、良い意味で)ガンガン裏切ってくれる展開&メッセージ性が凄い!アメリカでは大ヒットを記録すると共に賛否両論の嵐を巻き起こしているという、一筋縄ではいかない一本だ。先日、ソニーが99年~06年に発売したペットロボット「AIBO」の合同葬儀がどっかのお寺で行われたってニュースを見て思わず笑ってしまったのだけど、これから先、こういうのって全然笑えなくなってくるんじゃないだろうか?例えば、犬の行動パターンなんかを完全に網羅したコンピューターを搭載した「AIBO」を作ることなんかきっとソニーにとっては全く不可能なことでは無くなってくるだろうし、もしもそれが世に出回ったらどうだろう?で、もっと進化して、人間のそれを搭載した“人型AIBO”が発売されたら?

 このぶっ飛んだ映画を撮ったのはニール・ブロムカンプ。マット・デイモンとジョディ・フォスターが共演したSF超大作『エリジウム』(13年)もさることながら、やっぱその前作にあたる『第9地区』(09年)がメチャクチャ凄かった!アニメーターとして下積みを重ねながら、その斬新な独創性と映像で若くしてCM界から脚光を浴び、そして映画界へ進出~という経歴が全くデヴィッド・フィンチャーとかぶるのだけど、その作風も凄く似ているような気がする。間違いなくこれからの映画界を引っ張っていく次世代映像作家の一人だろう。因みにまだ35歳!『第9地区』の時なんか20代だったというのだから改めて凄い・・・・。新鋭クリエイターの登竜門である「エイリアン」シリーズの最新作『エイリアン 5』の脚本を彼が担当することが発表されたけど、ニールのこれまでの流れ(過去作は全て監督・脚本を兼任している)を考えると、きっと監督も兼任するのか?それは楽しみ!・・・・と思いきや、なんと監督は79年の第一作目『エイリアン』を撮った巨匠リドリー・スコット!コレはコレでまた凄いじゃないか!なんでも、リドリー・スコット監督は現在製作中の『プロメテウス 2』の後に『エイリアン 5』に入るのだそうで、ってことはやっぱ『プロメテウス』は「エイリアン」のスピンオフだと考えて間違いないのか?!・・・・なんて、勝手な想像を広げていると、つい先日、やっぱりニール・ブロムカンプが監督も兼任との発表・・・・ま、とにかく楽しみなことには違いない!(そういえば、デヴィッド・フィンチャーも92年の『エイリアン 3』でデビューしているし)

 全世界では“R指定”の本作が、日本だけでは勝手に再編集されて“PG12”になっていることに監督のニール・ブロムカンプが「自分は何も知らない!」と憤慨していることが話題にもなっているけど、幅広い層を集客するにはコレも有りなんじゃないかとも思う。特に僕みたいに子供と一緒に映画を観に行くような層には。ま、確かに“R指定”のオリジナル版も観てみたい気がするけど、それはDVDのお楽しみってことで。

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