海街diary

 なんて清々しい映画なのだろうか。物語、人物、風景、風情、日本家屋、そしてそこでの生活・・・・と、あらゆる面から見ても世界に誇れるような、日本映画の金字塔的一本だと思う(特にフランス辺りでウケそう)。オープニング二日間で18万人以上の動員&2億3千万円の興行成績をあげ「コレは物凄い大ヒット!」と思いきや、同日公開された『ラブライブ』がその倍近くの数字を記録するというハプニング(?)が勃発し、まさかの二位止まり。まるで『ベイマックス』が『妖怪ウォッチ』に負けてしまった悪夢の再来じゃないか!?日本の映画界は一体どうなってしまったのだ?・・・・お陰で、爆発的な話題性は作れなかったものの、本作『海街 diary』は地味~にジワジワくる映画だからきっとかなりのロングランで上映されるはず。なので結果的に『ラブライブ』なんて相手にならないほどの実績を残せると思うのだけど(っていうか、そうならないとおかしいだろう)。

 父親の浮気が原因で両親が離婚し、それから三姉妹だけで生活してきた香田家。ある日、15年以上会っていない父親の訃報が届きその葬儀に参加する・・・・と、そこで腹違いの妹である“すず”と出会い、四人で暮らすことに。複雑な家庭環境の中、それぞれ個人的な事情を抱える四姉妹。“親を許せない長女”と“姉の幸せを願う次女”、それに“父を知らない三女”、そしてその三姉妹の父親を誘惑した母を持ち「自分の存在自体がいつも誰かを傷付けている」と“自分を許せない四女”の4人が、本当の家族になっていくまでの一年間の物語。原作は吉田秋生の同名漫画だ。第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞や13年のマンガ大賞などを受賞している名作(そもそも、こうやって映画化までされたほど)なのだそうだけど、恥ずかしながら僕は今までこの漫画の存在すら知らず、良い機会だから読んでみようと思ったのだけど正直言って個人的にあの「画」がちょっと苦手で・・・・書店で手に取ってパラパラめくってみるも断念。ま、しかし『天然コケッコー』(07年)の主役“右田そよ”&ファッションモデルの超美少女“夏帆”が何故にあんな髪型&雰囲気なのか?の謎が解けただけでも良かった。なるほど、原作の千佳に似せているのだな。パラパラめくってみるものだ。

 この四姉妹を演じるのが、長女・綾瀬はるか、次女・長澤まさみ、三女・夏帆、そして末っ子に広瀬すず。こんな美人姉妹なんていないだろ!とツッコミを入れたくもなるも、それが過剰に華やかになることなく・・・・どころか、まるで彼女たち女優の好感度を上げるほどの“素”を魅せているような演出は正に監督・是枝裕和の仕業だろう。カンヌ国際映画祭で柳楽優弥が史上最年少&日本人初の最優秀主演男優賞を受賞したことで世界的に好評を得た『誰も知らない』(04年)で一躍有名になった人だと思っていたけど、95年のデビュー作『幻の光』が既にヴェネチア国際映画祭で金オゼッラ賞を受賞していて、続く『ワンダフルライフ』(99年)もハリウッドリメイクが決定。そして01年の『DISTANCE』を経ての『誰も知らない』だったのだな。更には、11年の『奇跡』に至ってはイギリスの新聞「ガーディアン」が選ぶ名作映画ランキングで9位に選ばれ、前作『そして父になる』(13年)はスピルバーグのドリームワークスでのリメイクも決定。日本国内よりどっちかというと国外での評価が高いように思う。この4人の女優の中でも、物語の軸となるのは広瀬すず演じる四女“すず”。子供たちが「学校のカイダン」という学園ドラマにハマり、一時期“Hulu”でしょっちゅう観ていたので僕もそれを機に知ったのだけど「世の中にはこんな可愛い女の子がいるのか」と感心したほどだった。「イヤらしい目で見ては人としてダメ(年齢的に当然なのだけど)」というくらいの圧倒的な可愛さ。その昔「とんねるず」のテレビ番組で宮沢りえを初めて見た時を思い出した。しかしまた本作での彼女は凄い!「こんなに子供だったっけ?」というあどけなさと純粋無垢と表裏一体の鈍臭さを併せ持ちつつ時に大人をも魅了する女らしさを表現できる女優さんなんてそういるものではないだろう。実年齢16歳だからこその、今しか表現できない貴重な一本・・・・を、敢えて狙って撮ったであろう監督・是枝裕和がやっぱり凄いのだな。

 09年の『ホノカアボーイ』のように“食べ物”自体を推すワケでもなく、ただただ食事のシーンがやたらと多いのは女優たちの限りない“素”を撮ろうとする意図なのだろうか?観ていて腹が減ってくるのだけど、千佳(夏帆)の作る「ちくわカレー」はちょっと・・・・。舞台となる鎌倉と山形には一度も行ったことは無いのだけど、なんだか指宿とか霧島の町並みに似ていて凄く親近感が沸き見ていて心地良かった。ちょっとでも気になる方はまずは「予告編」だけでも観て頂きたい(コレだけで凄いグッとくるから)。ずっと心の片隅に残る、宝物のような一本。オススメです。

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