バケモノの子

 日本での行方不明者は毎年約8万人と言われているけれど、コレは正式な捜索願が出されている人数なので実際には10万人位はいるんじゃないだろうか?中でも“特異家出人(何らかの事件・事故に巻き込まれた可能性が高いと認められた失踪人)”もなんと約1万5千人もいるそうで・・・・例えば、その中で既に殺されてる人が一割いたとしても1,500人!殺人を犯してそれがバレずに逃げ遂せるってのは、推理・サスペンス小説などでもそうそう成せるものではなく正に鉄壁の“完全犯罪”!って感じだけど、どうだろう?この数字を見る限り実は毎年1,500人もの未解決殺人事件が起こっているかもしれないとも取れないだろうか?で、興味が湧いて色々と調べてみると、毎年約8万人の行方不明者のうち(生死を問わず)実に98%の人がその年のうちに発見されているのだという。な~んだ、それは良かった・・・・と思うのも束の間、やはり2%(1,600人程度)の人は行方不明のままだし、もっと言えば死体で発見された人の大半は自殺者だけど約1,500人程度は死因不明(殺されたかもしれない)なのだそう。先述した数字との奇妙な偶然の一致にゾッとした。

 「あんまり言う事聞かないとバケモノが来るよ」とか「バケモノに電話するよ!」とかってセリフは大概の子供にとって効果てきめんだろう。ま、実際には“バケモノ”って言う家庭はごく稀だと思うのだけど(因みにうちでは“バケモノ”ではなく“ゴブリン”って言っているのだけど、それが“鬼”だろうが“オバケ”だろうが、同様だ)。親としての説得力が無い為に未知の物体にしつけを頼っていると言われれば、まぁそうなのかもしれないけれど、古今東西ずっと語り継がれてるってのは何かそれ以上の理由がある気がしてしょうがない。で、そこで思うのが「もしかしてホントにいる?」という、親すらも巻き込む論争だろう。だからこそ「未知の生物」とかいったTV番組が大人気なんじゃないだろうか・・・・。『時をかける少女』(06年)『サマーウォーズ』(09年)『おおかみこどもの雨と雪』(12年)といった名作アニメを生み出した細田守監督の4作目となる本作『バケモノの子』では、渋谷と並行した別次元に「渋天街」という世界がありそこには10万人ものバケモノが住んでいて、ビルとビルの合間から互いの世界を自由に行き来する“バケモノ”が渋谷の街を人間に紛れてうろついているという。こういう設定って個人的には大好きだ。人間に化けた沢山の宇宙人が住んでいる『メン・イン・ブラック』(97年~)とか、人間に紛れている幽霊を見分け退治する『ゴースト・エージェント R.I.P.D』(13年)、寄生生物が人間に紛れている『寄生獣』(14年~)とか。冒頭に書いた行方不明者の、そういう“殺人鬼”が捕まること無く何食わぬ顔をして街中を歩いているのだと思えば、それこそ「人間界にバケモノが紛れている」って感じなのだろうけど。

 主人公は、両親が離婚し母親と二人で暮らしている9才の少年・蓮。ある日突然、その母すらも事故で失ってしまい自暴自棄になった“蓮”は親戚の家へと引越中に「一人で生きていこう」と決心し家出をする。渋谷の街を行くあてもなくさまよい歩いているところに“熊徹”と名乗る狼男のようなバケモノに出会い、彼らの世界である「渋天街」で“熊徹”の弟子として暮らすことに。“熊徹”の圧倒的な強さに憧れつつも彼の不器用な弱さも理解する“蓮”。互いに対立しながらもまるで親子のような関係を築きながら8年の歳月が流れ・・・・。

 一方、“熊徹”の物語。バケモノ界のドンである“宗師”は高齢のため近々その立場を引退して神になる予定。で、その後継者にはバケモノ界で一番強い者(闘技会の勝者)が選ばれるというのだが、圧倒的な強さを誇る“熊徹”には闘技会の出場すら認められない。何故か?“宗師”が大会の出場条件として出したのは「弟子を取ること」。しかし、親も子供もなく今まで誰からも「教わる」こと無くその才能だけで最強になった彼は、超ワンマンな為に弟子は誰一人続かない。そこに現れたのは人間の子である“蓮”だ。ま、どうせまたすぐに逃げ出すだろうと思いながらも、自分と同じ孤独と葛藤を秘めていることに気付き何故か本気になってしまう・・・・“熊徹”がライバルである“猪天山”に今まで一度も勝てなかったのは何が理由だったのだろうか?

 素晴らしい。一見、本作は主人公“蓮”の成長の物語なのだけど、実は“熊徹”の成長の物語でもあるのだ。蓮(子供)の立場で観るか?熊徹(親)の立場で観るか?でこの映画は大きく色合いを変えていく。勿論、我々大人はそのどちらの立場からでも観ることが出来るので、深いのだなぁ~。大人はとことん深読み出来て・・・・というか、表向きに描かれていない“心理”が読めて泣けて泣けて仕方ない。そして、子供にはとことん丁寧!物語がいちいちセリフで語られるし、なんだったらナレーションで説明。だから物語が決して難解になること無く純粋に楽しめ感動できるのだ。一緒に連れて行った4才の娘ですら理解し感動していたのだから凄い!(でも、個人的には「説明しすぎ!それくらい分かるわ!」と2~3度思ったけど・・・・)後半は、8年の失踪を経て帰ってきた“蓮”が生き別れていた父との再会があったり、同年代の女の子との淡い出会いがあったり、更には渋谷の街で「アベンジャーズ」並みの戦いが繰り広げられたりと、エンタメ盛り沢山!わずか2時間にこれだけの要素を盛り込むとは、流石は細田守!間違いなく、これからの日本アニメ界を先導していく大御所だろう。

 実は、今回は大好きなピクサー(&ディズニー)の『インサイド・ヘッド』を紹介するつもりで、原稿もほぼ書き終わっていたのだけど、コレを観てしまっては・・・・。夏休みにもしも一本だけ家族と一緒に行くとすれば?絶対に『バケモノの子』の方だ、と思ったのだ。

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