ブリッジ・オブ・スパイ

 本作の舞台は米ソ冷戦下の50〜60年代。ソ連のスパイとして逮捕されたルドルフ・アベルの弁護を引き受けることになった敏腕弁護士ジェイムズ・ドノバンを描いた重厚ドラマだ。「何故、敵の弁護をする?」と世間から非難を浴びながらも弁護士として偏見なく職務を全うしようと戦うドノバンと、一切の情報を漏らすこと無く祖国への忠実を貫くルドルフ。やがて、立場的には全く相反しながらも互いの信念に敬意を払う仲に。それから5年後、ドノバンは「U-2撃墜事件」によりソ連の捕虜となったアメリカ軍パイロットの救出の為に秘密裏にルドルフとの交換交渉を政府に命じられるのだが、その作戦中に東ドイツに捕らえられたアメリカ人学生の存在を知り、彼はアメリカ政府の反対を押切りソ連とドイツに囚われた二人の解放と引き換え交渉を試みる・・・・。この辺の歴史に疎い僕は正直、東西のドイツが絡んできた時点で、互いの立場や利害関係がよく分からず少し困惑してしまったけれど、にしても、とにかく夢中になって楽しめる二時間強。コレが実話を基に描かれているっていうのだから凄い!こんな人がいたなんて。しかも、この一件の功績でその後フィデル・カストロとの交渉を政府から命じられてキューバから1,000人以上の囚人を解放しているという。本作の続編として是非ともそちらも観てみたいものだ。

 本作のポイントは何と言っても、スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作だということ。それに尽きるだろう。正直言うと、この映画がスピルバーグ映画じゃなければ僕はきっと観ることはなかったと思う。ましてや主演がトム・ハンクスだし・・・・。観れば観たでそれなりに面白いのだろうし、過去にはこの手の実話ドラマにハマまり、同系作をレンタルで見漁ったことも今まで何度かあるのだけど、ただ、最近は『スターウォーズ』や『スペクター』、『クリード』といった娯楽大作を観続けていた流れだったので、その延長線で“実話モノ冷戦ドラマ”を観ようという気分には全くなれなかったのだ。が、本作がスピルバーグ映画だとなればまた話は変わってくる。しかも脚本がコーエン兄弟!名作『バートン・フィンク』(91年)や『ファーゴ』(96年)、『ノー・カントリー』(07年)なんかの、あのコーエン兄弟が脚本を書いているという!スピルバーグ×コーエン兄弟×トム・ハンクス、となれば例えどんなジャンルの映画であろうと面白いに決まっている。(トム・ハンクスは勿論のこと、ルドルフを演じたマーク・ライアンスがまた素晴らしかった!僕は初めて見たけれど有名な人なのだろうか?)

 それまで「タコのような姿をした火星人」というのが“宇宙人”のイメージだったのに『未知との遭遇』(78年)で人型をした“リトルグレイ”を描き、その姿が世界中で一気に定着したことから(“リトルグレイ”の目撃談が頻発したり)、実際に宇宙人に会ったことのある数少ない一人だと云われているスピルバーグ。こういった都市伝説的な逸話もスピルバーグ映画の夢が膨らむ魅力じゃないだろうか。映画監督としてのデビュー作『ジョーズ』(75年)がいきなり『ゴッドファーザー』(72年)を抜いて最高興行収入映画歴代一位となり、77年に『スター・ウォーズ』に抜かれるものの82年の『E.T.』で再び更新。『E.T.』は97年に『タイタニック』に抜かれるまでなんと15年ものあいだ一位の座に君臨していたのだから正に映画史上最高傑作と云える一本だろう。僕の世代的には、スピルバーグと云えば70年〜90年代の超娯楽映画のイメージがあるのだけど(っていうか、この年代の超娯楽大作は殆どスピルバーグ映画と言っても過言じゃないと思っていたほど・・・・)。が、よくよく調べてみると先述した三本の他には『インディ・ジョーンズ』シリーズ(81年〜)と『ジュラシック・パーク』シリーズ(93年〜)くらいしか監督作での娯楽映画は無いのだと気付いた。今までてっきりスピルバーグ映画だと思い込んでいた『ポルターガイスト』(82年)とか『グレムリン』(84年)、『グーニーズ』(85年)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(85年〜)、『メン・イン・ブラック』シリーズ(97年〜)、『トランスフォーマー』シリーズ(07年〜)等のクレジットは全て“製作総指揮”・・・・なるほど、この人は位置付け的には“プロデューサー”なのだな。今年『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でその順位は確実に入れ替わるとしても、ついこないだまで最高興行収入映画の一位『アバター』(09年)と二位『タイタニック』(97年)の二本がジェイムズ・キャメロンの映画なので「一番稼いだ映画監督」は間違いなくキャメロンだと思っていたけど、なんとスピルバーグなのだそう。因みに、プロデュース作の興行成績としてもダントツの一位。やはりスティーヴン・スピルバーグ、名実共に「映画界で一番稼いだ人物」なのだった。

 そんな“超娯楽映画”のイメージが強いスピルバーグだけど、ココ最近は『ミュンヘン』(05年)や『戦火の馬』(11年)、『リンカーン』(12年)など歴史的シリアス映画が増えてきてなんだか残念な感も否めないファンも多いのではないだろうか。いや、それはそれで面白いのだけど、なんて言うかスピルバーグにそれは求めていないというか・・・・(もしくは85年の『カラー・パープル』と97年の『アミスタッド』のトラウマが影響しているのかもしれない 笑)。しかしこの『ブリッジ・オブ・スパイ』、本当に面白かった〜(特に、怒涛のラスト15分!)ハリウッド映画界のトップが集結して作った、正に「コレぞハリウッド映画」な一本。凄いオススメです。

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