のぞきめ

 僕はハリウッド産の、というか外国産のホラー映画は大好きなのだけど日本のホラー映画は大の苦手だ。例えばゾンビとかモンスターなんか、いかにも“造り物”って感じがしてアトラクション的に楽しめるのだけど、和製ホラーはどうにも耐えられない。実話を基にした『悪魔のいけにえ』(74年)の殺人鬼レザーフェイスですら“造り物”にしか見えないのはきっと登場人物の見た目や言葉、生活背景などの違いにあるのだろう。それに比べて和製ホラーが度々テーマにする“祟り”だとか“怨念”だとかいったものはレザーフェイスなんかよりずっと身近な気がするから不思議だ。多分、日頃の生活(文化)の中で現実的か非現実的かっていうのがポイントなんじゃないかと思う。だから『パラノーマル・アクティビティ』(07年)の海外版続編『2』(10年)は楽しく観れたのに、日本を舞台にし仏壇なども出てくる日本版続編『第2章 TOKYO NIGHT』(10年)はあれほど怖く感じるのだろう。

 誰もいないはずなのに何だか誰からか見られている気がする、そんな経験はないだろうか?それに答えるのが本作『のぞきめ』だ(ま、そんなんに答えられても困るのだが)。“のぞきめ”・・・・なんてイヤな響きなのだろう。その言葉からイメージする通り、例えばタンスの抽斗の隙間とか冷蔵庫と壁のちょっとした隙間なんかからじ~っと見ている目が“のぞきめ”と呼ばれるもので、それに見られると死んでしまうという。いやだなぁ~・・・・個人的には一番イヤなタイプだ。テレビ局の新人ADである彩乃は奇妙な怪事件を取材することに。腹がよじれて口から泥を吐き出して死んでいた青年の彼女はそれは“のぞきめ”の仕業だと怯え、大学のサークルで一緒に山奥のリゾート別荘地へ合宿に行った時からずっと誰かに覗かれていたのだという。取材を進めていくうち、彩乃の周りからも“視線”を感じる人が続出して次々と謎の死を遂げていき・・・・こう書いてしまうと、量産されるジャパニーズ・ホラーの定番的な映画に誤解されそうだが、本作は明らかにそれらとは一線を画していると思う。何が違うかというと、やはり原作からしっかり受け継がれる独特の世界観だろうか?和製ホラーの元祖とも云えその最高傑作のひとつである『リング』(98年)に近い作風だ。

 原作は三津田信三の同名小説。映画版は主人公の設定から違っていて原作を忠実に~ってワケではないのだけど、序盤の廃村を舞台にした不気味な体験を経て、その“廃村”がまだ人々が住む“村”だった頃に遡り謎を解き明かしていくという、ホラーからミステリーへの流れとその独特な世界観はしっかり描かれているし、何より映像化することで“のぞきめ”の恐怖が小説以上になっているので原作ファンも裏切られる事無く楽しめるはずだろう。ココからは余談だが、三津田信三の原作「のぞきめ」のポイントは実話なのか作り物なのか?が曖昧な点にあったのだけど、それと同様の小野不由美の「残穢」も最近映画化されていたようだ(僕は怖すぎて観ようとも思わなかったけど)。あの稲川淳二が「怪談とはどういうものかを知りたければ、この本を読めば分かります」と絶賛した小野不由美の小説「鬼談百景」。コレはいわゆる怪談“百物語”なのだけど収められているのは99話で、うち一話が独立してリリースされたのが「残穢」。「鬼談百景」にもその断片というかスピンオフ的エピソードが何本があって「結局、何だったの?薄気味悪いなぁ・・・・」と後味の悪さを残しつつ、それらの全貌がみえるのが「残穢」であった。山本周五郎賞を受賞した「残穢」は、その選考委員から「この本を自分の本棚にずっと置いておく気にはなれない」とか「この本を手元に置いておくことすら怖い。どうしたらいいものか悩んでいる」とか・・・・“とにかく恐ろしい”という強烈な一冊で、実際に読んだ人こそ映画化されると聞いても観る気にはなれなかったんじゃないだろうか。映画(映像化)はともかくとして、ホラー小説は好きな僕としてはここ数年で一番怖かった「のぞきめ」と「残穢」。未読&未見の方は是非とも。ただ、いい歳して夜中に一人でトイレに行けなくなってしまうけど・・・・。

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