デッドプール

 「またアメコミものか。こないだ『シビル・ウォー』を観たばかりだからまだお腹いっぱいだな・・・・」と思っている方々にこそ観て頂きたい。なにせこの『デッドプール』、本来子供向けなはずのアメリカン・コミックの映画化作なのにまさか?!の“R指定”なのである(笑)。中国では(アジア圏内で最大のマーケットとなる可能性があるにも関わらず)上映禁止になるほどの過激な“R指定アメコミ映画”の制作にGOサインを出した映画会社のお偉いさんに「お前はバカか!?」と言いたい。が、公開されるなり本作は“R指定映画”としては映画史上最高額となる世界興行収入を更新したばかりか、なんとオープニング興行収入で“20世紀フォックス”史上最高額を記録!なんだかとんでもないことになっているのだなぁ〜・・・・。「下ネタ満載!」と謳われてるけれど“R指定”の要因としてはそこではなく(むしろ下ネタはそこまででもない)過激なバイオレンス描写の方。まるで『ファイナル・デスティネーション』シリーズ(00年〜)のような映像は劇中のセリフにもある通り「この手の映画ってのは結局“殺し合い”をしている」ワケで、それをカッコ良く描くというよりもグロいほどにリアルに描いているのが『デッドプール』の最大の特徴で、同時に他のアメコミ映画とはっきりと一線を画すポイントなのだ。コレを観てしまうともう他全てのアメコミ映画がヤワで物足りなく感じてしまうほど。

 元特殊部隊の優秀な工作員であったウェイド・ウィルソンは、今は傭兵(金で雇われ、政治的・国家的利害に関係なく戦闘に参加する兵士)となって活躍し、彼女とも婚約し順調に幸せな日々を送っていた。が、ある日突然、末期がんを宣告され自らの命が余命僅かだと知る。意気消沈する彼の前に謎の男(組織)が現れ「ガンを治してやる」と・・・・そして壮絶な人体実験・改造を受け、驚異的な身体能力と治癒能力・不死の肉体を得る!のだが、それと引き換えに酷い身体(見た目)になってしまうことに。組織の親玉である“エイジャックス=フランシス”から「肉体を改造され戦闘マシンとして売り飛ばされる」という恐ろしいプロジェクトを聞き、組織に復讐するため&自身の見た目を戻してもらうため、不死身の身体を武器にノリノリで大暴れする!という物語。ま、粗筋だけ聞けばよくあるアメコミものと何ら変わらないし斬新さも無いのだけど、とにかくこのキャラ設定が凄いのだ!「X-MEN」に誘われているけれど、そんな気はさらさら無く「オレは“スーパー”ではあるけれど“ヒーロー”ではない」と断言し、世界平和や正義感とかそんなんじゃなくて自分のためだけに闘う超無責任ヒーローという(笑)。

 赤と黒のコスチュームに身を包み、二刀流の刀で戦うアメコミヒーロー『デッドプール』。原作に馴染みの薄い日本人にとってはまるでスパイダーマンの偽物みたいにも見えるのだけど、元々は『X-MEN』シリーズ(00年〜)の初代メンバーであり、そのスピンオフ作『ウルヴァリン X-MEN ZERO』(09年)で最強の“ヴィラン=悪役”として登場したキャラ。そして本作は更にそのスピンオフ作となるワケだけど、“デッドプール”を演じるのが『ウルヴァリン〜』に登場したのと同じライアン・レイノルズってのがまたイイのだなぁ〜。この辺の奥深さがファンにはたまらない!でも、これだけ世界観が違えば今後どういう風に本編と合流してくるのか疑問でもあり楽しみだ(因みに、同じく『ウルヴァリン X-MEN ZERO』に登場した“ガンビット”もスピンオフ作として今年公開予定!)。

 あと、個人的にかなりツボだったのが、画面の向こう側から突如観客に向かって喋ってくる演出!いわゆる“第四の壁(映像・演劇と観客の間にある暗黙の了解的な壁)”を超えてくるこの演出はそもそも原作コミックがそういう設定なのだとか。有名なのはウディ・アレンの『アニー・ホール』(77年)とかジョン・ヒューズ&マシュー・ブロデリックの『フェリスはある朝突然に』(86年)とかだろうけど、最近この手の映画が無かっただけにコレも本作が一目置かれるポイントの一つじゃないかと思う。ワムやシカゴの音楽の使い方など、とにかく今までの固定概念を色々と覆してくる一本。こんなメチャクチャな映画はなかなか無い。(最近のアメコミ映画ではもはや常識だけど)エンドロールが始まっても決して席を立たないように!

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