10 クローバーフィールド・レーン

 社会現象まで巻き起こしたシリーズ最新作『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(15年)が記憶に新しい、今や世界一のヒットメイカーである J.J.エイブラムス監督。30代の若手にしてTVドラマ『エイリアス』(01年~)と『LOST』(04年~)の大ヒットで注目され『ミッション・インポッシブル Ⅲ』(06年)の監督にトム・クルーズ自らご指名・大抜擢されたことで一躍有名になった感があるけれど、実はもっとそれ以前からハリソン・フォードの名作『心の旅』(91年)や超大作『アルマゲドン』(98年)など数々のヒット作の脚本を手掛ける売れっ子だったのだそう。『心の旅』の脚本を書いたのは彼がまだ23歳の時だというから、こういう人を本物の“天才”というのだろうなと思わずにはいられない。大出世作『ミッション~』の後に監督をした『クローバーフィールド』(08年)がまた世界的大ヒットを記録し、続く11年の『SUPER8/スーパーエイト』を経て『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13年)を監督。以降「スター・ウォーズ」と「スター・トレック」という、間違いなく世界で一番巨大なフランチャイズ・シリーズの“二大巨塔”を手掛けているのだから、先述した「世界一のヒットメイカー」という肩書は正真正銘だろう。この人は自身が携わった作品に関しては公開まで徹底した秘密主義を敢行していて、M・ナイト・シャマランと並ぶ“煽る予告編”で有名なのだけど、驚くのはそれが“監督”であれ“製作”であれ“脚本”であれ、役割に関わらず一貫して作風が同じだということ。きっと物凄く統率力とハンドリング能力に長けている人なのだと思う。

 そのエイブラムスが手掛けた最新作が本作『10 クローバーフィールド・レーン』。彼の監督作『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08年)の続編が製作中!と数年前から噂されていたけれど、コレがホントにその続編なのか?そうではなくただの似たタイトルの映画なのか?は観た後もやっぱり分からなかった(笑)。そもそも『クローバーフィールド』(08年)の売りであった緊張感を煽る手持ちカメラの“一人称視点映像”ではなく普通に“客観視点”になってる時点で、我々観客には「全然別モノだし」となるし、予告編ではただの密室劇にしか見えず「いや、やっぱり全然違うじゃん!」と思っていたのだけど、これがまた微妙というか絶妙なところで共通点があるのだな。

 全く見知らぬ部屋で目が覚めた主人公のミシェル。運転中に事故を起こしたところまでは記憶にあるのだが・・・・気が付くと手錠で拘束され自由を奪われた状態で監禁状態に。部屋の主であるハワードによるとそこは豊富な食料を備えた頑丈な地下シェルターで、交通事故にあったミシェルを“攻撃から守ってあげている”のだという。「外は攻撃により汚染されているから絶対に外に出るな」と異常なほど徹底された監禁状態の中、果たして彼の言っていることは本当なのか?外の様子を確かめる術もなく疑心暗鬼になりながらも(自らの意志でそこにいる若者エメットも含め)3人の奇妙な共同生活が続く。次々と浮かぶ謎と解決する謎。そして遂に意を決し脱出を試みるミシェルだが・・・・という、登場人物たった3人の壮大な密室劇!もうこの設定を聞くだけでとんでもなく面白そうではないか!流石はエイブラムス!

 で、特筆すべきはシェルターの主ハワード役のジョン・グッドマン!久しぶりに見たけど、いやぁ~この人やっぱ大好きだなぁ~・・・・最近では『モンスターズ・インク』シリーズ(01年~)の“サリー”はじめアニメ声優のイメージが強いかもしれないけど、僕ら世代(40代)には『赤ちゃん泥棒』(87年)や『バートン・フィンク』(91年)、『未来は今』(94年)、『ビッグ・リボウスキ』(98年)、『オー・ブラザー!』(00年)とかのコーエン兄弟映画の常連だった90年代のイメージが未だ根強く残っている名優だ(あと『フリントストーン/モダン石器時代』(94年)とか 笑)。善人なのか悪人なのか全く分からないキャラは、正に“怪演”という言葉に相応しく、3人しかいない登場人物を支える圧倒的な存在感を放っていて本作一番見所となっていると思う。あと、主演ミシェル役のメアリー・エリザベス・ウィンステッド。何処かで見たよなぁ~と思って調べてみると『ダイ・ハード 4.0』(07年)、『ダイ・ハード/ラストデイ』(13年)でジョン・マクレーン=ブルース・ウィリスの娘ルーシーだったのか。それ以外にも結構沢山の映画に出ていて、しかも僕は彼女の出演映画の半分以上をしっかり観ていたことに驚いた(笑)。

 「大傑作」か「駄作」か?もしかしたら、人によって両極端に好き嫌いが分かれる映画かもしれない。効果音がやたらデカくてたまにビクッ!となる自分にいちいちイラッとしてしまうのはまぁ自分自身の問題だとして、少なくとも僕にとってはメチャクチャ面白い大傑作であった(中盤のグダグダ感は否めないとしても後半の手に汗握る緊張感の高さは半端じゃない!)。で、なるだけ前情報無しで観に行くことを強くオススメしたい。特に「予告編」は絶対に観ないほうが良い!(笑)初期の「密室バージョン」はM・ナイト・シャマラン作並に謎だらけで最高だったのだけど、公開直前の予告編は酷い。何故そこまで見せてしまったのか・・・・予告編としては絶対に失敗だと思うのだが。

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