ゆずの葉ゆれて

 2020年に鹿児島で行われる国民体育大会へのマラソン出場を夢見る“かけっこ”大好きな小学4年生の風間 武は、どうしても勝てないライバルの親友がいていつも2着でゴール・・・・クラスメイトの女の子から応援されるもどうにも自信が持てないのだった。そんなある日、じいちゃんが亡くなってしまう。この“じいちゃん”ってのは、正確には隣に住む老夫妻で、親戚では無いけれど幼い頃から本当の家族のように暮らしてきた“親類”なのだ。が、最近じいちゃんが寝たきりになり、それを見るのがなんだか怖くて悲しくて足が遠のいて・・・・結局そのまま死んでしまった“じいちゃん”はきっと僕を怒っているに違いないと落ち込んでいた時に、古臭い格好をした見知らぬ少年が「一緒に遊ぼう」と現れる。「テレビゲームしよう」という武に「ゲームは苦手だから、かけっこしよう」とか「相撲とろう」とか「宝探ししよう」とか言う謎の少年。まぁ、よっぽど勘のにぶい人でなければこの少年の正体はすぐに見当が付くとして・・・・。一方“じいちゃん”のお葬式では、福岡や大阪に嫁いだ娘たちも集まり久しぶりの家族の会話が。長らく寝たきりの“じいちゃん”の看病をしていた“ばあちゃん”に「ある意味、看病生活から開放されたんだからこれからは楽して生きて。大変だったね」と気遣う家族に対し「私は何ひとつ大変な思いはしていない。大変だったのはお父さんなのよ」と、亡き“じいちゃん”の知られざる過去を語り出す・・・・。原作は、佐々木ひとみの椋鳩十児童文学賞受賞作品「ぼくとあいつのラストラン」。“じいちゃん”のお通夜からお葬式までの約2日間の物語だ。

 鹿児島で活躍する“上町クローズライン”という劇団をやっている先輩から「映画のエキストラ出ない?」と、僕の自宅が撮影場所から近いからという理由で声を掛けられたのは去年の夏前くらいだったろうか。子供の頃から大の映画好きだったけれど、その“映画”というメディアに自身が出られる機会は初めてで、二つ返事で「行きます!」と答えてみた。のだけど、他には誰一人知った人はいないし、人見知りの僕は不安いっぱいで午前11時に指定された現場に着いたのだった。「ほら~!やっぱり一人ぼっち!コレがイヤなんだよな~!」と心の中で思うも、意外にも色んな人が次々と声掛けてくれて「なんて温かい現場なのだ」と感動したのが第一印象だった。僕の役割は“回想シーン”に出てくる昭和45年を舞台にした旅館のスタッフ。鹿児島駅前にある旅館の娘さんが駆け落ちして飛び出し、それを追いかける~という旅館の番頭(DJポッキーさん)の部下の役だ。一緒に演じたのが鹿児島出身の俳優、田上晃吉さん。鹿児島ユナイテッドFC主将のお兄さんで「世にも奇妙な物語」や「無痛~診える眼~」などにも出てる俳優さんだと失礼ながら後から知ったので「サイン貰っとけば良かった」と後悔している。ほぼ半日間の待ち時間ずっと一緒にいたのに・・・・。実際の出演シーンはトータル5秒ほどだろうか。そのたった数秒のシーンの為に僕らは約半日を費やし、道にレールを作ってカメラをまわし、数十名の通行人(エキストラ)が動き、更には用意してもらった昭和風の衣装の胸ポケットにミンティアを入れていたのを「昭和にそれは無いですから!」と怒られ・・・・「やっぱ映画って凄いなぁ~」と改めて“映画好き”が深まったのだった。コレを機に「スターウォーズ」のエピソード9か10辺りから声が掛かってきたらどうしよう?と、今からちょっと緊張している。

 冗談はさておき、全編鹿児島(喜入メイン)ロケってことで、特に鹿児島県民には是非とも観て欲しい一本。08年の『チェスト!』とか13年の『六月燈の三姉妹』とか鹿児島を舞台にした名作映画は幾つもあるけれど、本作の最大のポイントはココ鹿児島を“懐かしい故郷”の田舎町(勿論良い意味で)として描いているところだと思う。南国の穏やかな田舎町の良さってのが一つ一つの「画」として丁寧に切り取られているので、きっと他県(特に都会)で暮らしている鹿児島生まれの人にはたまらない94分間じゃないだろうか。しかも登場人物全員が鹿児島弁だし。鹿児島生まれ・育ちの人たちはDVDが出たら一家に一枚だろう。

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