ジェイソン・ボーン

 「ジェイソン・ボーン」シリーズ第5作目となる最新作、その名も『ジェイソン・ボーン』!コレは良い!何が良いって、今まで『ボーン・アイデンティティ』とか『ボーン・スプレマシー』、『ボーン・アルティメイタム』という日本人にとってはやたらと言い難い・・・というかパソコンで入力した時に一度声に出してチェックしたくなるような書き難いタイトルばかりだったため、「こういう映画こそ邦題が必要なんじゃないか?」「2 とか 3 じゃダメなのか?」「どれが何作目なのか分からない」「実は単語の意味が分からない」といった声が(僕の中で)殺到していたので、ようやくこの問題にも終止符が打てたのだ(僕の中で)。と同時に、5作目にして原点回帰的なタイトルを付けてくる辺りに製作者陣の並々ならぬ覚悟と自信が窺い知れるし、評判通り「シリーズ最高傑作」というのも頷ける大傑作!

 何故自分が命を狙われるのか?っていうか、自分は一体誰なのか?・・・・一切の記憶を失っていたジェイソン・ボーン。しかし彼は次々と降り掛かる絶体絶命の危機にも何故か身体が反応しその度に乗り越えていく。何故にオレはこんなに強いのか?何故にオレはこんな知識を身につけているのか?自分の正体を探すために戦い続ける!という、もうこのプロットだけで俄然面白そうな“アイディア勝ち”的映画の主演にマット・デイモン!関係者にとっては完全に勝ち戦だっただろう。実際にこのシリーズは世界的に大ヒットを記録し、主演のマット・デイモンにとっても自身の代表作となったのだから。原作となったのはロバート・ラドラムの「ジェイソン・ボーン」三部作。80年に発刊された第一作目の「暗殺者」が『ボーン・アイデンティティ』(02年 ダグ・リーマン監督)として映画化、続く第二作「殺戮のオデッセイ」(86年 発刊)が『ボーン・スプレマシー』(04年 ポール・グリーングラス監督)、第三作目「最後の暗殺者」(89年 発刊)が『ボーン・アルティメイタム』(07年 ポール・グリーングラス監督)となったワケだが、残念ながら01年に死去。で、彼の没後はエリック・ヴァン・ラストベーダーがその原作を引き継ぎ、16年現在までなんと10作もの続編がリリースされているのだけど、興味深いのはこっからだ。ボーン・シリーズは順調に映画化&大ヒットが進み、遂にエリック版の第一作目でシリーズとしては四作目となる「ボーン・レガシー」(04年 発刊)が順番的にいよいよ映画化!という時、前二作で監督を務めたポール・グリーングラスが「脚本が気に入らない(面白くない)」という理由で降板。それに伴い主演のマット・デイモンが「彼無しでこのシリーズを撮ることはありえない」と出演を断ったために、急遽、ジェレミー・レナーを主演にスピンオフ映画として製作されたのが『ボーン・レガシー』(12年)なのだ。「既に動き出していた企画を頓挫させるワケにはいかない」とボーン・シリーズ全作で脚本に関わっていたトニー・ギルロイが引き継ぎ、脚本と監督までも兼任して完成させた力作で、だから原作とタイトルこそ同じだけど中身は全く別モノ。原作者のエリック・ヴァン・ラストベーダーにとってはさぞかし屈辱的だっただろう。そして、遂にポール・グリーングラス監督&マット・デイモンで新作が創られたってことは、今度こそ名誉挽回か~!・・・・と思いきや、本作『ジェイソン・ボーン』はエリックの原作とは全く無関係のオリジナルストーリーなのだそう。ま、これだけ「ジェイソン・ボーン」映画が有名になったにも関わらずエリックの原作は全然話題にもならないのを考えると、結論としてそれはホントに面白くなかったのだろうな。仕方無い。

 自分がCIAの“トレッドストーン作戦”によって生み出された暗殺者だという記憶を取り戻し、彼なりの復讐を遂げた後に消息を絶ってから数年後。CIAの前に再びジェイソン・ボーンが現れる!彼の目的は一体何なのか?そして隠されていた悲しくも切ない過去とは?物語は更に深みを増すも視覚で楽しむアクションを邪魔しない程度に簡潔明瞭で、とにかく楽しめる2時間強!ポール・グリーングラスのドキュメンタリーのような映像は相変わらずキレッキレで、エンドロールが流れてきてようやく、ずっと肩に力に入っていたことに気付いたほど一瞬も油断できない緊張感の高さは凄い。シリーズの魅力となっている「心理戦」「情報力戦」「銃撃戦」「肉弾戦」「カーチェイス」などが全てアップグレードされて詰まっている極上のアクション映画だ(特にカーチェイスなんて今まで飽きるほど色んな映画で観てきたけど、ラスト、ラスベガスでのカーチェイス・シーンの破壊力はハンパなかった!)。

 先述した経緯で降板したポール・グリーングラス監督と主演マット・デイモンのコンビで復活した本作。マット・デイモンについては敢えて書くまでもないだろうが、監督のポール・グリーングラスは、72年にアイルランドで起きた“血の日曜日事件”を扱った『ブラディ・サンデー』(02年)や、01年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロでハイジャックされた4機のうちの1機“ユナイテッド航空93便”を描いた『ユナイテッド93』(06年)などのノンフィクション映画に定評にある監督で、「ボーン・シリーズ」でも(一流アクション映画にも関わらず)手持ちカメラの映像を駆使したドキュメンタリーのような作風で他のアクション映画と一線を画した立役者。正にシリーズ最高傑作!「ジェイソン・ボーン」ファンはたまらない一本だと思う。

 流れ的には酷評にも思える前作のジェレミー・レナー主演『ボーン・レガシー』だけど、僕個人的には実はシリーズで一番好きな作品だったりする。ジェレミー・レナー扮するアーロン・クロスを主人公に描いた物語も既に続編が控えているというので、本編の「ボーン・シリーズ」とクロスオーバーする日も近いのだろう。なるほど、だから新作にはアーロン・クロスは出てこないのか。もしかすると今後「アベンジャーズ・プロジェクト」並の超大作に発展するのかもしれない『ジェイソン・ボーン』。必見です!

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