ガール・オン・ザ・トレイン

 ほんの3~4年前まではそんなこと一度もなかったのだけど、最近飲み過ぎて記憶を無くすことがある。しかも酒の量に比例して段々と飲む前にまで遡って記憶が無くなっていくから質が悪い。ただ、昔から飲みグセだけは悪くない自信はあって、飲めば飲むほどに楽しくなるので人様に絡んだり迷惑を掛けたりすることなどは絶対にありえないと思っていたのだけど、去年、ある飲み会の翌日に「昨夜は大丈夫だった?」と一緒に飲んだ知人から電話があった。「何が?」と答えると「あいつとケンカしてたじゃないか」と・・・・遂にやってしまったみたいだ。それからは飲み過ぎる(記憶がなくなる)前に帰るようにしている。途中退席することでその場がいくらシラけようとも、その後に起こるかもしれない悲劇を考えればまだマシだ。

 2年前に離婚した夫にいまだ未練を持ち傷心した日々を送るレイチェル。彼女は、再婚相手との間に子供もできている元夫のFacebookをこまめにチェックし通勤電車の中から見える“かつて自分らが住んでいた家”を毎日日課のように眺めているイタい感じの女性だ。コレは誰が見てもつらい。この導入部分で我々観客は主人公レイチェルに「同情」するか「引く」かの選択を無意識に決断させられている(どちらにせよ強制的に感情移入させられている)ところが、まずこの映画の怖いところだと思う。で、そんな日々の中で、彼女はその二軒隣に絵に描いたように幸せそうな夫婦を見つけるのだ。自分が・・・というか誰もが理想としている「愛」をそのまま具現化したような理想な夫婦を。そこから彼女の日課は“かつての家”ではなく二軒隣の“理想の夫婦”を眺めることに。で、いつものように車窓から理想夫婦の家を眺めていると偶然にも“理想妻”の不倫現場を目撃し、気になって仕方のないレイチェルは思わずその駅で下車してしまう。下車して何をしようというのか?ちょうど時を同じくしてその“理想妻”=メガンが失踪。近隣での目撃証言からレイチェルが疑われてしまい、彼女は自身の疑惑を晴らすためにメガンの浮気相手を探すことに・・・・。決してややこしい人間関係ではないし登場人物も5~6人くらいしか出てこないにも関わらず冒頭10分くらい「誰と誰がどうなっているのか?」少々困惑してしまったけど(コレは映画の作りの問題なのか?)そこを理解したら後はぐいぐい物語に惹き込まれる。こちらの予想を軽く超える展開と、予想した頭がまだ回らないうちにそれは解決し、また新たな謎が生まれてくる・・・・いやぁ~、面白かった。まずこのストーリー(物語)が凄い!なにせ原作は、アメリカで21週No,1&77週ランクインし、イギリスでも30週No,1&66週連続ランクインをするなど世界45カ国で空前のベストセラーとなったポーラ・ホーキンズの同名小説なのだ。いやむしろ、この大傑作ミステリーが遂に映画化!と謳った方がいいのだろうか。っていうか、冒頭の「飲み過ぎて記憶をなくす~」の話は何だったのだ?と思うかもしれないが、ま、映画を観れば分かって貰えるだろう。

 主演のレイチェルには06年『プラダを着た悪魔』で一躍有名になったエミリー・ブラント。最近ではブルース・ウィリスとジョセフ・ゴードンの『LOOPER ルーパー』(13年)やトム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14年)、メリル・ストリープの『イントゥ・ザ・ウッズ』(15年)に、ベニチオ・デル・トロの『ボーダーライン』(16年)、クリス・ヘムズワースとシャーリーズ・セロンの『スノーホワイト』(16年)などなどのヒット作で準主役級を演じていて「いつブレイクするのか?」と思っていたけれど、遂に主演!・・・・が、よくよく考えてみると『ボーダーライン』では既に主演をしていたのだな。にも関わらず何となく地味な女優像がつきまとうのは彼女がこういうポジション(イメージ)を全うする俳優なのだろう。で、離婚した夫の再婚相手アナに『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(15年)でヒロインを演じたレベッカ・ファーガソン。そして失踪する“理想妻”メガンにヘイリー・ベネット。彼女はちょうど今公開中の『マグニフィセント・セブン』(17年)でも魅力的なヒロインを演じていて、個人的には今後(遅咲きながら)絶対にブレイクするであろう一押し女優だ。この3人の“女性”がキモになって展開する物凄くスリリングなサスペンスストーリー。作風的には14年の『ゴーン・ガール』に似ているけど、こっちの方が断然面白かった。ココ鹿児島ではテンパラのみの上映で多分あまり長くはやらないと思うので是非ともお見逃しなく!

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