WE ARE X

 ディズニー初となるポリネシア系の女の子を主人公にした『モアナと伝説の海』。ウクレレが奏でるハワイアン音楽(中でも“百貫デブ”=イズラエル・カマカヴィヴォオレ)が大好きで、しかもそのサントラをミュージカル界での大御所リン=マニュエル・ミランダがプロデュースすると知って速攻で予約してみた。もしかしたら多分、日本で一番最初に予約注文したんじゃないか?と思うくらい。で、注文した事すら忘れた頃に届いた一枚のCD・・・・イメージしてた音楽と全然違うじゃないか!ジャック・ジョンソンが手掛けた「おさるのジョージ」のあんな感じじゃなかったのか?!あれのミランダ:ヴァージョンではないのか?!・・・・っていうか「ポリネシアってハワイだよね?」と、恥ずかしながらその根本から疑問に思い改めて調べてみたら、ハワイとイースター島とニュージーランドのトライアングル地帯なのだな。だから音楽性も違うのだろうか?何と言ってもディズニーのサントラだし、てっきり“世界最高峰ウクレレバリバリハワイアンミュージック”だと思っていたのだけどコレじゃ『アナと雪の女王』のサントラの延長じゃないか。ま、今のディズニー音楽がこの方向性なのだということを知れただけでもヨシとすることにしよう、と思う。

 毎月2本の新作映画を紹介しているココ“Go to Theaters”で、今回は『モアナと伝説の海』か『We Are X』のどちらかを書かなければいけなく、僕は迷うこと無く『モアナ~』を選んだ。先述したエピソードもあったし、何より“X JAPAN”というバンドを全然知らなかったから。『We Are X』は、89年にデビューし97年に解散(そして07年に再結成)したロックバンドのドキュメンタリー映画だ。再結成する前の活動期間は僕が17歳から25歳までの間で、ちょうど夢中になってバンドをやっていた頃なのだけど何故だか“X”は全くスルーだった。思うに、“X”といえばビジュアル系メタルバンドのイメージが強すぎて、自分自身がやっているバンドや好きなバンド(邦楽ではブルーハーツやジュンスカが大好きだった)とは程遠かったので触れずにきたのだと思う。かろうじて知っている曲は「紅」くらいだ。そんな僕が『We Are X』を語れるワケがないじゃないか。っていうか、語ってはいけないだろう。

 が、実際に映画を観てみると、むしろそんな僕こそが取り上げるべきなんじゃないかと。コレは決して“X JAPAN”ファンの為だけの映画ではないし、そうなるにはあまりにも勿体無いから。映画は14年のニューヨーク・マジソン・スクエア・ガーデンでのコンサートの4日前から当日までのドキュメンタリーとして描かれるのだけど、その合間に“X JAPAN”の結成まで(っていうか、YOSHIKIとToshiが出会う幼稚園時代まで)遡って、その映像とコメントで構成されている。ただ、時間軸ではなくYOSHIKIを中心にメンバーごとにパートが分かれて語られるので“X JAPAN”を知らない僕にとっては時系列が全く分からず少し混乱してしまったが、とにかく物凄く濃厚な人間ドラマであった。その辺の“映画”なんかよりもずっと。

 幼少時代、父親の自殺により心に深い傷を負ってしまうYOSHIKI。「それまでクラシック音楽しか知らなかったから、この憤りをどうやって解消したらいいのか分からなかった」と、窓や物を壊す代わりにドラムを叩くことに。そしてToshi(ヴォーカル)と運命的な出会いを果たしバンドを結成。瞬く間にバンドは大成功するも、Toshiの洗脳、脱退。更にギターリスト“hide”とベーシスト“TAIJI”の相次ぐ自殺(謎の死)。全編に渡って全てが“見せ場”というくらいの壮絶な人間ドラマだ。作曲の場面ではYOSHIKIが楽譜を見せながら「ココのギターはこんな風に~」とイメージを歌って聴かせるのだが、そこでメンバーが「この辺が凄いよね」と関心するシーンに“X”というバンドはYOSHIKIの才能なのだなと思った。そしてそれを具現化する為にこのメンバーが必要なのだろうと。特にベースのTAIJI!凄い!こんなベーシストが日本にもいたのか・・・っていうか“X”のベースってこんなに凄かったのか!と改めて“X JAPAN”を聴いてみようと思った。で、初期の映像ではそのTAIJIがYOSHIKIのドラム演奏に文句を言ったり注文するシーンもあって、演奏面ではTAIJIが中心なのだろうなと思っていたのだけど、まさか!そのTAIJIをクビにするYOSHIKI。その理由を訊くも「プライベートなことなんで、それは言えない」と。「今でも言えませんか?」「・・・・やっぱり言えません」何があったのか?ネットで調べたら「ラウドネスのオーディションを受けたから」との説が有力らしいけど、果たしてどうなのだろうか?そして、念願のアメリカ進出を果たすもヴォーカルToshiの発音の問題でなかなか日の目を見ず、「YOSHIKIが求めるレベルに自分が応えられない」「自分がバンドの足を引っ張っている」と思い悩んでいるToshiにそっと近づいてくる洗脳団体。解散Live直前、「今のあいつは普通じゃないから何か変なことを言い出すんじゃないか」と心配するYOSHIKIとhide。で、合図をしたら(Toshiが変なことを言い出したら)すぐのマイクの電源を切るようPAに指示を出していたという。やがてバンドに復帰し再結成をしたいと持ち掛けてくるToshiだが、その裏にはやはり“X”=金を狙った洗脳団体がいるワケだ。「そんな気もしてた」と、全てを分かった上で「どんな状況でも受け入れよう」「バンドが再結成することよりも幼馴染の友人が帰ってきてくれることが嬉しい」とToshiの復帰を喜ぶYOSHIKI。先述した通り、劇中流れる音楽で実際に僕が知っていたのは「紅」のみだったけど、どのシーンに流れる音楽もとても美しく素晴らしかった。“X JAPAN”って高速メタルのイメージしかなかったのだけど、スローテンポも多く、とにかくメロディアスな曲ばかりなのだな。天皇陛下への奉祝曲までYOSHIKIが手掛けていたってのは驚いた。

 因みにこの映画はイギリス映画(邦画ではない)で、世界各地で上映されているようだけど「しかし何故に今“X JAPAN”なのだ?」と正直疑問に思ってしまった。が、つい先日(日本時間で3月5日)ロンドンのウェンブリー・アリーナで1万2,000人公演を成功させたというニュースを聞いて、なるほど、僕はてっきり“X JAPAN”は随分前に活躍していた伝説的バンドなのだと勝手に思っていたけれど、正に「今」なのだな。14年のニューヨーク・マジソン・スクエア・ガーデンに続き今回のウェンブリー・アリーナ!両方共に「ロックの殿堂」と呼ばれている場所での成功、いわゆる欧米制覇というのはアジアのアーティストとしては史上初なのだそう。日本で成功するも、更なる上を、世界を目指した日本のバンド“X JAPAN”=YOSHIKI。今それが実現しているのだ。ガンズ・アンド・ローゼスのギター“リチャード・フォータス”が「X JAPANはエアロスミスやオレらを超えた」と言っていたり、KISSの“ジーン・シモンズ”が「X JAPANが英語圏内のバンドだったら間違いなく世界一のロックバンドになっている」とか、ビートルズのプロデューサーである“ジョージ・マーティン”は「彼らには物凄い才能がある」と断言。凄いなぁ~・・・・いつの間にこんなことになっていたのだ?

 劇中、色んな人が「彼らの音楽に救われた」とか「“X”がいなければとっくに死んでた」とか「愛する人の死に打ちのめされている時、“X”がずっと支えてくれた」とか言っていて、正直「こんな激しい音楽が?」と疑問に思っていたけれど、ようやく今その理由が分かる気がしてきた。父親の自殺からメンバー2人の自殺・・・・常に絶望感を抱えながら死に急いでいるような行動をとるYOSHIKIに対し「危うい人だな」と思っていたけれど、劇中YOSHIKIはこう語るのだ「自殺するのはあまりにも自分勝手だ。自分だけ逃げて、周りに迷惑を掛けて悲しませるだけ。だから僕はどうやって自殺せずに死ねるか?そればかり考えている」と。そんな彼が創る音楽ってのは感情的でとても激しいけれど、同時に傷付いた人にそっと寄り添うような、そんな音楽なのだろう。

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