ブルーハーツが聴こえる

 

「趣味は何?」と訊かれたら僕は迷わず「音楽と映画と本」と答える。小学校時代からずっとだ。よく履歴書とかに書いてあるパターンだし、合コンとかで答えたら「つまんねぇ~」と思われるだろう。何ともベタな返答だと自分でも思うのだけど、コレは本当にガチで好きなのだから仕方ない。本は毎日寝る前の日課として大体週に一冊は読んでいるし、映画はこうやって趣味を超えてちょっとしたお仕事にまで発展させてもらっている。で、音楽に関してはいい歳した今でもずっと現役でバンドをやっているほどで。むしろ僕から言わせたら簡単に「趣味は映画と音楽です」とか言ってもらいたくないくらいなのだ。映画と本は取り敢えず置いといて、僕にとっての“音楽”についての話しをちょっとさせてもらいたい。

前にも何かで書いたことがあるのだけど、僕にとってのルーツはビートルズで(コレもまたベタか?)小学生の頃に親父が持っていた数枚のビートルズのレコードにハマり、家に揃っていないアルバムは小学5年生までには全部揃えて聴き出したのが始まりだ。当時のお年玉等のお小遣いは全部ビートルズかプラモデルに費やしていたはず。思えば、ジョン・レノンが殺されたのが1980年なので、72年生まれの僕が8才の時。きっと世の中はこの話題で持ち切りで、それを機に僕はビートルズというバンドを知ったのかもしれない。そんな流れで僕はすっかり音楽にハマり“ベストヒットUSA”とか“MTV”とかを見漁るのだけど、高校1年生くらいの頃までは洋楽しか聴いたことがなく邦楽に関しては全く分からなかった・・・っていうか、邦楽に関しては「洋楽に比べてレベルの低い音楽」くらいに思っていて全く興味が無かったのが本音だったかもしれない。

そんな時、友人の部屋で初めてブルーハーツを聴いた時の衝撃は相当なものだった。決して巧いとは言えないシンプルなギターのイントロ(でも誰にでも出すことはできない“音”だと気付くのはもう少し後だが)に続き「僕の話しを聞いてくれ、笑い飛ばしてもいいから~」というしゃがれた言葉が僕の心の中に何のフィルターも通さずズドンと入ってきたのを今でも鮮明に思い出すことができる。何なのだこれは?その日、僕は友人の部屋でブルハの2枚のアルバムを繰り返し繰り返し何時間も聴き、その週末には自分で買ったアルバムを自身の部屋でずっと聴いていた。あまりにも強いメッセージ性と暴力的な声に(比喩ではなく本当に)魂を揺さぶられ「コレはオレのことを歌っているのか?」(思春期の誰もが思ったであろう)と震えながら。それまで洋楽しか聴いていなかったので、親とかにその歌詞が筒抜けになるが凄く恥ずかしくて部屋で聴く時はヘッドホンで、しかもその音がもれないようにヴォリュームを下げて我慢して聴いていたのを思い出す。何故だったのか今では不思議だけど。で、44歳になった今でもブルハのコピ―バンドをやっているくらいなので「僕はブルーハーツが大好きです」と公言してもきっとブルハ・ファンから怒られることはないじゃないかという自信はある。

 本作『ブルーハーツが聴こえる』はその名の通り「ハンマー(48億のブルース)」「人にやさしく」「ラブレター」「少年の歌」「情熱の薔薇」「1001のバイオリン」といった6曲の名曲をテーマに、それぞれの6人の監督と俳優陣が織りなすオムニバス映画だ。「ブルハって、初期の3作品(「THE BLUE HEARTS」「YOUNG AND PRETTY」「TRAIN-TRAIN」)が全てだよね」とかよく言われるけれど、僕個人的には一番好きなアルバムは実質ラストアルバムである7枚目の「DUG OUT」で、一番好きな曲もその収録曲「手紙」なので後期の曲が少ないのはちょっと不満なのだけど、とにかく、間違いなくブルハの中の名曲中の名曲揃いだろう。取り敢えずこの6作品を超簡単に紹介させてもらいたい。

 「ハンマー(48億のブルース)」 監督:飯塚健(『荒川アンダー・ザ・ブリッジ THE MOVIE』12年、『大人ドロップ』14年、など) 出演:尾野真千子、角田晃広、ほか。 あらすじ:同棲している彼氏の浮気現場を目撃してしまった一希。意気消沈し仕事も手につかなくなった彼女に職場の仲間も心配し、やがてみんなでとある計画を立てることに・・・・

 「人にやさしく」 監督・下山天(『SHINOBI』05年、『キカイダー REBOOT』14年、など) 出演:市原隼人、高橋メアリージュン、西村雅彦、ほか。 あらすじ:舞台は遠い未来。囚人を乗せた宇宙船が刑務所惑星を目指す途中で流星群に見舞われ故障してしまう。制御不能となった宇宙船内で凶悪な囚人の暴動が起こってしまい・・・・

 「ラブレター」 監督:井口昇(『富江 アンリミテッド』11年、『ヌイグルマーZ』14年、など) 出演:斉藤工、要潤、山本舞香、ほか。 あらすじ:脚本家の大輔は自室の“トイレ”から高校時代へとタイムスリップをする道を見つける。そこで、死んだはずの片思いの女子・彩乃と再会。何とか死なせまいと頑張るのだが・・・・

 「少年の歌」 監督:清水崇(『呪怨』シリーズ 03年~、『魔女の宅急便』14年、など) 出演:優香、新井浩文、ほか。 あらすじ:舞台は1987年のとある団地。母子家庭に住む小学4年生の“健”は美人な母親に言い寄ってくる男がどうにも気に入らない。そして誕生日の日、大好きなTVヒーロー「ボンバー仮面」に自身を重ねてデパートの屋上で行われるヒーローショーに向かう・・・・

 「ジョウネツノバラ」 監督:工藤伸一(CMやMVの監督) 出演:永瀬正敏、水原希子、ほか。 あらすじ:最愛の女性を亡くしてしまった永瀬は、その現実と向き合えずこっそり彼女の遺体を車椅子に乗せて持ち帰って一緒に住むことに・・・・

 「1001のバイオリン」 監督:季相日(『フラガール』06年、『怒り』16年、など) 出演:豊川悦司、小池栄子、三浦貴大、ほか。 あらすじ:福島の原子力発電所で働いていた達也は震災後に地元を離れ東京に。それから3年後、新しい地に馴染もうと頑張る家族に反して彼は仕事にも就かずその憂鬱は深まるばかり。そして突然「福島の家に置き去りにしてきた愛犬タロウを探しに行く」と立ち入り禁止区域に侵入し自宅へと向かう・・・・

 どうだろう、この超豪華キャスト&スタッフ!コレが面白くないワケがないじゃないか!オムニバスということでそれぞれの作品は30分足らずの短編ではあるものの、それが6本あるので全編では2時間半に仕上がっていて観応えは充分だ。しかし、それぞれ素晴らしい作品が完成するも6作品の制作会社が全て異なることで何かと面倒くさい事態が発生したそうで・・・。それにより資金面的に劇場公開まで難しくなり一時は頓挫してしまうかと懸念されたものの、なんと(5,400円でエンドロールに名前がのる)クラウドファンディングにより多額の資金が集まり今回の劇場公開にまで至ったとのこと。正にブルハ・ファンの熱意によって劇場公開が実現した貴重な一本!ということなのだろう。鹿児島では「ミッテ10」のみの上映。最近『ハード・コア』や『T2 トレイン・スポッティング』など単館系の中でも超話題作を持ってくるミッテ!今年はミッテが熱い年になりそうだ。ブルハ・ファンは勿論、そうでない方も充分に楽しめる(っていうか、あまり楽曲と関係無かったりするし 笑)エンタメ作。個人的には「ジョウネツノバラ」と「1001のバイオリン」がオススメ!(特に「1001のバイオリン」!・・・心に刺さります)是非とも本編の余韻に浸りながら最後の「青空」までしっかり聴いてから席を立って下さい。

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