新感染 ファイナル・エクスプレス

 去年の夏に韓国で公開されるや否や「メチャクチャ面白い!」と評判になり、ハリウッドのメジャースタジオの間でもすぐにリメイク権の争奪戦になった話題作が本作『新感染 ファイナル・エクスプレス』だ。ネットなどのレビューを見ても酷評を探すのが難しい(っていうか、ひとつも見つけられなかった)ほど、一般目線からもプロ目線からも「とんでもなく面白い!」と大絶賛されていたので僕個人的にも物凄く楽しみにしていたのだが、ようやくココ日本でも公開!いやぁ~、前評判に伴う期待値の高さにも負けること無く本当に「とんでもなく」面白かった!

 で、これほどの話題作ってどんな映画かというと基本はベッタベタの“ゾンビ映画”なのだ。「韓国映画初のゾンビ映画!」と謳われていたけれど、まぁ、実際には今まで全く無かったワケではないにしても、韓国映画としての“ゾンビ”ものがメジャーではなかったことは間違いないだろう。加えて、そのゾンビ映画が『釜山行き』というシンプルで地味なタイトルだったので尚更興味をそそられたのだが、ココ日本での邦題がなんと『新感染』!・・・・ダジャレかよ!と思いっきり残念だったのは否めない。が、それはあくまで邦題を決めた誰かのせいであって映画自体の面白さには全く関係ないのだが・・・・

 物語としては、主人公のソグ(コン・ユ)が娘のスアン(キム・スアン)をソウル発釜山着の特急列車に乗せ、同行するところから始まる。娘の誕生日に別居している嫁に会わすためだ。で、その列車の中にゾンビ登場!もうこの設定が物凄い。列車の車両を想像して頂きたい。列車の中にうようよゾンビがいるとして、通路の両側に座席があるので、狭い道を一体一体倒して進まなければいけないし、後ろからもゾンビがきたらその時点でアウトだ。更には列車の特徴としての連結部分。車両を繋ぐ連結部分ごとにドアがあるのだけど、このドアを開けるすべをゾンビは知らないという抜群のゲーム性!この連結部分にあるトイレにず~と隠れていることもひとつの作戦だろうし、勿論ゾンビを倒していくのも生存の手段だろう。

 去年『アイアムアヒーロー』を観た時「日本のゾンビ技術、すげぇ~!」と、いや実際コレはゾンビ映画としては一気に世界トップレベルだろう、と思ったのだけど、この『新感染』を観たら更にその上をいっていた感があった。“ゾンビ”に馴染みがなかっただけにアジア圏内のゾンビ映画は斬新で革新的に見えるのかもしれない。ダニー・ボイルの『28日後・・・』(03年)で走るゾンビが登場して以来、それまでジョージ・A・ロメロが定説してきた「ゾンビは死後硬直のため早く動けない」という概念を覆し様々な映画で俊敏になってきたゾンビ。その集大成とも云えるブラッド・ピットの『ワールド・ウォー Z』(13年)は往年のゾンビファンからは「もはやアレはゾンビではない」と賛否両論だったワケだが、本作『新感染~』に至っては、ただ早いだけじゃなく、関節がありえない方向に折れながらまるでダンスをするかのようなリズミカルな動きが加わっていて更に絶望感と不気味さがUP!

 そして、本作の最大の魅力はなんといってもそのドラマ性にあるのだ。主人公と娘、妊娠中の妻とその夫、高校野球のチーム、高齢者の姉妹、列車の運転手、交通会社の社長、といった登場人物がいちいち個性的で感情移入ができ、いかにも韓国映画ってな感じのヒューマンドラマが泣けるのだな~。なんだったら「アベンジャーズ」シリーズみたく、それぞれの登場人物でひとつのクロスオーバー作品を作っておいて、その集大成としての本作『新感染~』があってもいいほど(笑)。数々のゾンビ映画を観てきた僕にとっては「なるほど、この後こうなるワケね~」と高を括っていると、それらがことごとく裏切られ「そうくるか?!」という意外性も面白かったし、「コレでよくやく終わりか・・・」と思っているところに「えぇ!まだ続くのか!」という絶望感もまた凄かった。ゾンビ映画の基本をしっかり守りつつ、これだけ泣ける映画はなかなか無い。本作は韓国映画の大傑作としてまたひとつその名を刻むのだろう。

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