火花

 芸人を目指すもなかなか芽の出ない徳永は、熱海で行われた花火祭りの余興ステージでやたらとトガった先輩芸人“神谷”と出会う。その才能に憧れた徳永は神谷へ弟子入りを志願すると「俺の伝記を書くこと」を交換条件に受け入れられ、神谷と同棲している真紀を含めた3人で楽しい日々を過ごしていた。ようやく少しづつ知名度を上げていく徳永に対し神谷は一向に売れる気配もなく、やがて二人は疎遠になってしまうのだが、そんなある日、徳永の相方から「結婚を機に芸人を辞める」と言われ自らも引退を決意・・・という、いつか日の目を浴びることを夢見る芸人の10年間に渡る下積み生活を描いた物語が本作『火花』だ。

 現役お笑い芸人である又吉直樹が芥川龍之介賞を受賞したってことで一躍話題になった「火花」。僕は当時、嫌厭して敢えて読まずに避けていたのを覚えている。今思えば何故だろう?と不思議になるのだけど、きっと話題になり過ぎて売れに売れていたからこそ、それをレジに持っていくのに恥ずかしさを覚えたのかもしれない。で、ほとぼり冷めた頃の文庫本が出たタイミングで買って読んだのだけど、文庫化のリリースをチェックし発売日に買ったほどなので実は物凄く気にはなっていたのだと思う。そしてようやく読んでみたのだがしかし、破天荒なオチ(?)的ラストも含め僕は全然面白いと思わなかったのも正直なところで・・・・(短過ぎて読み応えも無いし)。なのだけど、何故だか徳永と神谷が安い居酒屋で“笑い”についてベロベロになるまで語り合うシーンや真紀の部屋に荷物を取りに行くバカバカしくも切ない場面、そして解散ライブのネタなんかをふとした時に思い出し、何度も独りで回想にふけったりしたのもので、やっぱり僕はあの本に夢中になったのかな、とも思う。

 以前にも何度かココで書いたが、僕は読んだ本の映像化作は滅多に観なくて(その逆も然り)前にNetflixで全10話のドラマ化されていたものも勿論観ていないのだけど、今回のこの映画化作は物凄く楽しみだった。なにせ神谷役に大好きな桐谷健太!更には監督が板尾創路!もうこの組合せだけで否が応でも期待値が高まるのだけど、それに加え主演の徳永に菅田将暉、原作は芸人・又吉直樹の芥川龍之介賞受賞作ということで、コレが面白くないワケがなく・・・相当に上がったハードルで観に行ったのだけど、それを軽く超えるくらいの面白さだった。いやホント、個人的には全然原作超えしていて映画化作の方が圧倒的に面白かったと思うほど。やはり俳優陣の力量は相当なもので、桐谷健太と菅田将暉のテンポの良い絡みが本当に自然で心地良く、解散Liveの漫才なんか「なるほど~、こういうシーンになるのか」と泣けて泣けて仕方がなかった(菅田将暉の熱量が半端ない!)そして、エンドロールに流れるビートたけしの名曲「浅草キッド」を二人が歌う主題歌がまた最高!・・・・これだけ書いておきながら、実際の興行成績は微妙な感じなのが残念だが、間違いなくかなりの大傑作だと思う。

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