#174 ミスティック・リバー

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イーストウッドの映画力

坂元 クリント・イーストウッドと云えばあと『ミリオンダラー・ベイビー』 。コレも凄かった!
上木原 アカデミー賞作品賞・監督賞の『ミリオンダラー・ベイビー』 。サクセスストーリーと尊厳死の作品で、前半と後半でこんなに違う作品は観たことがない。昔一度観てもう2度と観たくないと思っていたんだけど改めて観てみたよ。主要3人がメッチャいい演技するんだって。特にヒラリー・スワンクがかなりのガタイで、スパーリングにしては本気すぎる。フランキーがマギーのほう助の依頼で悩み、牧師とのシーンで彼女は死にたがっているけどコッチは助けてやりたいという・・・・「手を貸すと大罪になる」、「生かすことは殺すこと」、この矛盾に葛藤する!そしてマギーに「モ・クシュラ」の意味を教えたモーガン・フリーマンがまたイイんだって!ハットもメッチャ似合うし(笑)。
特に110試合目のシーンが好きだわ~「仕事を変えな・・・・」。あと、あの事故に追いやった女黒人ボクサーがマジ恐えぇ・・・・それと、一番許せんのが怠け者家族!あいつらはマジしんどかった。
坂元 『ミリオンダラー~』 も暫くトラウマになるよね(笑)。
アキサン ところが『ジャージー・ボーイズ』 は観終わった後の気分が爽やかというか何というか。後味悪くないんですよね。元々がミュージカルだったからか、エンドロールがカーテンコールのようで。イーストウッドはここに来てまだ引き出しを増やすのか?と。
「フォー・シーズンズ」って60年代にヒットを飛ばしまくったバンドなんで、メンバーもイーストウッドとほぼ同年代なんですよね。当然、活躍してた頃はイーストウッドも映画の主演が増えだしてた頃でしょうし。きっとイーストウッドも青春時代の気分に戻って作ってたんじゃないかな?って気がしますよね。元がミュージカルでバンドがテーマの映画だからその音楽も随所に流れるんですけど、BGMじゃなくて劇中で必然的に流れるんですよ。この曲を流す必要があるから曲が流れる、あるいは歌う。音楽が自然とそこにあるんですよね。名曲「君の瞳に恋してる」の一連の流れには鳥肌が立ちました。必然ですよね。
上木原 『ジャージー・ボーイズ』 好きなんだよね。60~70年代の音楽が大好きなんで終始に身体でリズムとって観ていた。まずジャケットがイイよね。誰もいない真夜中の街灯の下4人がリズム取りながら歌う姿に惹かれる!『フットルース』とか『ヘアスプレー』はじめ音楽映画マジ大好きなんだよね。
この作品はまるでゲストとしてソコで聴いている感じなんだって!「シェリー」そして最後の「君の瞳に恋してる」・・・・田舎の音楽好きなヤンキーからスターまで上り詰めるサクセスストーリーは観てて飽きず気持ちがイイ!観てる僕らに語りかけながらストーリーが進行するのが新鮮でたまらない!名声も地位もスターダムにのし上がったトコロでメンバーに亀裂が・・・・金銭問題、性格的な問題、家庭崩壊などたまったものが爆発し、そして解散。けど、それでも信じて歌い続ける。友人の借金の肩代わりも完済したところで今度は娘の死。そして時は過ぎ1990年ロックの殿堂入りで再び4人が集まり歌う・・・・エンディングはジャケットでもある街灯の下で若かりし頃の四人が歌いその後キャスト全員で踊るシーン!(涙)
あと、作品通してマフィアのボスのクリストファー・ウォーケンがカッコいいんだって。『トゥルーロマンス』 でのデニス・ホッパーとのシーンの次によかった。あの華麗なステップは歳を感じさせないよね~。当然サントラをDLしたよ。
アキサン あと、観終わってからタモリ倶楽部のオープニング見るとまた新たな感動がありますよね。
坂元 分からん。
上木原 それから『グラン・トリノ』、よかったッスね~!コレ観るまで「グラン・トリノ」って車種知らなかったよ。
坂元 そうなの?オレは勿論知らなかったけど、上木原さんは凄い車マニアじゃん!
上木原 知らなかった。「ランチェロ」は知っていたんだけど、その違いって荷台があるか無いかだけだったとは・・・・。70年代のアメリカンマッスルカ―は昔から好きで、チャレンジャー・カマロ、マスタング、トランザムはパフォーマンスが最高だった!ってウォルト(イーストウッド)はウチの爺ちゃんにソックリだったよ(笑)。
坂元 上木原さん、お父さんは見た目がスタローンにそっくりだよね?で、お爺ちゃんはイーストウッドにそっくりとは!どんな家族だ(笑)。
上木原 窮屈で無愛想で頑固モノ。褒めてるのかけなしてるのか解らない。僕が20代の頃亡くなったんだけど80歳超えてからは穏やかになりよく笑いお茶目になった。戦争を体験した人だけが感じるコトなんだろうね。で、ウォルトは隣にアジアのモン族が引っ越してきてから変わるんだよね。よく笑い交流を深めて仲良くなる。僕もいつの間にかニヤけて観ていたよ。
が!ある日モン族の不良グループによってその穏便な日々が壊される・・・・それまで血の気の多かったウォルトがしでかした同じ過ちを繰り返さないため冷静に慎重に命の選択をするのだけど・・・・。とにかくラストが壮絶だった。考え抜いた末に暴力無しで解決させるウォーリーに涙があふれる。最後の姿はまるで十字架のようだったよね。この、全く自然で嫌味がない脚本はさすがイーストウッドだと思う。余韻はあの『ミリオンダラー・ベイビー』と似てる。
アキサン わりかし最近の『グラン・トリノ』『ミリオンダラー・ベイビー』『ヒア・アフター』なんかを観てて思うのは、作品自体が寡黙なんですよね。「こういうお話があります、皆さんどうですか?」的な。昔、学校の受業でやった道徳の時間やNHKでやってた中学生日記みたいな。問題提起というか作品のテーマを仄めかすというか。余計な事を登場人物に語らせないんですよね。だから説教臭くない。観る方が自由にその作品の訴えたいテーマをつかみ取る。だから僕は人にイーストウッドの映画薦めるときに、具体的に何が良かったか言えないんですよ。『グラン・トリノ』なんかも大好きなんですけど、観たことない人に何て言って薦めたらいいのかわからないんですよ。
坂元 そうそう、凄い分かる。単に「コレは面白かったよ!」とは言えないよね。“面白い”かどうか問われれば、むしろ“不愉快”だもん(笑)。でも間違いなく「物凄い良い映画」だとは断言できる。
アキサン 連作『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』は見応えがありましたね。日米双方が相手側に対して抱いていた思い込みみたいなものが解消されたんじゃないでしょうか。
アメリカは圧倒的な物量作戦で日本に勝利した、と僕もそれまで思ってたんですけど、実際は戦費獲得のために国債をバンバン発行して米国民に買わせてたピーピー状態だったことが描かれてたり。派手なドンパチを描くわけじゃなく、反戦メッセージをプンプン匂わせるだけじゃなく、ただ淡々とあの戦争を日米両サイドから描いているんですよね。
ただ一つ残念なのは『硫黄島からの手紙』で西郷一等兵を演じていた二宮和也。あのセリフというか口調と言うか、そういう演技指導だったのか台本がそうだったのかは知りませんけど、あの現代っ子な演技はもうシンドイ。「もしも嵐の二宮が硫黄島に行ったら」的なものを見せられてる気分で。いやもうファンの方には申し訳ないんですけど。現代が舞台の映画なら良いんでしょうけど・・・・。
坂元 そう言えば、なんか違和感あるヤツが出てたのは覚えてるけどアレは二宮和也だったのか?!(笑)ってことは二宮和也はハリウッド俳優なのだなぁ・・・・なんのコネがあったのだろう?
上木原 映画会社が専属契約してるのか知らないけど、監督×俳優って共演多いよね。「ティム・バートン×ジョニー・デップ」とか「スコセッシ×ディカプリオ」、「タランティーノ×ロドリゲス」、そして「モーガン・フリーマン×イーストウッド」みたいな。
僕のジャンルには「イーストウッド作品」ってのは入って無かったんだけど改めて観れてよかった。イーストウッドの作品はまるで「罪と罰」、「人間が合わせ持つ善悪」を感じる人間ドラマが多いんだよね。鑑賞後、そこからの脚本は観客である僕らに委ねられてるように。
アキサン そういや以前、坂元さんは『マディソン郡の橋』を絶対観ない映画だって言ってたと思うんですけど、今でもやっぱり観てないんですかね?僕もまだ観てないんで今度鑑賞会でもしましょうか。一杯飲みながら。
坂元 是非とも。間違いなく「ただの飲み会」になるだろうけど。

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現在募集中のテーマは『それでも夜は明ける』(13年 スティーヴ・マックィーン監督)です。メール受付〆切は2015年3月31日(火)です。ご意見・ご要望のメールも大歓迎です。

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