#176 それでも夜は明ける

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見逃せない「アカデミー・ノミネート作」

坂元 しかし、この『それでも〜』は近年稀に見る「暗くて重たいアカデミー作品」だよね。こんなに重たい映画がその年のナンバーワンってのもどうかと思うよね・・・・。
アキサン 実際、同年のアカデミー作品賞にノミネートされた作品なんかだと『ゼロ・グラビティ』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『her/世界にひとつの彼女』なんかのほうがスッキリ観れるよね。そして長編アニメ映画賞受賞の『アナと雪の女王』なんかは家族で安心して観られるし。
それでも、このノミネートされた作品の中でこの一本!ってのを選んで、って言われたら、やっぱり僕も『それでも夜は明ける』を選んじゃうかな、って気はしますね。次点は『ゼロ・グラビティ』ですけど。
上木原 オスカーは「希望を信じろ」ってテーマ多い気がするんだけど、確かに中には全くその要素持たない候補もいっぱいあったかもね。
中でも『ゴーンガール』はある意味、大傑作。さすがハズレなし鬼才デヴィッド・フィンチャー!とことん暗い・・・・そして猟奇的でスゴイ(笑)。彼の『ゲーム』『セブン』『ファイト・クラブ』は今でも大好きな映画だ。旦那役は彼の常連俳優ブラピでもイケた感じがするよね。コレって1シーンに平均50テイク撮ったんだってね。そのくらい表情演技がスゴイ!夫ニック、妻エイミーそして警察の3つの視点からストーリーが進み、2時間半もあったけど無駄がなくて見落とせなかった。妻エイミー役のロザムンド・パイクがスタイルよくて透き通った眼をしてホントキレーなのよ・・・・。でも話進むたび夫を追い詰めていく妻の姿がハンパなくてね。伏線ってか脚本が素晴らしく、旦那含め警察からマスコミみんな騙されていく。まあ途中ドジ踏むけどね(笑)。 結婚っていいものばかりじゃないよね(笑)。新婚夫婦は観ない方がイイよ!10年以上は観てもイイかも(笑)。ベン・アフレックは相変わらずアゴから全てがセクシーで、クリスチャン・ベールに負けない“ダークナイト”的なバルクアップボディになっていた。
坂元 09年の作品賞受賞作『ハート・ロッカー』、さっき上木原さんは「爆睡した」って言ってたけど、オレ時にはかなり好きな映画だったなぁ・・・・あの独特の雰囲気は今でもたまに思い出す。なにせ『アバター』を抑えてアカデミー獲ったからね。
アキサン これも極限状態の狂気というか。元夫キャメロンの『アバター』との対決構図が取り沙汰されてましたけど、内容はかなりハード。ほぼ全編CGアニメ映画のような『アバター』に対して『ハート・ロッカー』からは常にキナ臭い砂ぼこりの香りが漂ってて・・・・。そして象徴的なあの防爆スーツ。映画冒頭で「そいつは役に立たない」っていうのを見せつけといて、その後も必ず着用させるという。破天荒な爆弾処理方法で生き抜いてきたジェームズも、国に帰ると沢山の種類のシリアルが並ぶ棚の前でなすすべもなく立ち尽くす。そして再び戦地に。もう狂気ですよね。冒頭で「戦争での昂揚感はときに激しい中毒になる」のテロップ。愛する子供と遊ぶよりもあの砂漠で防爆スーツに包まれている方を選んでしまう。反戦映画なのかプロパガンダなのか分かんない映画でした。
坂元 そう聞くと全く『アメリカン・スナイパー』だね。『アメリカン〜』も今年のアカデミーにノミネートされていたけど、この「ノミネート作品」ってのが何気に見逃せないんだよね。ノミネートされるくらいだから絶対にハズレが無いし、むしろ受賞作よりも好みの映画があったりする。
上木原 一昨年『アルゴ』が受賞した同年にノミネートされてた『ゼロ・ダーク・サーティ』、実はコレ、当時はスルーしていた作品なんだけどかなりリアルで凄かった!まずは冒頭の真っ暗な画面で9.11のテロにあった音声のみの演出がなんとも悲しくてリアルで・・・・。ビン・ラディンが殺害されたのは知っていたけど一体どんな経緯だったのか?やっぱ、『24』みたいにはいかないんだなと(笑)。ケイタイ受信電波を拾い装置を使って特定するという方法で、まさに藁の中で針を探す作業・・・・しかもパキスタン人が多く群がる中!ようやく見つけて喜ぶのも束の間、アジト判っていながらもコレと言って手がかりつかめないままという、アルカイダの方もなかなかスゴイ。場所を特定し衛星で監視するも誰も出てこないし、本当にそこにいるのか?証拠がないまま上層部がゴーサイン出せずにヤキモキしてるところに「100%居る」って、まぁあの主人公女性マヤはすげーわ・・・・。
坂元 ビン・ラディンを追い詰めたのが若い女性捜査官だったって事実に驚くよね。
上木原 坂元さんがこの作品を Go to Theater で「オサムゥ!オサムゥ!」って言ってたのが未だ残ってて・・・・アレ「ウサマ!ウサマ!」でしょ(笑)。
坂元 でも、オレには「オサム!」としか聞こえなかったもん。っていうか、呼んで返事するワケないじゃんねぇ。
上木原 何故に生け捕りにしなかったのか?と思ったんだけど、きっと無理だったんだろうね。あの暗い中で銃撃戦、しかもパキスタン領土、しかもターバン&ヒゲの容姿じゃみんな一緒に見えるし・・・・更にはパキスタン軍追って来るしで、片っ端から射殺するしかなかったんだろう。そして子供や身寄りに聞き、それを持ち帰ってマヤに死体で確認する。押収品にはちゃんとあの例のビデオなんかもあったのだろうか?ビン・ラディンの私物でヤギとのエッチビデオなど押収したって公表していたの思い出した。当時このタイトルがマニアックで笑ったなぁ・・・・きっと彼が死んでも信者が神聖化しないようにしたんだろうけどね。
坂元 もっと言えば、あの死体が本当にビン・ラディンのものだったのか?そこから疑問に思うともう何も信じられなくなるよね・・・・。
上木原 あと、もう20年以上前の作品だけど『ショーシャンクの空に』。アカデミーでは複数ノミネートされながらも『フォレスト・ガンプ』にほとんど持っていかれたんだけど、個人的に大好きな作品だった。こないだ朝ジョグで初めて観たんだけど、あの有名なジャケットって脱獄した直後のシーンだったんだね。
てか、アンディ役のティム・ロビンスってあの『ミスティック・リバー』 で悲惨な目にあった人だよね?冤罪の脱出劇って感じで『プリズン・ブレイク』のマイケルに匹敵する頭脳の持ち主(笑)。決して諦めない姿と脱走劇が愉快だった!あちこちに伏線をはりそれを後半にかけて回収して行く姿は見事。観終わったとは『モンテ・クリスト伯』のエドモン・ダンテスに匹敵する爽快感だった!ただね、アンディの自殺、そして弟的存在のトミーが死んだのが辛かった。なにもそんな脚本描かなくても・・・・。
関係ないけど、ノートン所長は『24』の首席補佐官のイーサンだったけどやっぱニクイ表現するね。結局不正のお金をゲットしたのはスルーしたとして、希望を持つ作品だった。
坂元 去年の『それでも夜は明ける』の対抗馬として、っていうか一時期は“本命”とすら云われていた『アメリカン・ハッスル』も凄い面白かったよね。
上木原 うん、面白かった!同ノミネート作デヴィッド・O・ラッセルの『世界にひとつのプレイブック』もよかったけど、ファンションからヘアスタイル、音楽まで、事件は知らなくてもこの時代の画が好きなんだよなぁ〜。ジャケットもイイよね〜、元気が出る感じで。彼の作品はいつもキャラが強烈過ぎる(笑)。
てか、クリスチャン・ベールだったんだね“1:9カツラ詐欺師”(笑)。『マシニスト』ではガリガリの身体、『ダークナイト』ではムキムキの身体、そして今回はデブ・・・・マジか?『ザ・ファイター』では髪むしり取り円形つくって歯まで抜いたんでしょ?彼の変幻自在の役者魂はホント頭が下がる。ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、エイミー・アダムスにジェレミー・レナーと、まあキャラがそれぞれ強烈でよくぞキレーにまとめたもんだと思うよね。そしてデ・ニーロもハンパない・・・・。VFXやアクションシーンなくてもハッスルな映画を観たって感じだった。字幕版と吹替版を2回見たんだけど日本語字幕の方がオススメかも。セリフがハンパないから。
アキサン 今年の作品賞にノミネートされてた『グランド・ブダベスト・ホテル』が早い段階でCSでやってたんで観てみたんです。批評家からエライ高評価されてたりするんで期待して観たんですけど、これまた何というか。おしゃれ映画というか。若かりし頃に女の子誘って観に行って映画通ぶるには最適な映画と言うか。美術賞、作曲賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、衣装デザイン賞と4部門受賞してるんですよね。複数部門の受賞数では『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』と変わりないという。
坂元 え?もう『グランド〜』をCSでやってんの?監督がウェス・アンダーソンなんで観たいと思ってたんだけど・・・・。
アキサン でも、日々の仕事にくたびれた40手前のオッサンが家族が寝てから一人で観る映画としてはあまりオススメできないですね。 なんというか、カメラが固定されてるシーンが多く、舞台と言うか演劇と言うか、そんな感じで。我慢して観てると面白くなってくるんですけどね。正直、序盤は睡魔との戦いでした。そしてこれまた終わり方が呆気ない。夢見てたら急に起こされたみたいな。 楽しかった絵本の最後のページが欠けているかのような。
上木原 話題作だった『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、『スラムドッグ$ミリオネア』『レ・ミゼラブル』『アルゴ』『ゼロ・グラビティ』など含め、トレーラー観て「絶対観るぞ」って劇場に足運ぶこともあるけど、オスカー候補って知ってから観るのも多く劇場で鑑賞すればよかったと後悔することもある。
映画で知ることはいっぱいあるよね。体験したり見たこともない世界を映画の作品を通じて知ることが多い。そしてソレをしっかりと理解把握し自分自身を成長育てていくものだと思う。アクションやコメディ、ホラーなどもいいけど娯楽ではない真実のある作品を観て感じるコトも映画の醍醐味なんだよね。けど、興行成績の良かった作品もオスカー候補に入れて欲しいのも事実。

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