#178 藁の楯 わらのたて

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三池崇史の時代劇が凄い!

上木原 三池崇史作品で俺が初めて観たのは『殺し屋1』。原作は楽しめたんだけど実写はかなりしんどい作品だった。やはり実写化はね・・・・それぞれ個人が思い描いている想像ってあるでしょ?そのイメージが崩れちゃうんだよね。
かつて『デビルマン』『キューティーハニー』『キャシャーン』など、マーベルやDCはアメリカで大成功してるのに何故日本で出来ない?って言われていたけど、でも『ヤッターマン』は個人的にやってやったと思う。「天才ドロンボー」の歌もスゴクよかったし。なんてったって深キョンのドロンジョがメッチャよかった!この辺から三池監督の見方が変わったんだよね。
で、今ヤンジャンで連載している「テラフォーマーズ」好きなんだけど、三池監督が来年に実写化するんだってね!?大丈夫かよ・・・・と思いながらも、三池監督ならば意外と期待しちゃう。以前、資生堂の原田さんが描いた「テラフォーマーズ」のアドルフとミッシェルの3D化がマジ斬新でカッコよかったんだよね~。是非ともこの作品に期待して「じょーじ」を描いてほしいね(笑)。
坂元 しかし、三池監督ってデビュー当時からず~っと映画三昧で撮り続けてて凄いよね。最近でこそ年に2~3本ペースだけど(コレでも充分多いと思うけど)、02年なんか一年間に9本もリリースしてるし!
アサキン 今回、三池崇史映画を観漁って思ったんですけど、とにかく監督した映画の本数が多いですね。「仕事は来たもん順で受ける」と公言しているそうなんですけど。
上木原 オファーを断らないし、自分で作品を選ばない監督だよね。アクションからコメディ、ホラーからファンタジー、時代劇などあらゆるジャンルの作品を撮れるよね。1991年Vシネマでデビューして現在までに撮った作品は80作を超えるんだって!中には「予算800万で」って言われたこともあるみたい。ムリと思いつつも、いざ作ってみると逆に800万じゃないと作れない作品になるんだって。
あと映画には天候など含めトラブルがあった方がいい作品出来上がるって。追い込まれると眠っている能力が覚醒するらしい(笑)。3日かけて撮った映像データをあやまって消してしまった時も落ち込まず「あれは練習だったんだ」と、もう一回3日かけて取り直したんだって。最初の3日間では撮れなかったカットも全て撮れたみたいで、とにかく全てポジティブ。プラスに考慮する三池監督は見習いたいよね。
坂元 それは本当に素晴らしい。で、どのジャンル撮っても凄いしね。
アキサン せっかくなんでコレを機に『十三人の刺客』観てみたんですけど、冒頭から骨太感ギッチリ時代劇ですね。時代劇って基本的にテレビぐらいでしか見たことないんですけど、台詞の重みにうなされっぱなしでした。中でも新六郎の「お盆に帰ってくる」にはドキッとしましたね。戦中の「靖国で会おう」みたいな。覚悟のにじみ出る言葉ですね。
上木原 三池版『十三人の刺客』!コレ面白かった。将軍徳川家慶の弟の明石藩主・松平斉韶のあまりに異常な暴虐ぶりに筆頭頭の土井利位は旗本の島田新左衛門に暗殺を依頼。年のせいかな・・・・最近、時代劇や戦争映画が好きになってきてね。63年のリメイクなんだけど斉韶の暴虐っぷり→新左衛門が暗殺の画策→十三人の刺客が集結→宿場の要塞化→決闘、と解りやすい構成になってるよね。
アキサン 後半は落合宿を舞台にしたド派手なチャンバラ大立ち回り。13人対200人じゃ圧倒的不利なのに、ご都合主義のチャンバラショーでバッタバッタと斬り結んではシバキ倒す。乱戦シーンは『クローズZERO』でも楽しませてもらいましたけど。中でも一人ズバ抜けた殺陣を魅せつけるのが松方弘樹!前半シーンではそのべらんめえ口調から遠山の金さんを髣髴させたんですけど、やはり時代劇経験の豊富さから一人だけクオリティが違う。殺陣の事は詳しくはないんですけど、圧倒的に溜め・キレ・見得、そういったものがメチャクチャ格好良いんですよ。流石ですね。
坂元 あと、主演の役所広司がやっぱり凄いよね。この人はホント世界級。
アキサン 他にも山田孝之も雰囲気持ってますよね。華もある。伊勢谷友介もコメディリリーフながらも魅力あるキャラクターだし、伊原剛志もいかにもな風貌で剣豪感MAX。古田新太も良い味出してる。何より三池監督がこんな骨太時代劇を、という新たな驚き。
しかし、それを押さえて僕の中で株が急上昇したのはSMAPの稲垣メンバー。以前からチョコチョコと脇役やってんなー、とは思っていたんですけど。てか、SMAPの他のメンバーって脇役やんないですよね。主演ばっか。その中で決して上手い役者さんだとは思ってなかった稲垣吾郎。その怪演っぷりたるや。イカレ殿様を存分に演じきってましたね。『藁の楯』で藤原竜也が日本の全国民に嫌われたい、と言ってたって話しましたけど、この映画では吾郎ちゃんがまさしくそれでしたよね。感情の入っていないかのような芝居も斉韶の狂気が憑依しているかのような。最後のシーン。すっ飛んだ首があの汚い便所の中でゴロゴロっといくことで観てる側のカタルシスが一気に昇華。いつもの三池作品なら便器の中に落としてくれそうな気もするんですけど、あれぐらいで良いのかもですね。
上木原 そうそう、バカ殿っぷりの吾郎ちゃんがスゴイのなんのって・・・・人妻強姦して殺すわ家族と子供を弓で標的にするわ“だるま女”にするわ、終いには綺麗に盛り付けた食事をグチャグチャにして犬みたく喰う!そして今夜は女二人と・・・・傍若無人っぷりがハンパない。藩主を倒そうとする者とどんな奴でも守る者って構図がなんとも・・・。
けど、役所さんのブレない安定の演技があったので芯がしっかりしてる作品になってるんだよね。山田、伊勢谷、伊原、松方さんとキャストが豪華でみんなスゴいんだけど、とにかく吾郎ちゃんが凄かった!最後の山田君のシーンはきっと色んな意味があるんだろうね。すべてが幻に見え、どうでもよくなって戦は無意味だって・・・・。今の男たちの軽い言葉ではないホントの男達を観た気がした。
アキサン いろいろ言われているラストの小弥太。あれ、首に小太刀が?あれ?何か色々考察があるみたいですけど、僕は無くても良かったかな、って思うんですけどね。もしかしたら、最後の最後のシーン。新六郎がどのような形で帰ったかを暗喩しているのかな、とも思ったりするんですけど。確実に死んでいるはずの小弥太が再び登場していることで、不安定な境界を描いているシーンになる。新六郎ももしかしたら既に・・・・と。
上木原 そしてもう一つの男の生き様をみたのが『一命』
横行する狂言切腹。「狂言切腹」って初めて聞いたよ。コレは裕福な大名屋敷に出向き「庭先で切腹させてほしい」と願い出ると、面倒を避けたい屋敷側から職や金銭がもらえるという都合のいい“ゆすり”が流行ってたらしい。戦国も終わり若浪人(瑛太)は妻や子供の病の為に武士の命である刀を売りそして金欲しさに狂言切腹を願い出る。藩士らはコレに屈するわけにはいかないと誇り高い武士として切腹に導く・・・・が、慌てて取り消すも時すでに遅し・・・・真剣ではなく竹光で苦痛に苦痛でのた打ち回り息を引き取る。
62年の『切腹』のリメイクらしく昔の作品も観てみたんだけど、丹波哲郎さんが介錯人で「竹光で十文字にかっさばけ」って、『一命』でも竹光での切腹は無理で介錯求めてんのに「まだだ」と斬らない・・・・このシーンがマジしんどい。義理の息子の無残な骸をみた海老蔵扮する津雲半四郎が復讐に出る・・・・そんなストーリー。冒頭は瑛太扮する千々岩の切腹シーンから死んだ後に回想シーンで描かれてるんだけど、普通に観たら妻思いのホントいい人。でも「切腹させてほしい」って言っちゃうんだよね。中には思い止まらせお金を渡す大名、もしかしたら何故なのか相談にのってくれる大名もいるかも。そして今回みたく「見事なり。見届けてやる」と言う大名もいるかもしれない。だから決して悪人というワケじゃないんだよね。あと海老蔵扮する半四郎がメッチャ強い!竹光で真剣にも勝る強さ!そんな腕だったら道場でも開きゃいいのに・・・・金取れるでしょ?そしたらもっと裕福になれて死ななくても済んだのでは?って。
アキサン 『一命』は同じ時代劇でもまた毛色の違う一本でしたね。昔の『切腹』も観てみたかったんですけど、近所のレンタル屋には置いて無くて。
娯楽要素は少ないけど、ストーリー展開が上手くて目をそらせない2時間。冒頭の瑛太扮する求女の竹光切腹ショー。あの流れも上手い。観てる方はヘタレ浪人が狂言切腹で端金せしめようとしているんだと思ってしまう。猶予を!金子を!と嘆願する姿も往生際の悪さに見える。それでも根性決めて切れぬ刺さらぬ竹光で壮絶な切腹。沢潟の意地悪な振る舞いに後味の悪さを感じつつ、観てるこっちも「まだまだ!」とサディスティックな気分。これがまた後から効いてくるんですよね。海老蔵扮する半四郎から語られる事実とその背景。時間が進むと共にダークな気分。そして悲惨な姿で帰ってきた求女。懐紙に包んだ菓子。これでもかと伝えられる求女の家族を思う気持ち。絶望。いいですね、最高に後味悪いです。切腹ショーで盛り上がってた気分が最高にローです。やられました。
上木原 『切腹』では仲代達也氏扮する半四郎は家臣と真剣で立ち会うけど、『一命』では刀ではなく竹光。情無しで竹光での切腹を迫った仕打ちが許せなかったんだろうね。結局は何故、竹光を持っていたのか?何故、猶予が欲しかったのか訊いてほしかったんだろうね。あの三人も壮絶だったよね、青木さん、新井さん、浪岡さんは今一番気になる俳優さん。青木崇高さんは役作りは和製クリスチャン・ベールって思ってるよ。最後の十字に斬る切腹はお見事でした・・・・合掌。関係ないけど武市半平太は腹を三度かっさばいたからね。けど、千々岩は竹光で切腹・・・・どっちもしんどいよね。まあ男気あふれる作品だった。
アキサン 問題は何故海老蔵をキャスティングしたのか、です。若い!瑛太と然程変わらない年齢。娘の満島ひかりともそれほど変わらない。海老蔵からは年老いたイメージも落ちぶれたイメージも全く伝わってこない。強そう、なんです。エネルギッシュなんです。目力強すぎるんです。井伊屋敷での竹光使った大立ち回りはそれが存分に発揮されてるんですけど、やはり強すぎる。あれじゃ武蔵です。年齢的に海老蔵と役所広司の配役が逆でも良かったんじゃないかな、と思っちゃいます。

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