東京家族©2013『東京家族』製作委員会

#187 東京家族

涙は「その時」じゃなかったんですよ。ちょっと一息ついた、ふとした瞬間。 by アキサン

『東京家族』
好評レンタル中
発売:販売:松竹

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「東京家族」と、名作「東京物語」

坂元 こないだの第一回鹿児島マラソン、大盛り上がりだったね。上木原さん走ったの?
上木原 走ったよ。もちろんフルで。1万2000人のランナーが市街地を疾走する姿は圧巻!沿道の声援や雰囲気、ホント最高に楽しかった。コレだけは参加した人にしかわからない体験なんだよね。タカプラ前で家族が応援に来てて合流。三女を抱え上げ記念撮影。応援してくれる人々や家族にパワーをもらいゴールできた。改めて家族の応援は本当にありがたい!家族って本当にいいもんだなと思ったよ。皆さんも来年参加してみてはいかがですか?家族愛がさらに深まるコト間違いないよ。
坂元 オレ、数年前に「菜の花」出てもう二度と走らないって決めたんです。アキサンと魅楽流さんはどう?来年走ってみては?・・・・いや、絶対に走らなそうな二人だよね・・・・。
上木原 で、今回は「家族」を描いた映画といえば?・・・・まあ、家族を守るスーパーお父さん映画は大好きなんだけど、テーマ映画が『東京家族』ってことは、それとはちょっとジャンルが違うんですかね(笑)。
坂元 確かに、一言で「家族を描いた映画」と言ってもかなり幅が広いよね。今回は『東京家族』系の家族映画ってことでお願いします(笑)。
上木原 『母と暮らせば』、『母べえ』『おとうと』と山田監督の作品は知っていたけどなんとなく手が出なくて・・・・。『東京家族』初めて観た。橋爪功さんに吉行和子さん妻夫木くん含めベテラン俳優さんばっかでホント上手くて馴染みすぎて、メッチャ普通の家族のきわめて平凡な日常の物語にみえるんだけど、特に盛り上がりもなく観る者を驚かせるような場面や面白みも無く、正直最初はつまらなかった・・・・。けど、3.11を経験した僕ら日本人にとって、平凡であり普通であることがいかに大切で価値があるのかと解らせてくれる作品かと。
アキサン 『東京家族』って、僕みたいな人間なら間違いなく観る事のないジャンルなんですけども、元々の小津安二郎の『東京物語』を観たことがあったので、すんなりと観ることに成功しました。
坂元 そんな大袈裟な・・・・。
アキサン 『東京物語』のリメイクと謳ってるだけあって、要所要所でそのまんまのシーンが出てくるんですよね。冒頭の文子と実のやりとりなんかそのまんま過ぎて。正直、僕はここでガッツリとフックされましたね。おお、これは。って。
坂元 そうそう。山田洋次監督の“小津安二郎愛”を凄く感じるよね。で、改めて『東京物語』の名作度を実感する。
アキサン 「小津調」と言われる小津安二郎の特徴があるんですけど、それをなぞるかのようなカメラワークとセリフ回し。
中でも西村雅彦が1人だけ振り切った小津調の芝居!あれは印象深かったですね。
坂元 オレ、原節子さんに凄いハマって「紀子三部作」のDVD買って何度も眺めてた時期があるんだよ(笑)。小津安二郎の映画って「観る」というより「眺める」って感じなんだよね。それで凄い酒がすすむし(笑)。
中でも『東京物語』は一番好きな映画だったから、そのリメイクだと聞いて正直斜に構えて観たんだけど、かなりの完成度に突っ込みどころがなかったくらいだった。
アキサン 昨今の邦画って・・・・もしかしたら昔っからそうだったのかもしれないんですけど、僕が一番嫌いな特徴として「声が小さい」というのがあるんです。邦画は劇場よりもDVD借りて観ることの方が圧倒的に多いんで、そんな大きなボリュームで観ることも出来ず。子供寝かしてからとかだと尚更ですよね。静かに観ててもボソボソしゃべるから全然聞き取れない。業を煮やしてボリューム上げて観てると急に大き目のSEが入ったりする。あれもう勘弁してほしいんですよね。だから邦画のDVD観るときは字幕出して観たりしますもん。日本語なのに。
坂元 分かる、分かる!凄い分かる(笑)。
アキサン でも、この『東京家族』は字幕要らずでしたね。登場人物をしっかり画面に収めて、しっかりはっきり喋る。芝居がかった体もあるんですけど、非常に聞き取りやすい。映画というより舞台というかお芝居に近い感じですよね。
坂元 それに加えて「突然の大きめSE」も無いから一定のボリュームで見やすいんだよね(笑)。
アキサン そんなノンビリとした家族の様子を1時間以上もかけてじっくりと描く。オリジナルの熱海は横浜のインターコンチに代わり、はとバスの風景も現代の東京の街並みに変わってはいるものの、睡魔を増幅させるこぶ平(僕にとっては正蔵なんて立派な名前じゃ無くてこぶ平。ずっとこぶ平。あるいはタッチのキャッチャー役)のヘタクソな芝居をこらえてずっと見続ける。
頑張って見続けた者に与えられるご褒美は家族への感情移入。家族の描写に1時間半近くかけることで“とみこ”の死が身内の死に感じられるようになっているんじゃないのかな、と思いました。『〜物語』では電報で“とみこ”の具合悪いこと知らせますけど『〜家族』ではよせば良いのに幼い勇くんにその現場に居合わせさせるという。劇中のキャラクターながら心配しちゃいましたよ。勇くん、ショックだろうなあ、って。
坂元 こぶ平、かなり嫌いなんだね。
アキサン あとは畳み掛けるように死に行く“とみこ”。医者の長男以外は無力なんですよね。死ぬのを待つだけ、といった状況。何も出来ない。屋上で昌次に向けた周吉の何気ない一言と昌次の涙。僕も数年前に母を亡くしたので、この辺りの描写はグッときました。涙は「その時」じゃなかったんですよ。ちょっと一息ついた、ふとした瞬間。斎場に連れてって安置して、お線香上げてふっと気付いちゃったんですよ。ああ、死んだんだな、って。そっから滂沱。
坂元 オレも親父が死んでもう12年経つけど、あの屋上のシーンはなんかその時を思い出して泣けた。妻夫木、凄い良い演技するんだよね。
アキサン 嫁と一緒に観てたんですけど、嫁は“とみこ”の死に大層驚いたようで。劇場公開中の『家族はつらいよ』が、この『東京家族』と同じメンバー構成だから、てっきり『〜家族』の続編だと思ってたようで。そりゃポスターなんかには吉行和子の写真もバッチリ写ってるから、まさかここで死ぬはずがない、と思ってたらしく(笑)。
坂元 なるほど(笑)。

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