#187 東京家族

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孝行のしたい時分に親はなし

上木原 『東京家族』、なんか正に自分を観ているようだった。僕は18歳で家を出て東京に就職しながら専門学校に通ったんだけど、あれから24年か・・・・早いな。両親が東京に初めて来たのは確か22歳の頃だった。羽田に着いてから両親だけで僕がPCで作った地図を片手に職場まで来たのは今でも覚えてる。そして折角だからロケーションのいいレストランで食事でもって思ったんだけど、まさかの母がお重に弁当作ってきててさ・・・・狭いワンルームで食べたのが今でも懐かしく覚えてる。
坂元 うわぁ~、凄い良い話。マジで涙出る・・・・っていうか出た。
上木原 で、次の日ははとバスツアーで東京見学して、東京タワーで食事したな~。母ちゃんエスカレーターで真ん中突っ立ってたら後ろの人に注意されたり、マナーの悪い若造に父が説教したりと(笑)。こっちがハラハラすることが多かったな。
二回目に来たのは僕の結婚式の時。互いの家族10人でハワイに行ったんだ。そして弟の結婚式の時や親族の結婚式など・・・・そう考えればウチの両親は東京結構来たな。ホントあんな感じなんだよね。子供たちがそれぞれ独立してそれぞれの世界を持って生きてる。親には感謝の気持ちがいっぱいなんだけど仕事や家庭が邪魔してなかなか接する機会が無い。作品の中にも描かれてるんだけど開業医の長男と美容室経営の長女がどこと無く冷たいんだよね。喜ぶと思うだろうホテルに宿泊させるシーンは凄く解る気がするし。
坂元 よかれと思ってしたことなのに、そこじゃない、みたいなね。
上木原 母が次男の家に宿泊したシーンがよかった。蒼井優がまたいいんだコレが・・・・。予期せぬ次男が紹介する彼女の出会いがほのぼのしていて好き。次の日の母親の表情からどれだけ楽しい時間だったかが解るよね。そして母親がその後、急逝するという・・・・。
坂元 お母さんは、次男の彼女が自分と気の合う良い娘だったってのも嬉しいのだけど、それ以上に息子が幸せそうなのが何よりなんだよね・・・・思い出しても泣ける。
上木原 先日、バレンタインでウチの3姉妹が僕の両親にチョコを手作りして送ったんだ。電話きたんだけどそりゃ喜んでてね・・・・「ありがとさん、今は仏っ壇に飾ってあっで後で頂っで」はい出ました仏壇!(笑)でも孫に愛される親ってやっぱりイイよね。リスペクトしてる。ネットで知ったんだけど1月はお年寄りが亡くなるのが多い月なんだって。寒い日などで体調を崩しやすいというのもあるんだけど正月に子供や孫たちと過ごした後日に急逝する例が多いんだってさ。寂しさなのか?それとも幸福感で「糸」が切れてしまうのか?「孝行のしたい時分に親はなし」ということだね。
アキサン 山田洋次監督はいわゆる左翼的な思想というか、日本共産党のパンフにも寄稿するようなお方らしいんですけど、その思想の端々が劇中ににじみ出るというか何というか。周吉に酒を飲ませて我が思想を語らせるという行為にゲップがでそうでした。びっくりしましたよ、急に「どっかで間違ったんじゃ、この国は」とか言い出すから。途中で帰った他の客の気分ですよ。なんだあの爺・・・・じゃなくて、どうしたこの監督、って。
坂元 そうなの?それは知らなかった。そういう目で見るとまた面白いね(笑)。でも、そのセリフもオリジナルの『〜物語』通りなんだっけ?だとすれば、小津安二郎もそういうこと?
アキサン オリジナルの『東京物語』では、あのシーンは老人達が覇気の無い若者たちへの不満というか愚痴というかクダを巻くシーンなわけで。家長が家族を案じるあまりついつい小言が多くなってしまう。それはどんな家庭にでもきっと思い当たるシーンがあるような、多くの家族を構成する重要な要素だと思うんです。僕らが子供たちや若い世代に対して不満を感じているように、いつの時代も同じなんだろうな、と感じ入る部分もあったんですけど、『東京家族』では何か変な思想ぶち込まれた感じがして・・・・ここだけが凄く残念ですね。
坂元 なるほど~、そう考えると確かに残念だな。
アキサン 小津安二郎監督と山田洋次監督の年齢差は28歳。それこそ、『東京物語』で言われてた「今どきの若いもん」が山田洋次監督世代。だったら、当時「今どきの若いもんだった山田洋次監督」が思う、最近の「今どきの若いもん」への苦言を呈して欲しいんですよ。
なのに思想めいた事を代弁させ、不機嫌そうに途中で帰った他の客を今どきの若いもん(それほど若くは無いけど)として描く。ジジイうぜー、的な描き方。もしかしたらそれが山田洋次監督が抱えている若者への不満なのかもしれませんけど、だとしたらあまりにも寂しい。リメイクとはいえそのままの設定でやっちゃうと不自然な部分もあるから、現代に即した設定になるように色々と工夫しながら展開してきたお話なのにここでひっくり返された気分なんですよね。家族の話じゃなかったのか、と。
となると、最後の周吉と紀子の会話も何か違うものに感じてしまうんですよ。昌次を日本に置き換えて考えると、「昌次を宜しく」とお願いした紀子は何を意味しているのか、的な。優しい母の形見を預けた紀子は一体何を暗喩しているのか、と。考え過ぎですけどね。でも考え過ぎちゃうだけの内容があの小料理屋のシーンにありそうな気がして。
坂元 それが考え過ぎ(笑)。
アキサン てか、何だかんだ言ってユキちゃんが一番いい子ですよね。うちの娘もあんな子に育って欲しいなあと思いました。
坂元 もっと考えよ~。

山田洋次監督といえば

上木原 山田洋二監督の映画ってほとんど観たことないんだよね。まず『男はつらいよ』観たことないんだけど何故か観てみたいって気にもならない。昔『幸福の黄色いハンカチ』は親が観ていたような気がするし、観たら面白いんだろうけど基本僕は「スタローン系アクション」好きなんで、どうも手に取らない。
坂元 オレも実は『男はつらいよ』シリーズは一本も観たことがない。同じく、観ようとも思わないんだよなぁ・・・・。
上木原 けど、戦国時代や幕末モノは大好きなんで山田監督の時代劇は好きだよ。『たそがれ清兵衛』『武士の一分』『隠し剣 鬼の爪』とか。『たそがれ清兵衛』は平侍の清兵衛は家事と内職に励み2人の娘と母を養っている貧乏侍、そして幼馴染の女性と出会いDVにあっている彼女の夫の武士を打ちのめし腕を見込まれ、今度は藩命を受け清兵衛は上意討ちするって話。
坂元 「久しぶりに“宮沢りえ”を見れて良かった」という記憶しか無くてすみません・・・・。
上木原 『武士の一分』も主人公以外にも素晴らしいキャストで魅せる!一番好きな田中泯、笹野高史、小林稔侍、緒方拳とかは山田イズムを感じるよね。もちろん『武士の一分』も妻・加世の献身の姿や、キムタク好きの僕としては新之丞の絶望からの苦悩、そして怒りが素晴らしかった。とにかくセットから演技まで全体的にホント丁寧に描きすぎてる作品が山田監督らしいな~と思ったよ。
アキサン 山田洋次監督といえば、やっぱり『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』ですよね。他にも『学校』なんかもあるんですけど。中でも『男はつらいよ』シリーズは全48作の映画があるそうで。でも、僕も観たことあるのってホンの数本なんですよね。しかも、鹿児島~大阪間の夜行バスの車内。
夜行バスって映画のビデオ流してくれるんですけど(今もなんですかね?)あれって大概邦画なんですよね。洋画だとしても吹き替え。そりゃ車内のテレビだと後ろの方は字幕読めませんもんね。で、その中でも登板率の高かったのが『男はつらいよ』でした。僕が乗ったバス調べですけど。何か吉岡秀隆がホモに襲われるシーンがあったことだけ覚えてます。覚えてるのはそこだけなんで、まるで悪夢のようなストーリーですね。調べてみたら恐らく42作目の『男はつらいよ ぼくの伯父さん』なんですけど、何かタイトルも意味深に感じてしまいます。
坂元 やっぱ、考えすぎ!
アキサン あと、『釣りバカ日誌』といえば昨年にテレ東でドラマやってましたよね。西田敏行がスーさん役になってて、ハマちゃんが濱田岳、みち子さんが広瀬アリス。ちょっと気になってたんですけどね。「合体」するのかどうか。気になる方はテレ東のネット配信かDVDボックスで確認しましょう!
坂元 アキサンにしては珍しく「!」マークまで付けて、一体何の宣伝?
アキサン 『東京家族』と同じようにゆったりと時間が進む家族映画で思い出すのは是枝監督の『歩いても 歩いても』
坂元 『釣りバカ』はもういいの?
アキサン でも、思い出すのは何も起こらなかった映画、という情報だけで。その中で強烈に記憶に残ってるのは原田芳雄演じる恭平の「この家は俺が働いて建てたんだぞ、なのに何でお婆ちゃん家なんだ」ってセリフで。確かに僕も思い返せば「お婆ちゃん家」って子供の頃呼んでたな、って思い出して。恭平の意見ごもっとも、ってことで、それからは嫁の実家のことは地名で呼ぶようにしましたね。そういやこの映画も嫁役が夏川結衣ですね。

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