ワールド・オブ・ライズ(c)ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

#190 ワールド・オブ・ライズ

何を以て「テロ」とするか、って疑問も生まれるんです。色んな立場、色んな思想での信念と正義があるわけで、そこに善悪感情持ち込むのって怖いんですよね。「正義の反対は悪でなく、また別の正義だ」って言葉のとおり。by アキサン

『ワールド・オブ・ライズ』
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真実か創作か?隠れた名作『ワールド・オブ・ライズ』

坂元 今回は、レオナルド・ディカプリオとラッセル・クロウの夢の共演作『ワールド・オブ・ライズ』をテーマに「テロと戦う映画」を語ろうと思うんだけど。
アキサン ディカプリオといえば第88回アカデミー賞でめでたく(ようやく)主演男優賞を獲りましたね。『レヴェナント』も観に行ったけど観応えタップリで。まだ若いのに色んな芝居やってるなあ、と思って何気に年齢調べたら1974生まれの41歳!僕、てっきり自分より年下だと思ってました。
『ロミオ+ジュリエット』でその存在を認識して、『ギルバート・グレイプ』『バスケットボール・ダイアリーズ』に『太陽と月に背いて』を立て続けに借りて観て「若いのに大したもんだ」なんて思ってたんですけど、僕のいっこ上だったとは。今度からディカプリオなんて呼び捨てせずにデカプリ先輩と呼ばないと失礼ですね。そんなデカプリ先輩の作品って大概観てると思ってたんですけど、この『ワールド・オブ・ライズ』はスポっと抜け落ちてました。
坂元 そうか、『タイタニック』『ロミオ~』の後だね。それにしても『太陽と月~』まで観てるのに何故に『ワールド・オブ~』を観逃してる?って思うけど、この映画の存在すら知らない映画ファンって意外と多いんだよね。しかも超大御所リドリー・スコット監督で、更には『グラディエーター』とか『ビューティフル・マインド』『アメリカン・ギャングスター』なんかで人気絶頂時期のラッセル・クロウとの共演作なのに!映画的にも決して駄作では無いと思うんだけどホントに不思議。何故だろう?
上木原 一言で言っていい?地味なんだよね・・・・メッチャ地味。なんかドキュメンタリーっぽいっていうか。けどそこがまたよくて銃撃戦やカーチェイスに拷問とフィクションぽかった。冒頭に「フィクションだが、絵空事ではない 世界で現実に起こっていることなのである 」っていってるもんね。
坂元 そうそう、このリアル感が『ワールド・オブ~』の魅力なんだよ。しかもそれを娯楽大作の名匠リドリー・スコットが撮っているっていう!テロものとしては『ゼロ・ダーク・サーティ』に並ぶリアル傑作映画だと思う。
アキサン 観始める前まではドンパチやらかす中東政治アクション映画(そんなジャンルあるのか)だと思ってたんですが、中々にスリリングな展開で。
上木原 無人偵察機プレデターを使って、1万2000メートルの上空から群集の中の1人を探し出せるシステムとか米軍の最新テクノロジーが驚異的ってみんな言ってるけど『24』でCTU(テロ対策ユニット)で無人探査機ドローンや衛星、情報端末で知ってたから特に驚かなかったな。それよりかチョイチョイ、エドの邪魔が入ってウザかった。バウアーも直感でテロと接触しようとするのにCTUが毎回邪魔して潜入捜査の邪魔すんだよね・・・・。現場の行動とデータしか見ていないスタンドプレーは『踊る大捜査線』含めどの作品にもあるけどアレって観ててマジイライラする。でもこの作品は、スパイに行き捕まったら自分を撃てと発したシーンや情報提供者の口封じで射殺したりするシーン、恋するアイシャとはお国柄で握手も出来ないってシーンなんかは凄いリアルだった。
坂元 公開当時も「細部に至るまで現調をして真実を再現した」ってことで話題になってたもんね。そのリアルさ故「ベトナム戦争が初めて映画になった」と(勿論それまで沢山の作品が存在していたにも関わらず)云われてた『プラトーン』を思い出した。
上木原 情報局長ハニ・サラーム役のマーク・ストロングが実にいい!すべてを隠して行動する。結局いくらハイテク機械を駆使して追い込んでもテロリストはアナログな方法ですり抜ける、結局そんなもんだよね。リドリー・スコット監督とラッセル・クロウはよくコンビ組んでるけど見事な憎まれっぷりだったな。役作りでデブになってたけどデブで指示ばっか出すやつはどの国でも嫌われる。俺だったらテロリストからの最後の救出や最初に見舞いに来たハニについていくな。
今回『レヴェナント』で初めてディカプリオはオスカー獲ったけど、この作品でもさすがの演技だった。昔のディカプリオってディカプリオディカプリオしてる感じだったけど、この映画のディカプリオはまた新たなディカプリオって感じだよね。
坂元 どんだけディカプリオディカプリオって・・・・。
アキサン ただ、残念なことにデカプリ先輩演じるフェリスの行動にどうも納得がいかない。理解の足りない上司に悩みつつも現場で実直に頑張るCIA工作員、だと思ってたら建築家のサディキをテロリストにでっち上げてまんまと拉致コース。保護しよう!って今更善人ぶって何言ってんだバカヤロウ、って思いましたもん。ラッセル・クロウ演じる出来そうで出来ない上司ホフマンのほうが余程「正義」ですよ。現場に居なくても彼は彼の信念に基づいて行動していたわけで、それは彼の正義ですよ。イケメン雰囲気漂わすヨルダン情報局のハニも冷徹だったりするけど、それはやはり彼の信念による正義に基づいた行動。テロ組織のアル・サリームだって彼の信念に基づいた行動ですよ。それを正義、と呼ぶには僕の信念と相反する為に躊躇ってしまいますけど。そんな中、プリオ先輩(フェリス)だけが何かどっちつかず。最終的には手柄たててドロップアウトの権利を貰ってアイシャの元へ。最後は女に逃げるのか。
坂元 その前にまずディカプリオの呼び名を統一して。
アキサン ・・・・と、憤慨もしたりしたのですが、この感想まとめてるうちにフト思ったんですよね。自分ならどのポジションだ?って。手堅くいくなら理想はホフマンだな、と。妻子持つ身だとそこ一択。もし、フェリスの立場なら?そう簡単に割り切れないんじゃないのか。結果出したいから誰かを踏み台にしたいとは思わないか?いい女いたらそっちに逃げたくはないか?となると、フェリスは映画観ている自分(観客)を投影したキャラクターだったのかな、と。そう考えれば憤慨するのも無理も無い気がして。時間を置いてまた観てみたい気がしました。
上木原 イラだちのウソの心理戦。そして看護師アイシャとの恋。特に最後テロに拉致られて束縛され拷問からの殺されかけるシーンはリアルすぎてマジ怖かった。あと、最後の「CIAは中東が嫌い」という言葉が印象に残ったな。最後の監視を解くため衛星から引く瞬間がまさに『24・シーズン8』のバウアーが政府とCTUから見逃してもらう瞬間や『ボーン・アルティメイタム』なんかと似ててナイスなエンディングだった。
アキサン 劇中のフェリスへの拷問シーン。アレは痛そうでしたね。シンプルに指トンカチ。日曜大工で釘打ちそこねただけで痛いのに。『レヴェナント』でも熊にボッコボコにされて凄い痛そうで。マゾ気質なんでしょうか。
上木原 近年は9.11以降テロをテーマにした作品多いよね。映画として観てる方はドンパチあって正直楽しいんだけど、でもアメリカが正しいって押付ける作品も多いのも事実。特に『ハート・ロッカー』『グリーン・ゾーン』はじめプロパガンダ映画多い中、この作品は中東への愛も感じられた作品だと思った。考えを押付ける殺人集団とムスリムを一緒にしちゃだめってコトだよね。

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