スモーク(C)1995 Miramax/N.D.F./Euro Space

#197 スモーク

ハッピーエンドだったり、ボロボロ泣けたりっていう派手な話ではないけれど、心には強く残ると言うか。タバコの煙のように掴みどころがない不思議な魅力があるんです。 by 階元

『スモーク』
発売・販売元:ポニーキャニオン
価格:DVD¥3,800(本体)+税

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間違いだらけの真実の物語

坂元 今回はハーヴェイ・カイテルの『スモーク』。「“男が惚れる男優が出てくる映画”を語りましょう!」ってことで。いいよね、こういうテーマ。しかし、今回は階元さんがホスト役なんだけど、階元さんと云えばてっきりジャッキー・チェン映画でくるかと思ってたんだけど(笑)
階元 坂元さんから「テーマ映画を1本選んでね」と言われた時、ほんと何にしようかと、ちょっと途方にくれたんです。ひとまず過去テーマになっていないであろうものと、「やっぱり」とみんなに思われるジャッキーもの以外で(笑)と考えた時に、1本ってのがなかなか難しくて・・・・選びたい映画が無数にあるというか。。で、僕の数少ないDVDコレクション(何度も繰返し観れる好きな映画)から選んでみるかと思って目についたのが、TSUTAYAの中古コーナーで300円(!)で救出した『スモーク』でした。
坂元 『スモーク』はオレも大好きな映画です。実はかな~り前に一度テーマに取り上げているんだよ。で、その時は誰が参加してどんな会話をしたんだっけなぁ~と思って調べたんだけど、パソコンに残ってなかった。Short cutを始めてまだすぐの頃に一度パソコンが完全に壊れて、しかもそれが〆切の数日前だったから井上社長に「パソコンが壊れたから今月は飛ばさせて下さい」って泣き言を言ったら「パソコンどうせ買うでしょ?すぐに買えばギリ間に合うんじゃない?今日買えば?・・・っていうか、今買えば?」と言われ、速攻で買いに行ってなんとか間に合わせた回があったんだよね。だから『スモーク』はその前にやってるんだと思う。14~15年前とか。勿論まだ雑誌の頃だよね。
階元 個人的に好きな映画って群像劇が多いし、ハーヴェイ・カイテルって名優なのに、一般的にはイマイチ認知度が低いというか、顔は見たことあるけど名前を言える人って多分少ないのではと思ったので、彼にスポットを当てたいと思って『スモーク』をテーマにしました。
アキサン 確かに、“ハーヴェイ・カイテル”って言われても誰ソレ?状態だったんですけど、顔と出演作見て「ああ!あのオジサンか!」って気付いた次第で。名脇役ってイメージですね。最初に思い浮かんだのは『パルプ・フィクション』の掃除屋ウルフの役でした。
坂元 そうそう!あと『タクシードライバー』ね。
階元 この映画は、歳を重ねていくごとに好きになっていった作品かもしれません。最初観た若かりし時は、正直なんか抑揚のないちょっと退屈な映画、という印象だった気がするんです。でも、なんか嫌いではなかった。
魅楽流 『スモーク』良かったです!本当に予備知識なしで、ふと思い出して観始めたんですけど(俺的に良い意味で)グイグイ引き込まれるわけでもなく、気にかかるシーンがあるわけでもなく・・・・それでもただ漠然と観続けていたという感じなんですけども、決してつまらないとかではなくって。
ホリケン 僕もまったく知らなかったのですが『スモーク』とてもいい映画ですね。最近の映画はなかなかキャラクターのバックボーンを描かずに進んでいくものが多い気がしますが、この映画は主要キャラクターが多いのに必要最低限のセリフや少ないカットで彼らの背負った背景や人格を描いていて、次第に感情的に、感動的に関わっていく感じがとても上手く、なんだかイーストウッドの『グラン・トリノ』っぽい感じがしました。
アキサン 確かに『グラン・トリノ』のモン族の少年タオと、『スモーク』の黒人少年のラシードのポジションって似てますよね。
魅楽流 なんとなく流れているだけなのに観ていられる映画というか、自分の中にも数作そういうのがあって普段は派手なエンターテイメント系ばかりなのだけども、実は『BUFFALO’66』『かもめ食堂』はそういう意味では大好きな映画なんです。この『スモーク』もそうですね。ただなんとなく心地の良い映画とでもいうか・・・。そうは言っても『BUFFALO’66』は、ただ小便がしたいダメ男がウソつき続けるだけだし、『かもめ食堂』はシナモンロールが食べたくなるだけなんでホントに何言ってるかわかんないかもしれないですけど(汗)。。
ホリケン みんな色々切ないストーリーを持っていて心が温まりました。特に作家のポールに感情移入。数年後にもう一度観てみたいですね。
魅楽流 僕も観終わった直後に「必ずまたもう一度観よう!」と思いました。ラスト数分のところで外出していた家族が帰ってきて子供達が喚き散らしていたため話がすっぽりトンでしまったんで・・・・
坂元 それは取り敢えずすぐに観て欲しいんだけど。
階元 ビデオ屋で目当てだった新作が借りれない時ってあるじゃないですか?目的がなくなってどうしようかなぁって店内をぶらついている時とかに、1年周期ぐらいでふと目について手にとってしまう感じで。2回、3回、4回・・・・と観る回数を重ねていくと、どんどんこの世界観に引き込まれていくというか、じわ~っと、ほんとじわ~っとね。
坂元 オレ、同じ映画を何度も観ることってほとんど無いんだよね(ココ“Short cut”を書くために観直すのは別として)。DVDは色々と持っているけれど、基本は映画館で観て凄い良かったからコレクション感覚でDVDを買うって感じで。だから封も切っていないのがたくさんある(笑)ビートルズのドキュメント映画は何度も観るけれどあれはまた違うもんね。
階元 男同士の友情、過去の恋人との再会、父と息子の再会・・・・それぞれが決して大きな事件ではないんだけど、淡々と描かれた人間模様が交差していって、本当か嘘か分からないような切ない?ほろ苦い?エピソードがどんどん重なり合っていくと、心には小さな幸せ?がじわ~っと広がっていく感じっていうんですかね。。。
魅楽流 「嘘」がいいですよね。いや、よくはないんだけれども、誰かのためにつくウソが素敵でした。それと、タバコ屋さんが毎日日課にしている同じ場所から同じような景色を毎日撮影するアレ・・・・あの方のあの投稿のルーツはここにあったのか!!と(笑)
階元 そうそう。ぼく6年前からInstagramで毎朝ベランダから桜島を定点観測撮影して投稿するのを日課していますが、これはご察しのとおり、まさにオーギーの日課のパクリなんです(笑)
坂元 あ~なるほど!言われてみればそうだね!
階元 群像劇って観る時々の心境で印象が変わるし、感情移入するキャラクターを変えれば何度見ても新鮮に観れるというか、違った印象が湧いてくる気がしませんか?『スモーク』だと、オーギーとポールでも違うし、ラシードとサイラスでも全然違った感情が湧いてくる。だから群像劇が好きなのかもしれません。
坂元 群像劇の最高傑作と云えばやっぱロバート・アルトマンの『ショート・カッツ』!この映画は何度も観直したなぁ~。ホント面白い!長いけど。あと『マグノリア』とか。
アキサン 『スモーク』は色々な人が出てきて色々な話が繰り広げられるんですけど、群像劇と言うよりかはオムニバスに近い気がします。だからそれぞれの話が帰結しない、といいますか。よもやま話ばっかりなんですよね。だから、映画を観たというよりも、自分もオーギーのタバコ屋に行ってその話を聞いてきたかのような気分なんですよ。何度も観たくなる映画、ってよく言われてるみたいですけど、時々フラッと立ち寄って世間話に興じたい、って気持ちになるのかもしれませんね。
階元 ハッピーエンドだったり、ボロボロ泣けたりっていう派手な話ではない(でもそれが本当の人生っぽくっていい)けど、心には強く残ると言うか。この映画って、ほんとタバコの煙のように掴みどころがない不思議な魅力があって観ていない人にはなかなかうまく魅力を伝えられないもどかしさがある映画なんですよね。。。もう、とにかく観てみたら分かるよ!と、自分の表現力の稚拙さが嫌になっちゃうんですが(苦笑)。なので、ジャケットに書いてあるコピーをそのまま拝借すると、「間違いだらけの真実の物語」「心が乾いたときに何度も味わいたくなるハートウォーミングストーリー」。まさに言い得て妙だなぁと。

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