#199 桐島、部活やめるってよ

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風呂場の鏡に繋がる、あの日

テルオ 私は「格差社会」、最近では「スペック」という言葉が苦手で。隙間で生きてきた気がするけど、その言葉を苦手に感じること自体、本当は意識して気にしているんだと思う。わざわざ自己開示っぽいことは書きたくなかったけど、この映画を観てそこを避けて通れない気がしました。
アキサン 共感したのは神木隆之介くん演じる前田や武文が所属する映画部の部員達ですね。僕の学生時代ってまさしくあんな感じでした。てか、出てくる高校生達みんな学校に居たような気がしますよね。あの頃の最大公約数的な。体育会系の連中が文化系を確実に下に見てる感じが嫌で。俺は一生懸命練習してるお前らの事凄いと思うしリスペクトしてるけど、何でお前らはそうじゃないんだ?って。まあ、実際イケてない子らも多かったですけど。
テルオ 体育会系部活>文化芸能部活>あえての帰宅部>ただの帰宅部・・・という「スクールカースト」ってのがあるらしく。でも、帰宅部の女子だってレベルが高かったり、部活では養えない何かを持ってたりするよね。
ホリケン 今も昔も厳然たるスクールカーストは存在していて、ゲーム、アニメ、漫画大好きな少年は高校に入っても好きなものは好きな訳で大体そのピラミッドの底辺(もしくはその外)に身を置いていたと思われます。例えクラスの大半の女子にキモがられても夜な夜な没頭するわけですよ実際。でも負けない、だってソレが「好きだから!」劇中のラスト付近で神木君から“オタク勝利宣言”的なものを聞いた気がして、別にもう他人の評価は関係ないとさえ思える高揚感を貰えました。
アキサン すっごい話逸れますけど、ある日学校帰りにゲーセンに寄ったんです。毎日通ってたから常連とまではいかなくても顔なじみがいたり、それこそアニメ部の連中も行ってたりしたんで。その日は何でか遅くなって僕一人で行ったんですよ。みんないるかな?って。そしたら誰も居なくて、ひと通り見て回って帰ろうと店を出たら「キセ(僕の名前)逃げるな!」って声がして。はぁ?なんのこっちゃ。店に戻ると誰もいない。おかしい。よく見りゃクラスの知った顔が何人かいるぐらい。不思議な気分で家に帰って翌朝登校したらその知った顔のが「何で昨日逃げたの?」とニヤニヤ聞いてくる。アホか、何で逃げなアカンねん。と一笑しましたけど、彼らからしたら不良の社交場(笑)ゲームセンターで文化系の奴が1人で来てビビって帰ったと思ってしまったんでしょう。僕は当時から当然デカかったんですけど、そんなデカい奴でも下に見られてしまう文化系というフィルター。
坂元 それ何なんだろうね?ある意味不思議だよなぁ。だって、ケンカになればその「知った顔」はきっとアキサンには勝てないと思うんだけど・・・・その話、なんか腹立ってくるな(笑)
アキサン そんな感じが良く表れてたのが、屋上でのシーン。こいつら変なの扱いとか小道具を蹴っ飛ばしたりとか、完全に文化系の映画部を下に見てるバレー部や帰宅部(てか家帰るのに部もクソもねえ!)達に対してよくぞキレた前田!あのシーンは痛快ですね。胸倉掴んで凄むバレー部や帰宅部相手に一歩も引かないその姿。彼の最大の武器でもある8mm構えて「食い殺せ!」にもスカッとしましたね。てか前田君は随所にそのゾンビ愛が溢れているのが最初からずっと好感度高い。あのメガネも絶対ロメロ意識してますよね。脚本の“宇宙ゾンビ”って設定は頂けませんが「生徒会オブ・ザ・デッド」からは傑作C級映画の臭いがプンプンします。前田君の想像で描かれる屋上殺戮シーンもタマりません。その後、宏樹目線だとバレー部に駆除させられてるシーンが見て取れるのでそこもまた(笑)
テルオ 宏樹はいつも受け身で中途半端でいるんだよね。桐島がいないことでそれが尚更浮かび上がる。進路調査票をきちんと四つ折りにして持っているけど見通しは立たない・・・。バスケ仲間の他の2人より上位にいて、2人もそう感じているように見えるし。そんなスクールカーストで“上位”にいる彼が“下位”の前田に将来の夢について聞いたり、野球部のキャプテンに「俺、次は」と話しかけてみると、少なくとも今の自分について具体的に答えられ、真っ直ぐカメラを向けられて同じ質問をされ、「やっぱカッコいいね。カッコいい。」「よかったら応援だけでも来てくれよ。勝てる気がするんだ、次は」と立て続けに残酷な言葉を浴びせられる。多分、カッコいい、という言葉も聞き飽きているだろうね。「桐島という親友とつるむ」「野球部に頼られている」何となくあった居場所を失ってしまった。桐島とは別の世界で生きている前田に対して、宏樹の心情が気になったなぁ。
上木原 それにしても前田君、ガキの頃からロメロ崇拝してたり観に行く映画が『鉄男』だったり、アキサンじゃねえか?って思った(笑)
アキサン 日曜日、映画館でかすみとバッタリ会うシーン。また観てる映画が『鉄男』ってのもタマらないんですけど、観終わった後の前田の映画トーク。あの上滑りする感じはホラーですよね。一生懸命話してるけどずっと上滑り。空回り。怖い。ゾッとします。そりゃ僕だって高校生時分に『鉄男』観に行って知り合いのちょっと気になる女の子がいたら大興奮ですよ。運命感じますよ。それ故にあのシーンは辛い。痛い。怖い。一番共感、というか恐感するシーンですね。注意しないと。
坂元 笑!
テルオ あと、auの一寸法師のぼやきが面白い!「サッカーは不毛」「俺が監督だったらあいつら使わないね、笑ってろ今のうち」「同じ文化部。行ける」(笑)もう一人、カーストを話題にしてるのが“あえての帰宅部”のパーマの子。吹奏楽部の女子同様「見られてる」を意識しているのが懐かしい(笑)沙奈の「桐島くんと話する時私も一緒に行こうか」は女子っぽかったなー(笑)
アキサン 野球部キャプテンも良いですよね。アレ凄く良いキャラです。実は僕、それなりに絵を描けるんです。一生懸命描いてたのはもう遥か昔のことなんであの頃のように描けませんけど、まあ手クセ程度で。それでも、娘とお風呂入った時に、湯気で曇った鏡やガラスに絵をツイツイーッと描いてあげてるんです。他愛もない絵です。その日その時の気分や娘から聞いた学校であった出来事とか。それで娘も喜んでるし、嫁もそれを見て笑って。もう充分じゃないか、と思うんです。もしかしたら僕はこの為に絵を描いてたのかな、と思える程に。大切な人に届けられる、伝えられる、教えられる。これほど豊かなことはない。そう思えるんです。
坂元 うちの子もアキサンに「妖怪ウォッチ」の絵を描いて貰ったことあるんだよね、紙切れに。覚えてる?もう随分前だけど。息子は凄い気に入ってずっと大事に取ってるんだよ。久しぶりに見たくなったんで息子に「見せて」って言ったら「何処にあるか分からない」って・・・・ゴメン(笑)
アキサン そう。だからあのキャプテンはきっとドラフトで指名されることは無いでしょう。でも卒業後は草野球で大活躍するかもしれません。そしていつの日か我が子とキャッチボールしたりして楽しむのかもしれません。だからきっとキャプテンの頑張りは無駄でも何でもない。不毛でもない。桐島のリザーバーで入った風介の頑張りもきっといつか役に立つ。前田が将来は映画監督になるのは無理だと悟っていても映画を撮る。前田は「繋がってる」と表現していたもの。いつかきっと意味を成すそのナニか。僕にとってあの頃描いてた絵は、今、自宅の風呂場の曇りガラスに繋がっていたんだなと思える良いシーンでした。宏樹もあの後、野球また始めてたら良いなあ、と純粋にそう思えます。
坂元 そんないい話をココでする?
ホリケン 僕が映画にハマったのは社会人になって映像に携わる仕事に就いてからなんですよ。映画って、拘束時間がコンテンツとしては長い方なのでじっくり見られる環境って若いうちは少ないじゃないですか。んで更に、大体の映画じゃスクールカーストの上の方々の恋愛事情とかをむず痒く描くじゃないですか・・・もうね、今考えると時間の無駄ですよ僕にとっては。『ウォーター・ボーイズ』とか『スウィング・ガールズ』とか『リンダ・リンダ・リンダ』とか『カノジョは嘘を愛しすぎてる』とか『アオハライド』とか、色々観ましたけど、何一つ共感できませんでした。が、この『桐島、部活やめるってよ』は「あるある」が多すぎて・・・・もう涙出るかと思いました。
坂元 出てはないんだ?
ホリケン 今回自分がテーマ映画に挙げたので2回ほど観直してみたのですが、高校の頃ってあんなに感情的になっていい環境だったんだなぁとつくづく思いましたね。大人になるとあそこまで感情を露わにできませんしね。強いて言えばアルコールの力で理性が緩む「飲み会」の場が一番近いのでしょうか・・・・また皆さんと飲みに行きたくなってきました(笑)
坂元 行こう行こう!
ホリケン 娘も将来こんな劇中の様な感じの学園生活を送るのかと思うとなんだかグッとキますね。
上木原 そう?ウチのガキも3人とも女だけど、大丈夫かな?って思ったよ(笑)女子ってやっぱめんどくせえな・・・って。てかあの二人ケバくない?「嘘の戦争」の美月ちゃんの方が好きだな。
テルオ そうそう、桐島の彼女役の山本美月はドラマ「嘘の戦争」に出ていることに気づいて、清楚なお嬢様役の方が似合うなあ、と思いました。あと、松岡茉優が雰囲気が違いすぎて全く気づかなかった・・・・
ホリケン それにしてもこの頃の橋本愛ちゃんは“神がかって可愛い”と思うのですがいかがでしょうか?今は別人の様に成長してしまいましたが・・・・あー失恋ってツライですね。
上木原 カンケー無いけど、俺、高橋優の歌って好きなんだよね。最近だと「太陽と花」DLしたばっか。
アキサン この映画の主題歌「陽はまた昇る」のPVでは前田のその後を描いてるんですよね。ちょっとした特典映像みたいで少しウレシイ。きっと彼は将来良い感じのホームビデオを撮ってくれることでしょう。8mmで。

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