バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

#200 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

過去の栄光は、ときには残酷ですね。でも必死だから憎めない。 努力している人間を、だれも馬鹿にできないというか。 by 塚本

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

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大傑作『バードマン』

ツカヂ いよいよ。いよいよ、ショートカット最終回ですね・・・。最終回に僕が提案したテーマでいいのかと困惑してますが、今回は「ダサかっこいい親父の映画」を語りたいと思います。僕自身が一昨年、父になりまして、1歳半の息子に頬ずりする毎日なんですが、時々ふと思うんです、「こいつにとって僕は、いい親父になれてるのか?」と。そこで、皆さんにとっての「親父」について聞いてみたく、このテーマにしました。「ダサかっこいい」としたのは、頭脳明晰・筋肉隆々のスーパーマンな親父じゃ、人間的に面白くないなと思ったので(笑)で、テーマ映画は『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せず奇跡)』。いやーなかなかダメで、憎めない親父でした!
坂元 最終回、今までで一番深いテーマかも(笑)しかし良い映画だったよね『バードマン』。大好きな映画です
ツカヂ コミックヒーローの実写化で一躍人気者になるも、俳優としては二流の評価しか得られない主人公。自分が演じた「バードマン」の幻聴が頭に響いたり、精神的にもかなり追い詰められているところに、別居中の嫁からは離婚宣告を受け、娘は冷たい上にドラック中毒で、ソリの合わない俳優といい仲になっちゃうし。再起を図る舞台劇の公演を目前に、劇評論家には「お前の舞台は見ないけど酷評してやる」とか言われて踏んだり蹴ったり・・・・
上木原 いや~、なんか自分の生き様観てるようだった。映画的にこれは新しいカテゴリだなって思ったよ。今回は寝ずに最後まで観られたし。てか2回観た。楽屋、舞台からの街と長い長いワンカットのシーンが素晴らしい・・・何度撮り直したんだろう。そして随所のジャズドラムがカッコいい。しかし結局最後はどうなったんだ?観てる人にお任せします的なエンディング。最後の病室のシーン・・・アレは天国でのシーンなのか?それとも・・・・
パスキア 僕は劇場で観たのですが、未だ脳裏に焼き付いて離れないパンチのある作品でしたね。内容もさることながら、見どころやオチにいたるまで第三者にどう伝えて良いのかわからないジャンルレスな映画。長回しにアントニオ・サンチェスのドラミングもカッコよすぎで。
ツカヂ 夢追い人のダメ親父が、最後に奇跡を起こす!その感じは『レスラー』にも通じるものがありました。過去の栄光は、ときには残酷ですね。でも必死だから憎めない。努力している人間を、だれも馬鹿にできないというか。
アキサン 猫パンチ以降、ションボリ期間の長かったイメージ(あくまで個人的イメージですよ)ミッキー・ロークが久々にガツンと魅せてくれた『レスラー』。この映画は手持ちカメラで撮影してるんですけど、そのミッキー演じるランディの背中を映すシーンが非常に多くて。背中で語る映画でしたね。80年代に活躍したレスラーのランディの凋落と復活。確かに『バードマン』の設定に近しい何かを感じますね。
パスキア 主演のマイケル・キートンは「バットマン」役とのギャップを公開当時ネタにされてましたが、ブリーフ姿でブロードウェイを走り抜けても、なんだかさまになるのは、さすがの貫禄でしょうか。まさにダサかっこいい親父を体当たりで演じてましたよね。
上木原 そうそう、マイケル・キートンってティム・バートンの『バットマン リターンズ』のバットマンなんだね。まさにキートンそのものの人生作品!キャストがバットマンにハルク、そしてスパイダーマンのヒロイン・・・コレって偶然?パーマンにもバードマンってリーダーいたんだけど、パーマン実写化したらバードマンはあんな感じになるのかなって思った(笑)
パスキア そして、アカデミー賞受賞作品にしてめずらしく大当たりの怪作。何気にこの第87回アカデミー賞って『アメリカンスナイパー』『6才のボクが大人になるまで。』『グランド・ブタペスト・ホテル』『セッション』などなど・・・ほかも力作揃いなんだよね。
上木原 アカデミー賞作品はすべて観ていますが、特に好きな作品を上げると『アルゴ』『レ・ミゼラブル』『ザ・ファイター』『アバター』『スラムドッグ$ミリオネア』『ミリオン・ダラー・ベイビー』『グリーンマイル』『ライフ・イズ・ビューティフル』『タイタニック』『フォレスト・ガンプ/一期一会』『ショーシャンクの空に』・・・・ショートカットでも語った作品多いですね
アキサン 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せず奇跡)』って、タイトル。何かアカデミック気取りなスカした感じのタイトルで、主演も今更なマイケル・キートン。予告編ではそのマイケル・キートンがダチョウ上島か出川哲郎のようなブリーフ姿で街を練り歩くシーン。アカデミー賞獲ってなければ絶対映画館に観に行ってなかったですね。
坂元 そう?オレはこの予告編でガツン!とやられたよ。絶対観たい!って思った。
アキサン 僕は観るつもりなかったんだけど、丁度公開時期に娘が保育園OGのお泊まり女子会(笑)だったんで、時間もあるし久々に嫁と二人で映画でも、という事になり。坂元さんが「Go to Theaters」で書いてた『バードマン』の紹介記事読んで中々面白そうだ、ということで観に行ったんです。で、観終わった後のあの感覚。興奮とは少し違う、何か別の体験をしたような感覚。ワンカット映像による緊張感の連続、終わった俳優だと思ってたマイケル・キートンと劇中におけるリーガンの役回り、そしてスカした感じのタイトルだと思ってたその意味。僕は映画は一人で観る方が気が楽だと思っているんですけど、時としてその感想を人と語り合いたくなる映画というものもあるんだと改めて気づかされました。
坂元 分かる、分かる!ホントそうだよね。みんなはどんな解釈した?って飲みながら語り合いたい(笑)
アキサン 監督のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは翌年のアカデミーでも『レヴェナント:蘇りし者』で監督賞を受賞してますよね。これもちょうど翌年の娘のお泊まり女子会と公開時期が被るんですよ。嫁と二人で観に行きましたけど(当然、Go to Theatersで坂元さんの紹介記事参考にしてますよ)これもまた興奮。で、今年もお泊まり女子会の時は映画を、と思ってたらどうも今年は女子会しないようで(笑)『ラ・ラ・ランド』か『ムーンライト』観に行こうと思ってたんですけど。
ツカヂ 話はガラッと変わりますが、三谷幸喜も『バードマン』みたくワンカットで撮影された映画を何本か撮ってて、その中の1本がなんと「short cut」!これも面白いのでよかったら観てみてください。

「ダサかっこいい親父」映画といえば

パスキア さて、「ダサかっこいい親父が出てくる映画」ですが、まず浮かんでくるのはコーエン兄弟の『ビッグ・リボウスキ』やトッド・フィリップス監督の『ハングオーバー!』の親父たちです。が、これはもう「ダメカッコ悪いただの親父」になってしまうので、子供がいるを前提にした親父であらば、リチャード・リンクレイター監督『6才のボクが大人になるまで。』が印象的でした。撮影期間12年で上映時間は2時間45分と長丁場ですが、ひきこまれました。イーサン・ホーク扮する一番目の父親と息子がキャンプするシーンあるのですが、特別なことをするわけでも話すわけでもないのに、息子には忘れらない思い出になったりも。まぁ、どこまでも男目線なのでそこはご愛嬌。
ツカヂ やっぱりダサかっこいい親父といえば黒板五郎ですよね!「北の国から」の!「泥の付いた二万円」とか「子どもがまだ食べてるでしょうが」とか有名なエピソードはいっぱいありますが、僕のベスト1は「ボロボロの運動靴」!母親の再婚相手(若き日の伊丹十三で、スマートでかっこいい・・・)に、真っさらの靴を買ってもらい、ボロボロだった古い運動靴は靴屋の前のゴミ捨て場に捨てちゃうんです。だけど、五郎がどんだけ苦労してその運動靴を買ってくれたかを思い出し、急いでゴミ捨て場に運動靴を探しに行くという。そこに駆けつける警察官役の平田満がまたいい味出してて・・・
坂元 オレが真っ先に思い出すのはアレクサンダー・ペイン監督の『ファミリー・ツリー』かな。ジョージ・クルーニーが最高にダサかっこいい親父で、ホントに良い映画だったなぁ~
上木原 大体のダメ親父条件としては妻にも愛想つかされた親父ってのが多いよね。最初はダサいんだけど娘の為、息子の為、家族の為にいざってトキに覚醒する親父ほどカッコいいものはない。我を失い暴走する姿はかなり共感できるんだよね
ツカヂ あと、男のダメさを描くときの一つの形として、「仕事バカ」っていうのがありますよね。家庭を顧みず仕事ばかりに熱中するあまり、嫁にも子どもにも見放されてしまう、という。でも男は家族のために働いているわけで、嫁・子どもに少しでもいい生活をしてほしくて仕事の成功のために頑張るわけじゃないですか?面と向かって「愛してる」と言うのはこっ恥ずかしい。でも、当然愛しているし愛されたい。その気持ちが余計に男を仕事に向かわせ、家族と離れていく悪循環。「背中で語る」とはちょっと違うかもしれませんが、そんな男のダサさ、不器用さに、年を取って共感できるようになってきました。
坂元 なるほど。例えば映画で言うとなんだろう?
ツカヂ 『クレイマー・クレイマー』とか。ある日突然、夫である主人公も、息子も捨てて出ていく嫁さん。それから息子と二人のドタバタな毎日がスタート。最初はフレンチトーストもまともに作れない。けどその生活に慣れてくると、嫁さんの大変さも息子の愛おしさにも改めて気づき、主人公の気持ちが変化してくる・・・っていう。
坂元 むか~し観たことがあるなぁ、テレビの洋画劇場で。内容は全然覚えてないんだけど、なんか凄い泣けた気がする。
ツカヂ 目的が変わっちゃうことって、よくありますよね。押し入れの整理してたら古い写真が出てきて、いつの間にか思い出むさぼって2時間、みたいな。仕事も、「食うため」「家族と暮らすため」だったはずが、出世欲や自己顕示欲や、金のためだったりでいつの間にか目的が変わっちゃう。勿論それがダメってことじゃないけど、やっぱりバランスが大事で。昔はよくあるドラマのシチュエーションとして、他人事として(気持ち的に)鼻ほじりながら見てましたけど、今はそうもいきません。帰りが遅くなることも多いし、帰ったら息子は大概寝てるし、家事も皿洗いとごみ捨てくらいしか手伝えない。その状況から脱するための一番の近道(良策)が仕事の中にあったりして・・・。バランスとるのは難しいですね。っていつの間にかグチになってますね(苦笑)
坂元 分かる分かる。結局仕事に逃げちゃうんだよね。オレなんか皿洗いとゴミ捨てすらしたことないよ(笑)アキサンはどう?ダサかっこ良い親父の出てくる映画といえば?
アキサン 個人的には『ゴースト・バスターズ』『3人のゴースト』以降はいまいちパッとしないイメージ(あくまで個人的イメージですよ)のビル・マーレイが破天荒なオヤジを演じた『ヴィンセントが教えてくれたこと』も結構好きでしたね。頑固ジジイと近所の子供。
坂元 あぁ、あの映画良かったよね!
アキサン 『グラン・トリノ』なんかもそうでしたけど、僕は結構この「ジジイ&子供」映画が好きなのかもしれません。『カールじいさんの空飛ぶ家』『ニュー・シネマ・パラダイス』とか。ババア&子供だと『西の魔女が死んだ』とか。『ヴィンセントが教えてくれたこと』なんか、もう最後はてっきり死ぬんだろうと思ってたのに死なないのが新鮮でしたね。エンドロールでも相変わらず破天荒で。違う世代だから通じ合えない価値観の壁も認めつつ、お互い歩み寄れる、手を差し伸べあえる、一方的じゃなくて双方向なんですよね。その世代間を超えた友情みたいなもの、結構好きです。おっと、ジジババ&子供だと『ヴィジット』も忘れちゃいけませんね。
坂元 それはちょっと違うと思うけど(笑)

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