#200 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

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“ダサかっこ良い”の定義とは

上木原 しかしさ、「ダサかっこ良い」っていう、このワードは結構広いよね。まずはそのダサかっこ良いってのは誰でも真似のできるもんじゃなくて。クルマで言えばフィアットのムルティプラ、いすゞのピアッツァとか乗ってる人だね。ファッションで言えば、例えば僕はアディダスのジャージで“トレフォイルロゴ”のアズキ色を敢えて着てるんだけど、コレが「カッコいい」って人と「ダサい」って人と別れると思うんだよ
坂元 なるほど。分かるような分からないような・・・・
上木原 結論として、ダサいとみんなから言われても決してブレない精神。たとえば小指の爪だけ伸ばしてる、自分のサインが書けてグローブなど持ち物に自分のサインを書く。眉がメチャ伸びてようが気にしない。ブーツにカチャカチャ音する金具つけてる。などなど・・・・てか、コレって俺の親父なんだけどね。一流品は知っててもあえて二流品を好む。ワンピースで言うとセニョールピンク的存在。
坂元 それはカッコ良い親父さんだ!上木原さんのお父さんって見た目もカッコ良いもんね、シルベスター・スタローン似で。
上木原 確かにオヤジは昔、スタローンにソックリだったけど、今思えばラッセル・クロウとかジェラルド・バトラーにも似てんなって。だから僕はそんなリスペクトする父親をいつしかハリウッド俳優に置き換えてたのかもしれない。親父の還暦お祝いに『ロッキー』バルボア仕様のキャスケット、古希のお祝いに『エクスペンダブルズ』のバーニー・ロスのアーミーベレー渡したけど2つとも全くかぶってくれないんだよね(笑)
坂元 お父さん、日本人だよね?
上木原 、ま、とにかくそんな精神を持った“ダサかっこ良い親父”の映画は大好きだ。『オーバーザトップ』『シンデレラマン』『リアル・スティール』『96時間』、それから『スリーデイズ』』、『幸せのちから』『ライフ・イズ・ビューティフル』『ミセスダウト』『パトリオット』『フルモンティ』・・・・挙げたらキリが無いぜ。邦画だと『イン・ザ・ヒーロー』もそうだな。あとクレしんの『ガチンコ逆襲のロボとーちゃん』とかも好き。ココに挙げた作品はすべてDVD持ってる。好きで買ったんだけど、今思うと全部“ダサかっこ良い親父”が出てるじゃん!知らないうちに憧れていつしかコレクションになったんだろうな・・・・
坂元 『オーバーザトップ』とか『リアル・スティール』なんか最高の親子(父と息子)映画だよね!
上木原 病気の妻に会う為、アームレスリングを通じて息子と旅に出る『オーバーザトップ』。ノースリのGジャンはマジ、ダサかっこ良い!そして『リアル・スティール』は落ちぶれたボクサーの親父と息子のロードムービー。だんだんダサかっこ良い父親になり、最後のバトルシーンでのアッパーカットは自分のハート抑えきれなくなった。あと、『96時間』!究極の親バカ映画(笑)である正に『コマンドー』映画!妻に愛想疲れたダサい親父は実は元CIA工作員。邪魔するものは容赦ない・・・とにかくダサかっこ良くてヤバイ(笑)
坂元 シュワルツェネッガーの『コマンドー』、懐かしい~!また観たくなった(笑)
上木原 それからラッセル・クロウの『スリーデイズ』ね。すべては妻のために。ポール・ハギスの世界観はヤッパいいね。住宅街の脱獄モノは新しく、普通の父親が袋小路から回避する姿はマジヤバイ!・・・・あと何だったっけ?
坂元 『幸せのちから』『ライフ・イズ・ビューティフル』・・・・
上木原 そうそう、『幸せのちから』は、人生つらいことがあっても幸せを掴み取る父親の姿に涙した。ホームレスから億万長者という、ありえないダサかっこ良いサクセスストーリーだね。『ライフ・イズ・ビューティフル』、コレはみんな泣いたでしょ・・・ダサかっこ良い親父が笑顔で処刑場に行く姿に。息子のため嘘をつく姿にマジ感動した。それから『ミセスダウト』。ダサかっこ良い親父だけどこんな父親になりたい。クリス・コロンバスの作品は本当に子供が生き生きしてて好きな監督だ。
坂元 あと『フルモンティ』面白かったよね!こないだ『T2 トレインスポッティング』観たんだけど、ロバート・カーライル、やっぱカッコ良かった!
上木原 まさにダサい親父たちが裸一貫で挑む姿がカッコいいよね。死ぬ気でやれば人間何でも出来るってコトを教えてくれた作品だった。それから、名作『パトリオット』もダサかっこ良い親父だよね。イギリスの植民地であったアメリカの独立戦争を描いた作品。妻を失った男メルギブは7人の子供と楽しく過ごしていたがイギリス軍の理不尽な圧政と残虐非道な制圧に怒りは最高潮に・・・・もうね、タビントン大佐がマジキチでイライラするのよ。そんな思わせるところが、さすが役者なんだけどね。『ハリー・ポッター』でも彼はルシウス・マルフォイしてたからね、ホントさすがだよ。やっぱ流石はエメリッヒ監督!解りやすい!SFじゃなくても充分イケる気がする。しかしヒース・レジャーカッコえぇ~!3時間あっという間だった
坂元 『パトリオット』のベンジャミンもある意味“ダサかっこ良い”のかな?なるほど~
上木原 スタローンやヒュー・ジャックマンの汗と浮き出る血管野郎。困った顔が似合うけど覚醒したときの表情が一品のラッセル・クロウにリーアム。どんな窮地でも子供たちに笑顔を絶やすことを忘れないウィル・スミスにロビン。そして愛とユーモアを見せてくれたユダヤ人グイド。どれもコレも名作!ダサかっこ良い親父の映画・・・・世の父親は是非観てほしい。
坂元 “ダサかっこ良い”って、確かに上木原さんが言う通り定義が難しいよね。決してダサくはなく、やっぱカッコ良いんだよ
パスキア “ダサかっこいい親父”の定義は全ての父親が追い求める永遠のテーマかもですね。
上木原 こんな男達がカッコいいなんて普通の女の人なら思わないだろうけど、男はちょっとダサいほうがかっこいい。スーツで決めてる男より『オーバーザトップ』のホークみたくセピチピチTシャツにサスペンダー、薄着で薄汚れたオッサンの方が100倍かっこいい!・・・と僕は思う(笑)まさにスタローン!哀愁のダサかっこ良い親父といえばこの人しかない!今までショートカットで何度喋ったか・・・(笑)「スタローンのスタローンによるスタローンのための映画」子供は父親の背中を見て育つ?僕は違うと思う。子供は父親の筋肉を見て育つんだと思うんだよね

“良き父親像”とは

ツカヂ 親父として「こうありたい」と思うのは、一番は当然五郎さんなんですが、こないだ観た『ビッグ・フィッシュ』も良かったです。ほら話ばっかりのダメな親父かと思ってたら、実は話を“誇張”していただけでウソじゃない。しかもその誇張は、あまり相手をしてやれない息子を楽しませるための“優しさ”で。ウソも方便、日曜日よりの使者じゃないですけど、こういう愛情はありかなと思います。腕っ節じゃ守れない、人に誇れるような生き方でもないけれど、せめて夢のある話や面白いものを教えたり、共有できる感受性を持った親父でありたいですね。
坂元 うん、同感です。『ビッグ・フィッシュ』も良かったよね。ユアン・マクレガー目当てで観たんだけど、凄くティム・バートンらしい名作。
ツカヂ あとはやっぱり日本の親父!家族をテーマにした映画だと、共感できるのは洋画より断然邦画でした。こっちと向こうじゃ“正義”の感覚が少し違うじゃないですか?それが子どもとの関わり方・愛し方にも現れてるのかなと。向こうだと、子どもの前に立って、あらゆる外敵をやっつけて子どもを“守る”のが愛情で、日本は子どもの後ろに立って、子どもが傷ついたらすぐに駆け寄って“支える”のが愛情。そんな違いがあるような気がしました。
坂元 なるほど~、確かに。正に文化の違いってやつかな。
ツカヂ 『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』はタイトル通りオトンはあんまり出てきませんが、日本の親父ってそんなもんですよね。普段は“ただそこにいるだけ”って感じでそのくせ威圧感あって。何かの節目にのっそり出てきて「行け」とか「いかん」とか「ばかが」とか言う。分かりにくいからすれ違うけど、随分経ってから気づくわけです。あぁ、あれは愛情だったのかって。『青天の霹靂』も観たんですが、これも『東京タワー』同様どちらかと言うと母がテーマの映画。でも親父に共通点がありまして、“変わりもん”で“働かない”。“仕事バカ”とは真逆の親父ですが、僕はこっちの親父のほうが好きです(笑)。破天荒で好き勝手やってるんだけど、どこかで愛情がにじみ出てる。このにじみ出るってのが日本的で好きです。分厚い胸板で抱きしめるみたいな、そういう分かりやすい表現もいいですが、あとから人づてに聞く優しさみたいのも沁みますよね。
坂元 なんかアレだね、テーマがいつの間にか「ダサかっこ良い親父」から「良い親父」になってるよね(笑)
ツカヂ 僕、一度だけ親父に本気で叱られたんですよ、小学生の時に。普段は温厚で感情的になることの少ない人なんですけど、万引きグセが治らなかったときに胸ぐら掴まれて持ち上げられて。それっきりだからこそ今も覚えてるし、それ以降悪友とも縁が切れてそれ以上の悪さはせずにすんだ。毎日殴られてたら、そうはならなかった気がするんですよね。純も、五郎さんに殴られたのは一度きり。蛍になついていたキタキツネに石を投げたときで、あれも名シーンですねぇ・・・。
坂元 やっぱり「北の国から」の話に戻ってるし(笑)
パスキア 自分の父親って昔気質の家具職人で、継ごうなんて思ったこと一度もなかったのですが、自分に子供ができて、実家へ連れていきだすと、いつのまにか長男が親父のこと崇拝してて(笑)小学校2年の文集で「将来はおじいちゃんみたいに、なんでもつくれる人になりたいです」って書くほど。嬉しいはうれしいのですが、そこに、実の父親としての威厳はないんですよ(苦笑)実際、印刷会社の企画課で働いてる父親の仕事内容を今はまだ説明できないと思いますし(寂)
坂元 子供さんにとっては凄い素敵なおじいちゃんだね。正に“日本の親父”って感じでカッコ良い!ま、確かに父親(パスキアさん)からしてみたら複雑だろうけど(笑)
パスキア なので休日は『6才のボクが〜』のイーサン・ホークではないのですが、一緒に釣りしたり、キャンプしたり。映画のようにカッコよくはいかなくとも、向き合って言葉で伝えることも大事ですが、時に背中を見てもらってしか伝えられないこと(言葉にはできないこと)もあるのかなって。
坂元 おぉ、凄いカッコ良いお父さんじゃん!
ツカヂ 因みに、皆さんの“良き父親像”ってどんななんでしょうね?アキサンが以前『桐島、部活やめるってよ』の回で語った父と娘のいい話、とても心が温まりました!今回もいい話、聞かせてください
坂元 うん、あれはグッときた。
アキサン “良き父親像”か・・・。今回のサブテーマ「ダサかっこいい」ってキーワードも絡めると、僕が子供の頃、「ダサいオヤジ」というのは、日曜日になると家族放ったらかしでゴルフに出かけ(しかもそれを仕事だなんて言い訳をしたり)、ゴルフに行かない日曜の昼下がりはテレビでやってるゴルフの中継番組を見て、普段着はゴルフウェアみたいなポロシャツで、酒を飲んではクダを巻き、スナックのお姉さんのおべっか真に受けて悦に入り、頭にネクタイ、手にはオミヤの折詰、たまに家にいるかと思えば子供たちの見たい番組があっても新聞読みながらプロ野球のナイターを見続ける。ダサいというか、俗物の象徴。・・・って別にゴルフや野球が嫌いなわけじゃないですよ?今でこそ若い世代や女性もゴルフを楽しんでますけど、一昔前のゴルフのイメージってオッサンスポーツのイメージだったんで。
坂元 確かに(笑)
アキサン でも、幸いにもウチの父はそんなことは無く、とはいえ僕らが小さいころは日曜になると一人で草野球に出かけ、少し大きくなってきた頃には釣りに夢中になり、程なくしてゴルフ。夜は遅くまで仕事して、一緒に食事を摂ることも少なくなったけど、家族の為に一生懸命仕事してはるんだと思ってました。だから自分の父がダサい、とは思わなかったですね。先のダサいオヤジ像ってのはあくまでもイメージ的なもので。テレビや映画や何やかんやで描かれるダサいオヤジの最大公約数的な。だから僕はそんなオヤジにだけはならないように生きてきました。今の所全部回避してます、多分。飲んだ帰りにオミヤのお寿司は良く買いますけど(笑)そしてどんなオヤジ、というよりも娘を持った身としては親父、父親ですね。僕の思う「俗物」からはかけ離れた良き父親でありたい、とは常に考えてます。娘が生まれた時、僕は「娘の人生の良き脇役でありたい」と真っ先に思いました。僕が主役の映画はもう終わったんだ、いつまでも舞台に居座ってないでこの素晴らしき物語の主役の座は子供に譲らなければならない。そう思ったんです。だから僕の人生はもはやエピローグです。でもエンドロールの最後で次回作を匂わすようなワンカットを入れますけどね。多分ゾンビ物でしょうけど。
坂元 相変わらずいい話するなぁ・・・・どうした最近?っていうか終わり間際に(笑)

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