「たくさんの人と出会える、幸せな職業。地域に密着した町の食堂になりたい」第3回 パラダイス食堂 吉原さとみさん

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飾らず、気取らず、ゆったりと
アジア料理が自慢の食堂を

 照国町にある1軒の食堂。取材に訪れたのは水曜の午後3時。カウンターには常連客がひとり、ビールをゆっくりと飲んでいる。BGMはハナレグミの『音タイム』。店の前を国道が走っているにも関わらず、店内は静かでゆったりとした雰囲気に包まれている。「なんで?って言う人か、わっせいいね~ってもの凄く褒めてくれる人。そのどちらかしかいない」。オーナーの吉原さんが笑いながら話すのは、店名〈パラダイス食堂〉のこと。12時から24時までの通し営業だが、カフェとは呼びたくない。お洒落な英語の店名も、いまいちピンとこない。ただ、誰がどんな気分のときに来ても、おいしいと言ってもらえる料理を出し、元気になってもらえるお店にしたいと思った。結果、パラダイスと食堂、この二つの言葉が残ったのだという。この話を横で聞いていた常連も「センスはともかく(笑)。僕もいいと思ったよ。肩ひじ張らない感じとか。何となくね」と笑い、吉原さんも「センスはともかく、そうでしょ?」と笑う。その“何となく”で店に入り、彼女自慢のアジア料理を食べ、この店にハマった客は少なくない。彼女の明るく飾らない人柄も“ハマる”理由のひとつだろう。オープンから3カ月。取材中も「また来たよ」と笑顔で訪れる客足は絶えることがなかった。

ソースにハマった小学3年生の夢
多くの出会いに恵まれ実現

 料理の道を志すようになったキッカケ。それは小学3年生の頃までさかのぼる。「図書館で見つけた栗原はるみさんの『ソースの本』。それがものすごく気に入って。何度も何度も借りて、3カ月くらい読んでました(笑)」。食材と調味料の組み合わせで生まれるおいしいソース。その化学反応が楽しかった。友人たちがお菓子作りに興味を抱く中、彼女だけはソースや料理に夢中になる。「いつかは自分の店を」という夢はこの頃から描いていたものだ。「ソースって…。おしゃれすぎ(笑)。ちょっとナマイキですよね(笑)」。とはいえ、今日に至るまで料理一本で歩んできたわけではない。高校卒業後は「海外で暮らしてみたい」とニュージーランドへワーキングホリデーに。帰国後は料理を仕事にすることへの疑問から、アパレルの販売をしたこともある。「趣味は仕事にしない方がいいって、よく言いますよね。その時は確かにそう思ったんです。だけど、外食に出る度に厨房が気になる。その想いが積もり積もって、私もあそこに立ちたい!って。すぐに料理の勉強をするため、大阪に向かいました」。幼い頃に描いた夢。その実現のため、大阪ではいくつかの料理店で働き、鹿児島には昨年戻ってきた。「遠回りもしたけど、今は全く後悔していません」。1年間のニュージーランド、2年間のアパレル販売、7年間の大阪修行。得たものは料理の知識と技術だけでなく、多くの人とのつながりだった。オープンの準備期間、まだ何もない食堂には多くの友人が手伝いに訪れた。

笑顔と向上心を忘れずに
目指すのは地域密着型の食堂

 「幸せな職業。だけど胸を張って、楽しい仕事とはまだ言えない」。それが夢を叶えた吉原さんの正直な感想。好きな料理を作り、たくさんの人と出会い、いいスタッフにも恵まれた。しかし、オーナーという立場には、これまでとは明らかに違う責任感がある。経営者として考えなければならないことは山積みだ。「もちろん、楽しいことの方が多いんですけどね。まだまだぁ!って向上心は常に持っていたいから、ひょっとしたら100%なんてあり得ないのかもしれないですね(笑)」。ちょうど誰もいなくなった店内に、ハト時計が18時を知らせる。彼女はまかないのタイカレーを食べると、すぐに厨房に戻り夜の準備を始めた。「大阪で行った予約のとれない人気のレストラン。そこで人参とキャベツのスープが出てきたんです。野菜以外には水と、ひとつまみの塩しか使っていない。でも、それを食べて私泣いちゃって。体に染み渡る美味しさ、もの凄い衝撃。料理って素敵だなぁって、改めて思いました。いつになるかわからないけど、私もそんな料理を作りたいと思っています」。見た目ではなく、食べておいしい料理。現場にいられなくなったら店を閉める。笑顔で接客が一番。モットーはたくさんあるが、目指すのは?との問いに「心も体もケアできる、地域密着型食堂のおばちゃん的存在です(笑)」と答えてくれた。

(2009.9.4)

プロフィール

パラダイス食堂 吉原 さとみさん

パラダイス食堂 吉原 さとみさん

鹿児島市出身。高校卒業後、1年間のワーキングホリデーでニュージーランドへ。帰国後、鹿児島市内の洋服店などに勤務。大阪ではイタリアンやフレンチなどの料理店に勤務。パラダイス食堂のオープン前には実際にタイやカンボジアへ行き、現地の料理に触れる。

インフォメーション

パラダイス食堂

蒸し鶏のフォー、タイカレー、海鮮チヂミといったアジア料理が中心。“本日のおすすめ”には日本の家庭料理も並ぶ。12時から15時のランチタイムには定食が約6種類。店内にはカウンターとテーブル、それに座敷を用意している。また、トイレにはおむつの交換に利用できるベッドがあるので、小さな子どもがいても安心だ。

  • 住所/鹿児島市照国町17-28 縄田ビル1F
  • 電話/099-227-7788
  • 営業時間/12:00~24:00(日~22:00)
  • 定休日/火曜定休
  • 総席数/28席
  • 主なメニュー/海鮮チヂミ¥650、タイカレー¥700、豆乳入りだし巻たまご¥450、チャーゾー(網ライスペーパーの揚春巻)¥650
  • ブログ/http://satomiyoshihara.dtiblog.com/
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